EPISODE8 『今度は形』

 「え!? 何!?」

 ショッカクがびっくりして声を上げた。自分の腕から抜け出した、自分の中のソレがショッカクの腕に体当たりをしていたのだ。

 「あ、この靄がかかっている感じ。フゥロのソレですね?」

 シカクが自分に確認をしてくる。その言葉に首だけ縦に振って頷いた。

 「え、あの感じられない、ソレ?」

 「はい。確かにこれはフゥロのソレです」

 「え! 今、めっちゃ触った感じ、あったよ!」


 自分のソレはみんなから『聴こえない』『感じない』『見えない』『匂いがない』『味がない』と言われたものだった。だけどちょっと前に『見えない』から『靄がかかってる』くらいの変化があった。今度はショッカクが『感じた』という。


 「温度とか感触はまだはっきりしないけど。うっすら球体らしさは最初に比べてハッキリ感じられる。何より触ったっていう感覚が、ちゃんとわかる!」


 「へぇ……、この間もソレと関わった時に変化したよな、フゥロのソレ」

 チョウカクが言うとミカクもそれにのっかる。

 「そうだったねー、落ちてくるソレと関わると、フゥロのソレも感覚が出てくるのかな?」

 「ってなると、次はチョウカクさん、ミカクさん、オレの何れかの感覚が少し感じられる、ってことになりそうですね……」


 各々が自分のソレについて議論している最中、ショッカクに体当たりしたそれは自分の元へと戻ってきたかと思うと何事も無かったかのように、自分の中へと消えていった。


 アノコがそれを見て言う。

 「みんなが感じられるようにならないと、ボクも見てあげられないからなぁ……。でも、きっと大丈夫だよ。フゥロのソレも必ず“ある”から」

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アノコの世界のCASE2:『一緒に居て』が言えなくて CHOPI @CHOPI

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