第4話「天使が舞い降りた」
――玲サイド――
私の名前は
まあ、仕事はそれだけじゃないんだけど。
ラピスラズリ荘の寮長の仕事は、仕事というより趣味かな。
昨年学園から徒歩十分のところにNEWラピスラズリ荘が出来てからは、旧寮には殆どの生徒が住まなくなった。
旧寮を取り壊すことも可能だけど、祖父が気に入っていた場所だから取り壊すのも忍びない。
なので古くても旧寮に住みたいという人間がいる間は、ラピスラズリ荘はそのままにしておこうと思う。
そんなある日、ラピスラズリ荘に入寮を希望する生徒が現れた。
入寮希望者は
親の仕事の都合で入寮することになったらしい。
寮の外観を見て、びっくりして逃げ出さないといいけど……。
はるとくんについては年齢と名前しか知らなかったから、はるとくんと初めて会ったときは驚いた。
肩で切りそろえられたサラサラの髪、あどけなさの残る顔、華奢な体躯、白くきめ細やかな肌、どこからどう見てもスレンダーな美少女だ。
はるとくんにスカートを履かせたとしても、おそらくなんの違和感もないだろう。
はるとくんを見たとき、天使が舞い降りて来たんじゃないかと思った。
一目惚れってあるんだな。
私は寮長、学生に恋愛感情を抱くのはよくない。
良くないとわかっているのに、はるとくんを自分のものにしたくなってしまった。
しかし相手は成人しているとはいえまだ高校生、手を出すわけにはいかない。
せめて彼が高校を卒業するまで待たないと。
それまではるとくんに変な虫がつかないように監視しないとね。
はるとくんを抱きしめたい衝動をなんとか理性で抑え、はるとくんを部屋に案内した。
はるとくんの部屋は102号室。
今日から私の部屋の隣に、こんな愛らしい少年が住むのか……。
彼が卒業するまで欲望を理性を保てる自信がない。
そんなことを考えながらはるとくんに部屋の鍵を渡した。
あとで「作りすぎてしまったんだけど……」といって、シチューを持っていってあげよう。
あわよくばこれから毎日、はるとくんと朝食と夕食を一緒に取れるかもしれない。
なんて考えながら自室で二人分のシチューを作っていたら……。
隣の部屋から物凄い音が聞こえた。
何事かと思い、エプロンを脱いで隣の部屋へと向かう。
はるとくんの部屋の鍵は開いていた。
胸騒ぎを覚え室内に入る……そこで私が目にしたのは……。
壊れたお風呂の扉、床に大きな穴が開いたキッチン。
お風呂の蛇口が壊れたのか、蛇口から水が噴水のように吹き出していた。
シャワールームには一糸まとわぬ姿のはるとくんがいて、水道の蛇口を必死に押さえていた。
出会って数時間ではるとくんの裸を見ることになるとは思わなかった。
「はるとくん。とりあえず前を隠そうか」
欲望を理性で抑え、冷静にそういった自分を褒めてあげたい。
☆☆☆
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