第3話「同居」




「えっ??

 僕と玲さんが同室?」


「うん、はるとくんがお風呂に入っている間に業者の人に来てもらって、使ってない部屋を見てもらったんだけど、しばらく使っていなかったせいかどの部屋も劣化がひどいんだ。

 だからこの際だから空き部屋を全部点検してもらい、傷んでいるところを修繕してもらおうと思ってね。

 だから改修工事が終わるまでの間、はるとくんには私の部屋に住んでもらいたいんだけど……だめかな?」


玲さんが悲しげに眉根を下げる。


眉根を下げる玲さんも美しい……!


「全然嫌じゃありません!」


「そう、よかった」


玲さんが花が綻ぶように笑う。


玲さんの笑顔に胸がキューンと音を立てる。


この寮の作りが全室同じなら、玲さんの部屋も1Kのはず!


狭い部屋にベッドは2つ置けない。


ということは僕は玲さんと同じベッドで寝るの??


……………なんて妄想してたんだけど。


「玲さんの部屋は2DKなんですね……」


玲さんの部屋にはキッチンの他にもダイニングがあって、お風呂にも脱衣場があった。


この部屋だけ作りが違うんだから、部屋が二つあっても不思議じゃない。


「ごめんね、布団じゃいやだったかな?」


玲さんは普段書斎に使っている部屋に布団を敷いてくれた。


「そんな、全然!

 寝る場所があるだけありがたいです!」


「そう言ってもらえてホッとしたよ」


玲さんは布団を敷き終わると書斎を出ていった。


玲さんが出ていったあと部屋を見回してみる。


壁一面の本棚と机があるだけの殺風景な部屋。


書斎の本棚には難しそうな本が沢山並んでる。


英語のタイトルの本もある。


玲さんはこの本を全部読んだのかな?


だとしたら玲さんは頭がいいんだなぁ。


それよりも今は布団だ。


玲さんが敷いてくれた布団にダイブする。


この布団で玲さんも寝たことあるのかな?


玲さんの匂いがするかも?


玲さんが書斎を出ていったあと、布団の匂いをくんくんと嗅いでいた。


「ふわわ〜〜玲さんの匂い〜〜」


「あっ、そうだはるとくん明日の朝食なんだけど……」


そのとき扉が開いて玲さんが入ってきた。


布団の匂いを嗅いでるところを玲さんに見られてしまった!


「はるとくん、布団の匂いを嗅いでたの?」


「あっ、いやこれは……」


「その布団新品だから安心して」


「……は、はい」


「明日の朝食は鮭にしようと思うんだけどいいかな?」


「……はい」


「それじゃあ、おやすみ」


玲さんはゆっくりと扉を閉めた。


『うにゃぁあああ!!

 玲さんに布団の匂いを嗅いでるところを見られたぁぁあああ!!』


「玲さんに変態だと思われたかも……」


玲さんが扉を閉めたあと、僕は布団に顔を押し付けてこっそりと泣いた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る