ルート開拓
「煙いね」
「煙いでしょう。触媒による濾過フィルターが付いてないから排気ガスダダ漏れなのよ」
排気ダクトを使い回すのがいやだということで、全部エンジンルーム内で完結するように配置されたディーゼルエンジン。それがすすという形で僕らに襲いかかってくる。重要な機関にはすすが入らないように対策されているというけど、僕らは重要な機関ではないらしい。
まあでもこのエンジンがスクラップを運んでくれているんだ、頑張ってもらおうじゃないの。
探索2日目、いつも直進するルートを右に変えてみた。
そしたら出た。
ロボットの群れだ。
犬のような外見――ただし全て金属製――で背中に銃を搭載しているロボットが群れていた。統率をするように一八〇センチメートルくらいの人型ロボットも徘徊している。
こちらは豪快なエンジン音を響かせている。即座に発見され銃撃が始まった。
ニューロハックをしようとしたけど、ニューロデッキが塞がれていて駄目だった。くそ。
「車を後ろに向けるわ! エンジンに被弾したら動けなくなる!」
「了解、重機関銃で人型を狙撃してみる! 人型が撃ってきてるのはプラズマ弾だよ!」
ギュイン、と車が唸りを上げ高速回転する。メインエンジンをニュートラルにすれば全てのタイヤが独立モーター軸なので、その場旋回が可能なのだ。
高速機動をしている間に僕は狙いを定めて人型の頭部に重機関銃の銃弾を三発放つ。スーッと吸い込まれるように銃弾は頭部にヒットしてめちゃくちゃに破壊する。しかし人型の動きは止まらない。
「脳味噌は頭の中にはありません、ってか」
まあそれでもメインセンサーを破壊したみたいで銃撃の精度が極端に下がった。これならいけるかな? 犬は希ちゃんが蹴散らしている。希ちゃんの腕でも当たるような頭の悪い動きをしているっぽいな。
続けざまに胴体に三発放ち、それも粉々にした。一二ミリの銃弾だと金属とか防御とか関係なく破壊してくれるね。
犬の掃討を手助けして一段落付く。
「ふう、片付いた。ちょっとでも正解というか何というか、ロボットが徘徊していないルートを外れるとロボットがうじゃうじゃいるんだね。これじゃ誰もここをスカベンジできないわけだ」
「人型はプラズマ弾撃ってくるし、犬はうじゃうじゃいてサブマシンガン程度の弾を乱射してくるわ。幸いヘルメットや装甲服を貫通はしなかったけど、私たち中級階層だからできる装備だからね。好んでここに来る中級階層なんているのかしら」
「キアのかけらを探せるか全くわからなくなったね。これで仙台空港がスカだったらやりきれないよ。まずはスクラップになったロボットを車に積み込もうか」
スクラップを拾っているとどこからか犬がやってきた。銃声を聞いて駆けつけたか?
数体だったのでサクッと処分。
これ自体は問題ないけど、銃声を聞くとロボットがやってくるかもしれないという可能性というのは精神的にクるものがあった。
「乾杯。スクラップは質が高くて良い値段で売れたね」
「ごくごく、ぷはぁ。そうね、稼ぐ分には効率が良いわ、あっちからやってくるんだもの。人型が群れてきた場合、プラズマ砲を耐えられるかわからないけどね」
「超高速エタニディウス速射砲でぶっ飛ばしても良いけど、音がなあ」
希ちゃんがビールを飲み干しおかわりをコールする。
「私たちが破壊する前に、既に稼働停止していた犬も数体見かけたわ。連中には寿命があって、それを補うための生産工場が生きてるってことね。生産する以上に破壊して、生産工場も破壊すればこっちの勝利よ。それか、正解のルートを当て続けるか」
「弾薬がいくらあっても足りないな。そうだ、僕の左腕に付ける武器パーツはどうなってる? 武器と弾薬生産装置を作れば、後はエタニディウスを材料に弾が作れるんだろ?」
「中に装着する超高圧電磁サブマシンガンは作ったけど、弾薬生産装置はウツノミヤしかないわね。上級階層でしか流れてないと思う。タケナカに輸送依頼しようかしら」
「そうしてくれないか? 弾薬不足で全滅とかシャレにならないよ」
「お金吹っ飛ぶわよ。当分はルート開拓とロボットのお掃除をすることになるわね」
一ヶ月後、冬になったあたりで弾薬生産装置は到着した。二〇〇〇万かかったそうだ。でもそれ以上にお金は稼いでる。
今は僕たちがルート開拓とロボットの排除をしていることの話が広がっていて、綺麗になった地区のスクラップを回収する人も出てきた。まれに犬がやってきて皆殺しにすることもあるが。
「それじゃあ組み込むわよ。基本は作ったから、後は上級病院へ行って肉体的に結合するだけ。数千万かかるわねー」
「そのお金で弾を買った方が良かったかもね」
「無限に使える弾はいざって時に役立つわよ。それに私が特別に作ったから威力は桁違いよ。一二ミリ重機関銃より強いかもしれない」
そういうわけで仙台に少数ある上級病院で装着工事をする。
装着自体は肘から先が骨で二つに分割し、上部の物体が斜め上に動いて銃口を見せる機構だから簡単だったらしいけど、体内を巡りエネルギーを与えるエタニディウス管のうち、超高圧電磁サブマシンガンへ流す管をかなり太くしないといけないらしく、結局大がかりな作業になったらしい。僕は麻酔で寝ていたからわからないけど。
ついでに足回りのオプション強化もしてもらった。
ジャンプ強化は第二段階への強化によって二五メートル飛べるようになったし、ダッシュ強化は三分持続して五分動きが鈍るだけに。一〇分の休止期間にして普通の動きができるようにすることも可能らしい。急に使い勝手が良くなった。
「これ以上はハイエンドの体にならないと持たないよ。せっかくハイエンドを使うならミリソリュの体が良いだろうね」
と先生からご助言をもらい退院。
「ミリソリュかー。かなり険悪な仲だからなあ」
「傘下組織がってだけで本体とは仲悪くないでしょ。ウツノミヤでお仕事して仲良くなりましょ」
気を取り直してルート開拓を進める。
左腕の超高圧電磁サブマシンガンは本当に威力が桁違いで反動もものすごく、撃つたびに後ずさりするほどだった。慌てて足の根元から展開する補助展開足を装着。腕もスタビライザーを数個取り付けた。
こりゃ本当にハイエンドにしないと駄目だ。
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