5(2)


 メッセージも通話も全て試した。そのどれもに返事はなかった。

 デートの誘いを送ってから丸一日が経ち、どうにもこれはおかしいと思った碧は、昌也にすぐさま連絡を取った。彼も連絡がマメな智夏から音沙汰がないということが何を意味しているか理解して、慌てて自身でも連絡が取れるか確認し、そして兄にまで連絡を取ってくれた。

 時刻が遅かった――丸一日待ってみたので、日付が変わろうとしている時間だった――ためか、兄からの連絡が入ることもなく。

 胸騒ぎがして、その日はなかなか眠れなかった。時たまうつらうつらとして時間が過ぎ、なんとも晴れない心と頭のまま朝を迎えてしまう。そして、休日用の遅く設定した目覚ましのアラームより先に、昌也からの着信で目が一気に覚めた。

「もしもし……?」

『碧ちゃん! ちゃんと寝れた!? 頭はっきりしてる!?』

「え……寝れんかったけど、何かわかったん!?」

『えっとな……さっき兄貴からメッセージが入って、病院に姐さん迎えに行ってくるとか言っとるねん!』

「え、病院!?」

 驚く碧に、昌也も同じく混乱した声で答える。

『メッセージしか来てなくて、通話も多分運転中やからか出んくてさ。オレ、これから出勤やから助けてやれんねんけど、碧ちゃん一人で大丈夫そう?』

「行く! 大丈夫っ!! 今から行く! 病院って、この前の病院で合ってる!?」

『多分そこやと思う! つかそこじゃないともうオレもわからん!! 碧ちゃんにも、何も言ってへんのやろ?』

「うん、私なんも聞いてない。もう直接聞く!!」

――引継ぎのことも、病気のことも、そんで……昌也くんのお兄さんのことも……

 本当ならば、一番に連絡が来て、一番に駆け付けるべき存在なのは自分のはずだ。

 しかし現実は、病院に向かったのは昌也の兄だった。きっと彼は、智夏に呼ばれたに違いない。それか、彼とは連絡を取り、今日の予定を知っていたに違いないのだ。

「お父さん! 車貸して!!」

 化粧もしていない。適当に引っ掴んだ服に着替えたままの恰好で、碧は家を飛び出した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る