準備
実は輸送をしてサイボーグを破壊しただけで凄い儲かった。
なぜなら格付けランクがBB+++からBBBになったから。これだけで依頼料金を凄く引き上げることができるのだ。まあ、サイボーグを破壊する依頼や戦闘介入の依頼はめっちゃ高い依頼料だったけどね。タケナカさんは戦闘に使うヤクをどんどん運ばせてくれたし。
一気に二人ともアップグレードできた原因はここら辺にある。
で、お金がないヤクザは僕らに依頼するお金がない。こっちも引き受けない。自然とタコスハウスと緑山会、宇都宮ヒッピーとは疎遠になっていった。
「しかし、良くミリソリュの下部組織が宇都宮で動けるものだね。忠菱が黙ってないと思うんだけど」
「んまあ、日本が自由経済を標榜してるからね。合法的活動ならできなくはないのよ。第二位の企業とはいえミリソリュのほうが強い部分もあるし。例えば、ウツノミヤに送り込める精鋭部隊持っていたり」
「忠菱グループには精鋭部隊とかいないの?」
「いるはずだけど、簡単には出てこないかもしれないわね。大多数は首都であるオオサカのウメダダンジョンで政治家を護衛してるんじゃないかしら」
僕たちは屋台で合成肉の焼き鳥と米の麺のラーメンを食べながら会話をしている。いやあ、中級階層って「文化がある」んだね。公園もあるし、日本風の鳥居もある。なぜ道路をまたぐように立っているかわからないけど。セキュリティ保持のためにドローンも飛んでいる。今僕たちが食べているところみたく屋台街や、ジョンサムレディのような歓楽街がある。下級階層とは生活レベルが違う。
「で、次の大規模戦闘となるだろうって噂は?」
「フタアラヤマ神社の前で小競り合いが発生しているみたいなのよ。数日以内にどちらも戦力を送り込んでフタアラヤマ神社近辺の縄張り戦になるって感じ。あそこは中級階層地域だし、地価が高いから収益が見込めるわ」
「フタアラヤマ……二荒サン神社か。こんな世界でも神様の力が欲しいのかねえ」
「こんな世界だからよ」
二つの勢力が小競り合いを大きくしていく中、僕たちは戦闘用のヤクを運ぶ。どちらかに肩入れはしない。肩入れしたら均衡が崩れる危うさがあったからだ。どちらがシマを失うにしても、それで恨みを買うわけにはいかない。僕たちはこれからも宇都宮で生きていくから。
「来週あたり、本格的な衝突になりそうだね。メールをハックしてみているけど、タコスハウスはやる気みたいだ。シマダも応戦してくるだろう」
ネットの中の僕は自由だ。メールだって何だって、痕跡を残さずに見ることなんて朝飯前。毎日メールのやりとりを眺めていたんだけどタコスが大規模動員をして、シマダの支部を同時攻撃するという計画みたいだ。
シマダはいったんは引くだろうけどすぐに動員をかけるだろう。
「これは双方ともに警備サービスも使うね。タコスハウスは決定力がないし。シマダは数で圧倒されそうだし。精鋭部隊も雇うかもしれない。複数地区での戦闘となると複数の精鋭部隊が出る。幹部も出て指揮を執るかな」
「なら復讐が……!」
「できるかも。末端の兵士を殺すより、幹部を殺せば復讐になるでしょ? シマダは多分忠菱警備サービスを使って応戦するはずだな。メールで要請の下準備はしてる。僕たちも準備しよう」
というわけで武装の準備。
僕は高圧パルスアサルトライフル。発射圧力をぐっと高めて貫通力を増したもの。マガジンは三〇発。口径は六ミリ×四〇ミリ。現状、操れる限界かな。
左太ももにしまってある電磁サブマシンガンは高電磁力ショットガンに変更した。ショットガンってあまり貫通力がなかったシロモノだけど、電磁式になってから威力が桁違いに上がったんだよね。それの高威力版。精鋭でも接近戦になったら有利に戦えるだろう。
希ちゃんは体があまり変わってないので特に変更がないけど、電磁サブマシンガンを有名メーカー「新羅」の物に新調して、左手に工具パーツじゃなくて電磁ショットガンを組み込んだ。胸に何を仕込んでいるかはわからない。右のグレネードポケットには破砕グレネードと雷撃グレネード、煙幕グレネードとかが入ってるみたい。
ピックアップトラックは車載重機関銃の口径を一〇ミリから一二ミリに変更。この手の機関銃の銃弾って一ミリ変わると大きさがドドンと変わる。僕の手くらいのサイズの砲弾を放つようになった。さすがに当たったら皮下装甲だけじゃ防げないだろうな。
二人とも灰色の追加防弾アーマーを貼り付けて防具はよし。貼り付けるタイプだからエタニディス砲を撃つための右手の変形や、僕の太ももの装備を取る際に邪魔をすることがない。希ちゃんの胸のポケットもね。希ちゃんは追加の装甲ズボンをはいた。
かなりの重武装だ。それでも精鋭部隊を相手するのはちょっと不安がある。こっちはなんだかんだ繊維に頼った軟装甲、あっちはプレートアーマーなど金属装甲を装着した重装甲だからね。
一度僕がハックして殺し回ったからハック対策もしてあるだろうし。
まあ不安を言っていてもしょうがない。時は来るんだ。やれるだけやってやろう。
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