第6話 鬼の娘

 【北西大陸グランホルン】

 この星、この世界トライアスに存在するとされる大地の中でも特に広大な【七大陸】と呼ばれる大陸の一つ。

 ユイグ達が先程までいたスタブ村はそのグランホルンの西部にある村であり、知る人の間では山外れの村と呼ばれている村だった。

 これから二人の向かうハーゲルンはその北部にある街であり、グランホルンに幾つも存在する街の中では比較的人口も多く、栄えた街である。


 そのハーゲルンを目指すハツメとユイグは会話を交えながら歩みを止めることなく進み続けていた。


「ところでユイグ。三千年前のこの大陸はどんな感じだったか覚えてる?」

「その辺はまだ思い出せん。ただ、消失しただろう記憶が戻るのが分かったのだから幾つか行けば自然と思い出せるかもしれない」

「自分の名前忘れてるものね」


 現時点でユイグの思い出せている記憶は断片的でよく分からないものも多いが、ハツメの言うように石魔人の顔や名前、人数を思い出す中で自分自身の名は思い出せないのはユイグ自身にとっても不思議だった。


「ところで、あのカボチャを撃った攻撃に関しては思い出したんじゃないの?」

「あれに関しては記憶の一部を元に見様見真似でやっただけだ、詳しくはまだ思いだしきれないから下手に使わない方がいいだろ」

「それなら仕方ないわね。一応、石魔人にある固有の能力の一つって事で間違いないとは思うけど。アクィラさんの紙には書いてたから」


 六人の石魔人にはそれぞれ複数の固有能力がある事実をハツメは古びた紙を読んで知った。

 ユイグが赤熱化した際の力も、アクィラが水の塊をぶつけたのもおそらくこの能力であるとハツメは推測している。


「そういえば飛行能力は全員あるのよね?」

「正確には浮遊能力だがな。今のオレはまだ本調子じゃないのか使えないが」


 ユイグは服越しに自分の胸元を摩り小さく溜め息を漏らす。


「とりあえず、本来なら核から発生した魔力を使って浮かべるんだ」

「なら別に翼は必要ないの?」

「まあ聞け。浮かぶと言ってもそこまで素早く自由に動き回れないんだこれが。だから、翼ある事により翼の動きで加速したり、自由な機動で動き回れる。空での戦いには不可欠ってことだ」


 決して翼が飾りではないことを教えられてハツメは納得する。

 石魔人にとって浮遊能力と翼あってこその空中戦で勝利出来るのだ。


「ただなぁ。確か別に翼でなくともマントでもいけた気がするんだよ。この辺は石魔人個人の好みもあるんだろうが」


 ハツメはマントで飛ぶ石魔人で、前世の世界で見たことあるマントで空を飛ぶヒーローを思い出す。   

 今のところハツメが見たのは三千年前のユイグの翼が蝙蝠のような翼、アクィラが鳥の翼である。

 ふと、アクィラの翼に関してハツメで気になることが浮かんだ。


「でもアクィラさん、羽ばたきながら浮かんでたけど。浮かぶ瞬間から羽ばたく必要あるの?」


 ハツメはアクィラが羽ばたきながら浮かんでいった時の事を思い出す。


「別に最初から急いでるわけじゃないなら、飛び立つ瞬間は要らないだろうな。まあ癖だ癖。オレも昔もたジャンプする時ですら翼動かしてた気がする」

「そういうことね。ところで武器やアレもだけど貴方の翼を作った方が良かった気がするんだけど」


 ユイグは倉庫でハツメと共に色々と作ったが、どういう訳かハツメから提案されても翼を作ろうとしなかった。


「翼はデリケートだからもっと良い素材手に入ってからだ。中途半端なもん作って急に浮遊だけになると動きづらくて結構面倒だぞ」


 翼が無いと空中から墜ちる訳ではないが、動きが途端に鈍くなるため、空中戦では狙いやすい的になり、加速で遠くへ来てた場合が戻るのに不便な事になる。

 ユイグとしてはこういう事になるのは避けたい。


「分かったわ。ハーゲルン着いたらその辺りも探してみましょう」


(確かに錬金術で身体作るのにも素材も大事、だけど、それがあっても私の錬金術だけではユイグの身体を完全な状態に出来るとは思えない……の協力もこの先必要になりそうな気がする)


 ハツメは心の中でユイグを石魔人として仕上げるには自分だけの技術では限界があるのではと考えていた。


(とりあえず、ハーゲルンに着いたらその辺も探してみようかな……)

「どうしたハツメ? 何考え込んだ顔してる」

「べ、別に何でもないから」


 ハツメは何とか誤魔化す。

 色んな事が漠然としてる今、このような事をユイグに話してもややこしくなるからだ。


「……ん?」


 ユイグはふと足を止め、近くの草むらの方をじっと見つめる。 


「何かあった?」

「いや、気の所為だ」


 ユイグは何も無かった様に再び歩き出す。


 二人がある程度先に進むと草むらが揺れ、草むらから小さな突起物が飛び出した。


「バレてないよな……よし」


 草むらの隙間から見える瞳から向く視線は先を行く二人を捉えていた。







――六時間後。


「ブギィ!」


 とある森の中にて、猪のような姿の魔物の断末魔が響き渡る。

 その魔物の身体を一本の槍が貫いていた。

 

「ひとまず今夜のはこれでいいだろ」


 魔物を狩っていたユイグは魔物から槍を引き抜き、小さい背中では背負いづらいため、仕方なく紐で縛って引き摺っていく。


 ユイグは近くの焚き火まで魔物を持ってくると、焚き火の近くで温まっていたハツメが寄ってきた


「早かったわねユイグ。……二匹も捕まえたの?」 

「まあ見た目こそ猪だが、食い切れなかったら持っていけばいいだろ」

(……というより、余計な荷物増えるのは増やしたくないんだけど)


 ハツメは少し呆れた顔で猪の内蔵を取り、使う分だけの肉の下ごしらえをする。


 その間ユイグは近くの椅子の上に座り、先程使った槍を持って穂を触りながら見ていた。


「石が多いとはいえ、鉄の欠片を混ぜたおかげかあの手の魔物も一撃で仕留められた」

「そう。身体の方はどうだった?」

「正直言うと、目覚めた時の身体よりは動きのキレは劣るがひとまずは大丈夫だろ」


 ユイグはこの小さな身体で戦えるか不安であったが、先程の魔物狩りでの動きから、一定の強さの魔物相手なら問題ないと感じていた。


「それなら良かった。だけど、アレはやっぱり必要よね」

「それはそうだ。あのカボチャ野郎ぐらいの相手にするなら確実に必要となる」


 立ち上がって荷台の上にある布に包まれた何かを触りながらユイグは言う。

 布の中身はこの先、ユイグにとって必要となるだろう代物であった。


「とりあえず出来たけど、食べる分だけ切り取る?」

「いや、一匹丸々焼く」


 今のユイグにも劣らぬ大きさの魔物の肉を丸々焼くことにハツメは苦笑いし、ユイグに持ってもらい太めの鉄串に刺して焚き火の火で焼く。


 しばらく経つと肉も全体的に火が通り、食欲を誘う良い匂いがしてくる。

 ユイグはハツメから包丁を受け取り、肉を切り取ってハツメ皿に盛る。


「とりあえずこれだけで良いか?」

「うん。お肉ばかりだとバランス悪いから」 


 ハツメは自分の皿に野菜とパンを載せる。

 偏った食生活に気をつけているのは前世頃の名残である。


「いざって時は残りは俺が食うから」

「そ、そう……」

(そもそも、人と違っても食事する時点でおそらく出るものは出るのよね……食事前に何考えてるんだろ……)


 ハツメはユイグの便について気になってしまったが、食欲が失せかねないので直ぐに考えないことにした。


「ユイグはご飯食べるならこれ教えてあげる」


 ハツメはユイグに見せるように真っ直ぐ伸ばした両手を合わせる。


「なんだ手なんか合わせて」

「いいからやってみて」


 ユイグも困惑しつつも言われるままに手を合わせる。


「いただきます」

「いただき……ます?」


 ハツメにとって前世の文化である食前の挨拶をユイグに見せ、ユイグを見様見真似でやってみる。


「なんだこれ?」

「フフッ、前に話した私の前世で食事する前にする挨拶なものかな。と言っても、本来は少し意味が違うんだけどね」


 ユイグは大きく切り取った肉を頬張りながら、興味深そうにハツメの話すことに耳を傾ける。


「折角だ。その前世の世界ってのを色々と教えてくれないか」

「別にいいけど、他の人には言わないでね。錬金術師抜きでも面倒な事になりかねないから」

「分かった。オレ達だけの秘密だ」


 そうしてハツメはユイグに前世の世界について語りだす。


 ハツメにとって辛い事も多く、心が壊れだす程の人生でもあったが、宝遠寺初芽として確かに楽しめる出逢いや思い出もあったのも確かだった。


 ユイグはハツメの語る電車や飛行機等の乗り物についてや、ダンス、映画、スポーツ等の様々な文化等、未知の情報一つ一つに楽しそうに食いついていった。


「こうやって楽しく話せる機会が出来たと思うと、ユイグと出逢えて良かったと感じるわ」

「こっちも気分は悪くない。色々と満たされる気分になる」


 二人は出逢ってから初めて楽しく会話が出来、お互いに満足感が高まる。


 そんな会話の中、ハツメがユイグと出逢った時から疑問に思っていた事を訊ねる。


「ねえユイグ――」


 だが、ハツメが続きを言う前にユイグが口を開く。


「なんでオレ達が人間と変わらない心を持ってるのか」

「……うん」


 ユイグは落ち着いた声でハツメが訊ねようとした事を呟いた。


「初めて会った時は驚いたわ。だけど、村の事があったから……」

「今の今まで訊けなかったのも仕方ない。お前自身がそんな様子じゃなかったからな」


 ユイグは焚き火を静かに見つめながらハツメに気を遣う。

 そして、肉を齧りながら顔色が少し暗くなる。


「それにオレ自身にも分からない事なんだ」

「やっぱり覚えてないの」

「そうかもしれないし、もしかしたら最初から知らなかったのかもされない。ただ、人型兵器に相当するオレ達が笑い、怒り、悲しめる、人と変わらぬ心を持ってる意味がやっぱり異質だろう。生み出された時の記憶も断片的過ぎて、かえってよく分からない」


 ユイグは自身の中にある核に問うように胸元に手を当てる。


「この核からして謎だろ。脳も無いオレ達にとってこれが脳の役回りもしてやがる」

「今の身体にそれ移し替えた時に見たけど、どんな物質で出来ていたのかすら分からなかったわ。聞いたこともない」


 石魔人の核、魔力や生体細胞を供給させ、記憶と思考も保有する謎多き黄土色に輝き続ける結晶体。

 錬金術を学ぶ上で多くの物質等を知っていたハツメですら何も分からなかった。


「まあ今はいいさ。これからの旅の中でいつか見つけてやるから」

「そうよね。二人で助け合えて、気持ちが分かり合える。別に悪いことじゃないものの」


 二人の表情に再び笑顔が浮かび上がる。


「じゃあ、とっとと飯食い終わって――――ッ!」



 ユイグは急に目が見開き後ろを向く。

 二人の直ぐ近くの木の方から何かの音がしたからだ。


「動物、魔物かしら……」

「ここを動くな」


 ユイグはゆっくりと音のした木の前に立ち、足元を見下ろす。

 案の定今折れたばかりだろう木の枝があり、しかもそこには人の足跡らしきものがあった。


(……まさかあの時の)


 ユイグは警戒しながら周囲を見渡すが人影はなく、だが確かに近くに気配はした。


「…………そこか!」


 ユイグは目の前の木を右手を広げて勢いよくぶつける。

 すると……。


「わわぁ!?」


 木の上から何かが落ちてきて、ユイグはそれを両手で受け止める。


「あ〜ビックリした……。あっ!」


 それはユイグの顔を見て驚き、ジタバタと動きながらなんとかユイグの手から抜け出して走り出す。

 だが、混乱していたためだろうか、逃げるどころか間違えて焚き火の方へと向かってしまい、焚き火の前で固まる。

 そして焚き火のところにいたハツメと目が合ってしまった。


「ゲッ、マズい! どどど、どうしよ……」

「えっ! まさか!?」


 両者はお互いを見て驚いている。

 そこにユイグが静かに寄ってきてそれの左手を掴む。


「は、離せよぉ!」

「うるさい。なら何故オレ達を追ってきたのか説明しろ鬼」


 ユイグはそれを鬼と呼んだ。


「そうだ! こちとら天下の鬼人オーガだぞ!」


 赤みがかかった明るい茶色の肌、焦茶色の短い髪、金色の瞳を持つユイグと同じ位の背丈の少女。

 何より特徴的な小さな二本角を生やしたそれは鬼人に他ならなかった。


「大きさだけなら小鬼ゴブリンの可能性あったが、特徴的な肌色と瞳、やはり間違いないな」

「うるせえ!ウチとアンタもチビに変わりないだろうが!」


 鬼人は暴れ、叫ぶ姿にユイグはその手を離す。

 ハツメは落ち着きを取り戻してたのか立ち上がり、ゆっくりと鬼人に近づく。


「ねえその格好……」

「近づくな! ウチは金目の物なんか持っちゃいねえぞ!」


 鬼人は息を荒くしながら腰に引っ掛けていた鎌を二人に向けて威嚇する。

 ハツメは「まあまあ」と言いながら鬼人を落ち着かせようと語りかけ、効果もあったのか鬼人の様子も大人しくなり鎌を下ろす。


「フゥフゥ……で、ウチの格好がなんだよ」


 鬼人はハツメに警戒しつつも先程の発言について訊く。


「だってそれ……着物でしょ?」


 気になるのも無理はない。

 鬼人の少女が着ていたのは前世で日本人が着ていた着物だったからだ。柄もどことなく日本の反物に似ている。


 そんなハツメに鬼人はやや面倒くさそう表情を浮かべていた。


「だからなんだよ。ウチの地元の私服だぞ……ハッハ〜ン。コガネノ国を知らない田舎者だな!」

「コガネノ国……?」


 初めて聞く国の名前にハツメは困惑するが、隣にいたユイグがハツメの右手を軽く叩き、ハツメはユイグの方を向く。


「そういえばユイグ無視してた……ごめん」

「まったく……。とりあえず何の話か知らんが気をつけろ。コイツはおそらく、この森に入る前からオレ達を追ってきてんだぞ……」

「それなら追ってきた理由も訊かなくちゃ……あっ?」


 ハツメは鬼人のいた方を見るとその姿は無かった。

 てっきり逃げたと一瞬ハツメは思ったが、そのまま視線を少し横にずらすと鬼人がいた。


「あっ」


 焼いた肉の残り、ユイグが手を付けてた肉に齧り付きながら。


「おいテメエ」 

「ヒィィ!?」 


 ユイグは鬼より鬼のような表情に豹変しながら、目にも留まらぬ速度で鬼人に迫る。


「オレの飯盗んでんじゃねぞ……?」

「食べないでぇ!てか取るな!」


 肉を取り合う小さな石魔人と小さな鬼人。

 そんな奇妙な光景にハツメは子どもの喧嘩を見てる様な気分になった。


「…………なにこれ」





――――それから一時間後。


「なるほど。かなり遠い所から来たのねユラちゃん」

「おう!理由は言えないがな!」


 木串を咥えながら自分の素性を話す鬼人の少女【アユラ】。

 どうやらグランホルンよりも東にある【北方大陸シルバーグ】にある【コガネノ国】の出身らしい。


「それで、そんな所から来た奴がなんでオレ達を付けてた」


 魔物の骨を齧りながらアユラを怪しみながら見るユイグ。


(どっちもアユラちゃんとユイグが食べちゃったわね。重荷にならないか良かったけど……)


 結局のところ、先程の肉はアユラが食べさせることになり、捕まえたもう一匹を焼きユイグが丸々食べてしまった。


「付いてったら下手に魔物と遭遇しなさそうだし、ついでに武器や食料も盗んでやろうと思った」

「予想は出来たが正直その通りで呆れてくる……」


 あまりにも正直なアユラの言葉に、ユイグはもはや怒るのも馬鹿らしくなってきた。


「だけど結局はこのザマよね。それでウチをどうするの?」


 アユラは先程の警戒は何処にいったのか、気の抜けた顔でユイグとハツメの顔を交互に見る。


「どうするもこうするも、私達はハーゲルンに行くのに邪魔しなければいいけど」


 ずっと付いてきていたとはいえ、ハツメにとってはこれといった被害は無いため、アユラの事は悪戯好きの小動物くらいに近い感覚すらある程あまり気にしていなかった。


「っても、ここで解放してもどうせ付いてくるぞコイツ」

「そりゃそうよ。それに話を盗み聞きした感じ、ウチもアンタ達も表立って素性バレるとマズい立場じゃん?」

「お前……」


 平然と自分の素性の危険性を理解しているアユラの発言にユイグは言葉に詰まる。


「ウチ等はハッキリ言って悪魔と同じ魔族の類だからね。どこ行ってもそうでしょ」


 アユラの言う通り鬼人は古い魔族の一種であり、他の魔族とも引けを取らぬほど多くの悪名を歴史に轟かせており、気性の荒い性質は現代でも変わらないため、鬼人は世界中で捕獲、討伐の対象とされていた。


「アユラちゃん。この辺りに来るまでも大変だった……?」


 ハツメの脳裏に錬金術師を恐れる人々の姿が想起される。


「大変っちゃ大変だったかな。と言っても角隠しときゃ案外誤魔化せるもんだったけど」

「そう……」

「まあそんな事はいいよ。それよりもさ」


 アユラはニヤニヤと笑みを浮かべる。


「ウチを旅に同行させてよ」

「「えっ」」


 サラリと飛び出す発言に二人は同時に声が出る。

 ユイグにいたっては少し固まっている。


「でも貴方の目的も知らないのよ? それに私達の旅の目的も話してないし」

「別にいいって。 ウチは実家が嫌で遠くでぶらりぶらりしてるだけで十分だし。ユイグの奴は何か怖いところあるけど、ハツメは話しやすいから」

「そうは言っても……ねえ、貴方の方から何か言ってよユイグ」

「あっ、うん」


 助け舟を求めるハツメの言葉にユイグはハッとなり、アユラの方を睨みつける。


「お前と一緒にいてオレ達に何の得がある?」

「うーん、魔物の知識に……潜入に……」

「…………」


 もうどんな態度で会話したらいいかユイグには分からなくなり、ハツメの方に呆れ顔で視線を移す。


「お前に任す……」

「えっ」


 どう手を付けたらいいか分からないアユラをどうするかについてユイグはハツメに全部投げてしまった。

 まさかのユイグの行動にハツメも戸惑いを隠せない。


「ウチ、頼まれた事はやれるだけはやるからさぁ。連れてってよ〜ハツメお姉様ぁ」


 猫撫で声も使いながらハツメに寄ってくるアユラ。

 ハツメもこれ以上続けても終わりが見えないからか、溜息を漏らしつつも決心する。


「……今日からよろしく」

「やったー!」


 正直なところ折れたのが正しいが、呆れ顔のユイグとハツメに新たな仲間、鬼人のアユラが加わった。


(オレ達のこれからどうなるんだ本当……)

「アハハハハ」


 旅の行く末に不安を抱えるユイグのことなど知らず、アユラは森の生き物達の睡眠を妨げる程に声を上げながら喜んでいた。

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