EPISODE4 『吹雪の中の、お鼻が痛くなる感覚です』

 ――くんくんっ

 鼻を動かしてソレの匂いをかぎ取ろうとした瞬間でした。

 「――……!!」

 微かに感じたのは湿った、お水よりももっと冷たい……。そうだ、これは雪だ。しかもたぶん大雪、というよりも。さらに強い感じ、吹雪で鼻が効きにくくなる感じ。同時に感じたのは雪の匂いを通して感じる透明さ……を、越して最早痛いその香り。思わずソレから勢いよく顔を背け、チョウカクさんへと押し戻す。

 「?」

 「どしたのー?」

 チョウカクさんとキュウカクさんはオレの行動を見て頭に『?』を浮かべるだけ。そんな二人にオレは説明をする。


 「これ、吹雪の中の匂い、だと思います。もう匂いっていうより、鼻が痛くなるレベルです……!」

 オレもミカクさんと同じく、このソレからはすごく強い主張を感じた。それにしてもまだ鼻がひりひりする感じがする。

 「キュウカクもミカクと同じで主張が強い、って感じるのか」

 「主張、かなり強い部類だと思います。とにかく今、めちゃくちゃ鼻が痛くて……!!」

 「本当だー、キュウカクのお鼻、赤くなっちゃってるよー……!」

 いたそー、そう言いながらミカクさんは自分の鼻を抑えて眉を顰めていた。チョウカクさんは首をひねる。

 「なんでオレだけ、こんなに主張が弱く聞こえるんだ……?」


 鼻のダメージがなかなか取れないボクは、チョウカクさんにお願いをした。

 「他の皆さんの所にもこれから行くんですよね? オレ、ちょっと鼻の痛みがすぐに取れそうになくて……。ひとまず川の水を汲んで家に戻ってから、お二人に合流でもいいですか?」

 「あぁ、いや、そんな慌てなくて大丈夫だ。何だったらオレだけ先に他のやつの所にこのソレ持っていくけど。ミカクもまだ、口の中変なんだろ?」

 「うん……、確かにまだ治らないー。さっきよりは随分、マシにはなってるんだけどー」

 「そしたら二人とも落ち着いてから来いよ。オレ、先にシカクの所に行ってるから」


 チョウカクさんが気を回してそう言ってくれたので、オレは先に川で水を汲んで(ミカクさんはその間、木の実なんかを採取していた)ミカクさんと二人、まずはオレの家へと向かった。

 「……それにしても今回のソレ、主張強かったよねー……」

 「少なくともオレらには、そうでしたね」

 「でもチョウカクは『主張弱かった』って言ってたよねー……」

 「まぁ、往々にしてありますよね、こういうことも」


 オレの家について、ミカクさんには『適当に座っててください』と言って、先に生活用水を片付ける。それから冷蔵庫を開いてお気に入りのハーブティーをコップに入れてミカクさんの前に出す。ミカクさんは『キュウカクの作るハーブティー、美味しくて大好きなんだよねー』と言った後、『でも今飲むと、しょっぱいので美味しさ消えちゃうから少し我慢……』って言っていた。


 オレはその言葉を聞きながら、組んできた水を少しお鍋に移してお湯を沸かす。鼻が痛いのが取れないから、少し温めようと熱めにお湯を沸かしてその中に小さめのタオルを浸した。少しだけ冷ましてお湯を絞って鼻にあてる。

 「あったかー……」

 ようやく冷たくて痛いのが収まってきた。タオルが冷めるたびにお湯にタオルを浸して、を繰り返してようやく何とかいつもの感覚に戻る。


 「ミカクさん、オレの鼻、赤いの無くなりましたか?」

 ミカクさんに確認を取ると、

 「うん!もう大丈夫そうだよー」

 と言ってくれた。自分の感覚でももう大丈夫だと思ったので、ミカクさんの太鼓判に安心する。

 「ボクもそろそろ大丈夫かも」

 そういってミカクさんは今の今まで我慢していたのであろう、ハーブティーを口にした。

 「……うん!ボクも大丈夫そう!」

 二人感覚が元通り、ならもう大丈夫だ。

 「……そしたら行きましょうか。『シカクさんのところに行く』って、チョウカクさん言ってましたよね」

 「そうだねー。よし、行こー!」

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