抗争とイバラキと

ロリ巨乳

 希ちゃんの借金残高はまだまだ一千万単位で残っているので、普通の仕事だけだと返しにくい。だから遺跡の情報も積極的に調べることにした。

 ジョンサムレディでタケナカシンジさんと会話。


「うーん、遺跡話はさすがに聞かねえなあ。イバラキなら戦前に研究機関と工場、空港があったから残ってるかもしれねえな、とりあえず今日運んでもらうのはこれだ、ハイパー。かなり高価なヤクだから失敗するなよ」

「イバラキかあ。改良された一二三号線が生きてるから行ってみようか。海もあるし」

「海用のスキン買わないとね。僕が錆びちゃう」


 というわけで茨城に行ってみることに。ハイパー輸送は、途中でカラーギャングが襲ってきた――つまりは輸送をほかのヤクザに知られていたと言うことになる――けど撃退。自分の戦闘能力の低下に驚く所があった。本当にアサルトライフルの反動が制御できない。以前はフルバーストでも全然余裕だったんだけど、今じゃ三点バーストでも最後の方は反動で銃身が上に跳ねる。バイオコンピュータでもできないことがあったんだ……。

 エタニディウスでできていた体は本当に凄かったんだなぁ……。それを一撃で半分に切断したあの鎧武者も凄かったわけだ。


 人間に当たれば風船が割れたようにはじけ飛ぶ車載重機関銃を使ってカラーギャングは対処。とどめにニトロを利用した火炎放射器で牽制して、脱出。手渡す場所を変えて手渡した。結構儲かったけど、他のヤクザがタケナカさんの縄張りで動いたとなると、タケナカさんのところでも抗争が始まりそうだ。


「さっさとイバラキに行っちゃいましょう。五年前かな、完全に一直線に敷き直されたから本当早く着くわよ」

「水戸市に着くんだっけ」

「そうね。でもミトは官公庁があるだけのデカい街。行くならヒタチかツクバね」

「遺跡探索なら日立の工場群、軌道航空機なら筑波かなあ」

「軌道航空機、ショウダアイリか。――まずはヒタチへ行って、それからツクバね。決まり! じゃあジョンサムレディでカクテル飲みながら餃子と焼きそばをお腹いっぱい食べてから出発しましょう。ウツノミヤ名物とも多少の間お別れだしね」


「そうだね、そうしよう」と言ってジョンサムレディへ。焼きそばと餃子を楽しんでいると、どう見てもヤクザですって感じの風貌をした人物が入ってきた。ここはタケナカのバーだぞ?


「おい、ウイスキー」

「飲み方はいかがいたしましょう」

「ロックにきまっとんだろ!! 殺すぞ!」


 ガラわりー。まあ触らぬ神にはたたりなし。何もしないでおこう。


「そろそろ行こっか。マスター、ごちそうさまでした」


 といって立ち上がって二人で去ろうとした時。


「おお、ねえちゃんロリ巨乳じゃねえか。いいねえ、俺はそういうのが好みなんだ、一晩付き合えや」

「ああん? だれがロリだあ? ふざけんな、貴様に触らせる体なんぞない」


 あっ。


「てめぇ! わしを何じゃと思ってる! タケナカとも相手をするノダゴウキだぞ! お前らこいつを連れて行け! たっぷりとお仕置きしてやる、女は特にな、グヘヘ」


 そういうと護衛の男二人が襲いかかってきた!


「私を舐めるな!」


 希ちゃんは腰からなにかを取り出すとそれを地面にたたきつける。


 バン!


 ものすごい音と閃光があたりに鳴り響く。閃光音響グレネードフラッシュバンだ。


『今のうちに逃げるわよ!』


 希ちゃんは僕と右手で握手してニューロリンクしそう伝える。

 ジョンサムレディでの暴行や殺人は御法度だもんね。

 先にずらかろう。しかし腰に音響閃光グレネードを仕込んでおくだなんて用意がいい。なんでも隠し持ってるね。


 バーから逃走し、ピックアップトラックには”戻らずに”周辺警戒を始める。タケナカさんとも連絡を取った。ちょっとオシオキが必要みたいだからね。


 左太ももに隠しておいた電磁サブマシンガンを衣服ごと移動させて手に取る。普通太ももに収納スペースを作っても衣服が邪魔して取り出せないけど、衣服ごと隠しスペースの蓋が移動するようにすれば取り出せる物なのだ。アサルトライフルはさすがに収納できないけど。電磁サブマシンガンは小さいからね。


 バーから出てきた護衛に、跳弾計算をしたバースト射撃で一人を葬る。

 目が良いのは凄いな。

 銃とスマートリンクできていれば、弾道計算ならずスマート・アイと併せて跳弾計算までできる。

 もう一人は引っ込んで出てこない。応援を呼ぶつもりだろう。まぁ呼んでも良いけど。

 希ちゃんがまた何かを投擲する。これも軌道計算されているのでピタリと護衛が隠れている所へ着地する。


 バン!


「突撃! EMPグレネードだから回路が壊れて何もできないはずよ!」

「援護頼む!」


 そういって僕は疾走する。護衛はサイバネ化がかなり進んでいたようで、しびれて動けなくなっていた。

 左手のエタニディウスセイバーでぐちゃぐちゃに破壊。再利用されても困るし。ああ、もう一人もやっておこう。


「処理完了。しかし、僕もEMPグレネード食らうとこうなるのか……」

「スキンのグレードを上げれば無効化できるようになるわ。頑張ってお金貯めましょ!」


 さてぼんやりする暇はない。この後はピックアップトラックに乗ってまともな武器を手にして本格戦闘だ。

 もう既にタケナカさんのところとやり合っているようで銃声が響き渡っている。


「ピックアップトラックでひき殺しながら重機関銃で潰していくわよ。タケナカの方は私たちを知っているから銃撃してこないし、ハンドサインをするように連絡しておいた。それで見分ける!」


 街中を駆ける。駆けた後には死体が残されているだけだ。


 どうやら相手は移民が多い下級階層のメキシコタウンを縄張りとしているヤクザで、美味しい平出歓楽街を狙ってタケナカさんの縄張りに仕掛けてきたらしい。移民の地区だから構成員は多いとのこと。竹中さんは腐っても中級階層の平出、御幸、御幸ヶ原、今泉を仕切ってるヤクザだ。数だけで勝てるとは思えないな。


「タケナカから通信。もうやらなくて良いって。ヘイト買いすぎたみたい。このまま一二三号線まで突っ切って一二三に乗るわよ」

「勝算あるから仕掛けたんじゃないのかなあ? ジョンサムレディはタケナカさんのバーでしょ? なにかあるんじゃ……」

「それがなにもないのよ。私に振られて切れちゃっただけみたいで。タケナカ構成員の偵察によると、戦闘用ロボットやフルサイボーグは複数所持しているみたいだけど、タケナカはロケットランチャーやミサイルランチャー所持してるからね、問題ないみたい」


 切れて宣戦を布告し戦力を減らしちゃうんじゃ、ついていく構成員もいなくなるのでは。なんともかんともなところだなあ。


「それじゃ、行きますか、茨城へ」

「うん。でもイバラキじゃバイオ燃料の精製工場が多分通常のしかなくて、今まで見たくジメチルフランハイオクが手に入らなくなるからこの子のパワーが出なくなるからね。あっちいったら制御コンピュータの操作しなくちゃ」

「――今までハイオクで走ってたんだ」

「当たり前じゃない。ウツノミヤはジメチルフランが豊富に精製されてるから安いのよ。日本有数のバイオ燃料生産地だからね、ウツノミヤって」


 僕は何も知らないまま、宇都宮を離れて茨城へ行くのだった。

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