駐屯地
「ざっとみた。前面装甲は分厚いけど、後ろはそれほどでもないわね。足のバランスは良いみたいだから足を狙って動けなくするよりは背面に設置してある動力部を狙った方が合理的だわ。ニューロデッキは自己拡張系と整備用。戦闘中にニューロハックは無理ね」
「解析ご苦労だがもう出会いたくないな。さて、それでは先に進もうか」
六本足の大型ロボットを倒した先には、大半が崩壊していたり潰れてはしまっているが明らかに軍の施設と思えるところが広がっていた。兵舎があり、軍用車両が破壊された状態で置いてあり、戦車がかく座していた。
もし戦車が生きていたら今頃二人ともこの世を去っていただろうな……。
「戦車があり兵舎があると言うことは陸軍の駐屯地か。航空機の情報は期待できそうにないが、関連施設で空軍の場所がわかるかもしれないな」
「うん、気をつけて探ってみましょ。もうボロボロでいつ崩壊するかわからない場所には入らないでね」
一番ボロボロなのは兵舎だが、兵舎に何か情報があるとは思えないので放置する。
駐屯地司令部か格納庫なら堅牢な地下室があるかもしれない。もしかすると爆撃から耐えきっているかもしれない。念入りに探しておこう。
それと、重装甲ロボット作成装置は出力は弱いかもしれないが確実に生きているのでそれを潰す。壊した重装甲ロボットが復活していたからな。
ざっと施設を歩いて回る。数件の建物に電磁防壁が張られているのを確認した。
「センダイは世界戦争じゃなくて企業紛争で壊滅したから、重要施設は破壊しきれなかったのかもしれないわね。それでも建物はボロボロだけど。障壁を張るジェネレーターは何年も整備されてない、クインキュラスをぶっ放せば一時的に障壁をダウンさせることができるかもしれないわ」
「俺の超高速エタニディウス速射砲をフルパワーで撃てば……」
「メカニックとして忠言させてもらうけど、銃身が負荷に耐えられないはずよ。速射砲は遺跡で取り付けた武装でしょ、永久機関がバージョンアップしたけど、速射砲の構造はそれに対応した改良をしてないの。というか今の技術じゃできないのよ。今までのレベルでしか撃てないわ」
「そうか、希さんが言うならそうなんだろうな」
まずは試射ということで、司令部のような建物に張られている電磁防壁にクインキュラスを撃ち込む。
クインキュラスは見事に電磁防壁を”貫通”し内部で大爆発した。
「か、貫通威力が強すぎたわ」
がっくりとうなだれる希さん。
「あのロボットを倒すための兵器だもんな。クラス三五も貫通するだろうし、やはり超高速エタニディウス速射砲を撃ち続けてパワーダウンさせるか」
威力の増強はできないが何度も打ち込めばいずれ消えてくれるだろう、多分。
駄目ならパルスレーザーガトリング砲も追加だ。
「出力が向上して連射が効くようになってるな、これならいけるかもしれん」
超高速エタニディウス速射砲を撃ち込み続ける。
しかし、電磁防壁が一向に消えない。
ボロボロのはずといっても施設を守る電磁防壁だ、個人の砲力では威力が足りなすぎるのだろう。
一度休憩したあとイーグルⅫのパルスレーザーガトリング砲も使って破壊を試みる。
「うーん、難しいわね。どうしても銃身に熱を持つから連続射撃ができない。何かないかしら」
「荷台に載せてる大型ロボットはどうなんだ?アイツもパルスレーザーガトリング砲を持っているだろう? ガトリングじゃなくてマシンガンかもしれないが」
「ああー、動力壊しただけだもんね、組み直すか。武装は使えるわ。AI回路を書き換えてからなら安全に使えるし、マシンガンを永久機関で出力すれば今より良いかもしれない。超高速エタニディウス速射砲はちょっと火力不足だもんね」
くそっ、と思いつつも火力不足は事実だ。
整備用ニューロデッキからニューロハックをして、AI回路を書き換える。
希さんにエタニディウスを動力部へ流し込めるようにしてもらい、左手首を折り曲げ、出現したエタニディウスセイバー部分からドクドクと内部へ流し込む。
ギュインと大型ロボットが稼働すると僕の意のままに操れるようになった。
これで撃ち込み続けるか。
さすがは推定だが拠点防衛用の大型ロボット、その火力はすさまじく僕の超高速エタニディウス速射砲とは比べものにならなかった。
エタニディウスで出力も強化されており、一気に電磁防壁を消し去った。
「よし、今のうちに内部へ突入する! 希さんはパルスレーザーガトリング砲が撃てるように車で待機してくれ」
「うん、わかった。気をつけてね」
大型ロボットで司令部の入り口まで乗り付けて、降りる。
これで内側からロボットで射撃ができるので、帰りに電磁防壁が発動しても破壊し直せる。
司令部の中はボロボロに風化していて、電気も通っていなかった。だから中は真っ暗だ。電磁防壁は別動力で常時動いてたんだろう。まずはそこを破壊しなければ。
室内に置かれた動力という物は大抵地下に置かれている。重量物だし爆撃から身を守るためでもある。まずは地下への道を探そう。
広大な面積を誇る司令部を歩く。所々壁や天井が崩壊して歩けない部分もあったが遠回りをして進んでいく。
セキュリティロボットの姿は見えない。内部では動かしていなかったのだろう。
しばらく歩くと地下へと通じる階段を見つけた。階段には蓋がしてあって通れないようになっていたが、エタニディウスセイバーで穴を開けて強引に引き上げた。永久機関がパワーアップしたおかげだな。
地下には数部屋あって、その中に案の定電源を見つけることができた。核融合発電は見慣れているが、他の様式の発電機もある。
今動いているのも含めて数個そして数種類あるが全て破壊してしまって良いのだろうか? 非常用電源があれば司令部のデータを取り出せるかもしれない。
希さんを呼び出すか。
「なるほど。この動いてる核融合発電機が電磁防壁の動力だと思うけど、外部から電源を切るのは難しそうね」
「そうか。破壊するしかないか?」
「とりあえず全部調べてみるわ。上手くいけば司令部の電源が回復するかもしれない。司令部から電磁防壁の電源を切れば、電磁防壁用の発電機を破壊せずに稼働オフにすることができそうだし。無傷な発電機のパーツはかなり高く売れるわよ」
そう言って発電機をチェックしていく。
「うわー、小型の核分裂発電ねこれ。燃料棒が使えなくなって止まってるけど、破壊していたら放射能まみれだったわよ」
「それはさすがの僕でも死ぬ。希さんに来てもらって正解だったか」
「そうね。これは火力発電か。これなら比較的安全に動かせるかもしれない。燃料は……うわーカチンコチンに固まってる。でも石油系かな。種類がわからないけど普通なら一号重油よね。エタニディウスを変換して作った洗浄液で発電機のパイプ管をまるっと洗浄して、それから重油を作って燃料タンクに入れてくれない? 重油の成分とそれを洗う洗浄液の種類は知ってるわよね。あ、まずは空気を回すために換気扇を動かさないと駄目か。換気扇を動かすだけなら電池で良いんだけど」
希さんが矢継ぎ早に言葉を繰り出す。
僕は言われるがままに洗浄液で火力発電機のパイプ管を洗浄して油まみれになり、希さんは――とても巨大な――換気扇を見つけてそれを動かすことに躍起になっていた。
エタニディウスを溶剤にして油を落としていく。強力な溶剤だったので人工の肉体部分――まあ全身全てだ――がギシギシいうようになったが、安全と引き換えにしなくては。あとでオイルを注入しよう。
「昔拾って今持て余している核融合電池を使うか。涼くん一度外に出るわよ」
「その前に油を落とす。このままパルスレーザーマシンガンを撃ったら引火する」
「ギコギコうるざいわねー。適当にオイル作って注入したら?」
「クリニックで専用の油を差してもらった方が絶対良いのは希さんの方が理解しているだろ。それじゃ電磁防壁を一度止めるぞ」
イーグルⅫの荷物から核燃料電池を持ち出して、換気扇に取り付ける。風が勢いよく吸い込まれて部屋全体の空気が入れ替わったのがわかる。
「これで酸素不足で死ぬことは無くなったわね。じゃあつけるわよ。重油系の動力ってはすぐに動かないから、始動用にもう一個ある核融合電池で回すわ。待っててね」
三時間後に無事火力発電機が安定稼働した。
これまで真っ暗だった司令部の中に明かりがともっていく。
「これでニューロハックもできるようになる。後は任せてくれ」
さて、司令部中枢へと行くか。
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