第8話
みちるは、7月18日の夜を境に善悪の区別がつかなくなった上に学校に行かなくなった。
9月25日頃に担任の先生が家庭訪問に来た。
担任の先生は、元気になったらまた来てくださいとみちるにやさしく言うた。
担任の先生が言うた言葉にブチ切れたみちるは、過激な行動に出た。
事件は、その翌日の朝10時前に発生した。
みちるがいたクラスの子が使っているアイパッドがなくなった事件が発生した。
事件が発生した時、クラスは体育の時間が終わった頃であった。
生徒たちは、体操着から制服に着替えようとしていた時であった。
「あああああああああ!!」
「どうしたのよ一体!!」
「アタシが大事にしていたアイパッドがなくなった!!」
「ええ、どういうわけ!?」
この時、男子生徒のひとりがみちるが盗んだと言うた。
「オレ、アイパッドを盗んだ犯人を知ってるぞ!!」
「ああ、もしかしたら大貝じゃねえか!?」
「絶対そうだよ!!」
「大貝をみつけたら、オレたちでやっつけてやる!!」
「ああ、がまんならない!!」
クラスのみんなは、一斉にドカーンとブチ切れた。
その頃であった。
よしえは家にいまして、ダイニングの戸棚の中からスナック菓子を出して、テレビをみようとしていた。
この時、ダイニングのテーブルの上に問題のアイパッドが置かれていたのをみた。
しかし、よしえは見過した。
そこへ、電話のベルがけたたましく鳴り響いた。
(ジリリリリリリリリリリリリリン!!ジリリリリリリリリリリリリリン!!)
どこから電話がかかって来たのよ…
よしえは、ものすごくめんどくさい表情で電話に出た。
電話は、みちるが通っている中学校のクラスの担任の先生からであった。
「大貝でございます…もしもし、おたくどちら様でございますか!?」
電話の向こう側にいる担任の先生は、ものすごくめんどくさい声でクラスの子が使っているアイパッドがなくなった事件が発生したと言うた。
よしえは、ものすごくイラついた声で言うた。
「もしもし!!今さっきアタシになんて言うたのよ!!アタシがしんどい時にくだらん電話をしないでよ!!」
(ガチャーン!!)
よしえは、ほがそ(ぐちゃぐちゃ)の髪の毛を両手で思い切りかきむしりながらキーッと怒った。
もうダメ…
もうダメ…
しかし、その一方でよしえはテーブルの上に置かれているアイパッドがもしかしたらそうなのではないのかと思い直した。
もしかしたら…
クラスの子が探しているものかもしれないわ…
今だったら、まだ間に合うわ…
よしえは、テーブルの上に置かれているアイパッドを持って、学校へ行くことにした。
ところ変わって、みちるが通っていた中学校の正門の前にて…
よしえは、クラスの子が探しているアイパッドを届けに学校へ来たが、急にこわくなったのでその場から走って逃げた。
よしえは、学校から700メートル先にある露地裏まで逃げ込んだあとその場に座り込んだ。
怖い…
どうしよう…
(ポンポン…)
この時、肩をポンポンと叩く気配を感じた。
びっくりしたよしえは、後ろをふりかえった。
よしえの肩をポンポンと叩いたのは、2軒となりの家の奥さまだった。
「大貝さん、大貝さんの奥さまよね?」
「ああ、おとなりの奥さま…」
「奥さま、さっき学校の正門の前で見かけたけど一体何があったのよ?」
「えっ?」
「奥さま…あんたもしかして…」
「アタシ…アタシは、アイ…ああ、なんでもない…なんでもないのよ…」
「それだったら、なにもおびえることはないわよ…」
近所の奥さまは、よしえに心配そうな表情で言うた。
しかし、よしえは恐怖におびえていた。
近所の奥さまは、よしえに『奥さま、知っていたかしら…』と言うてから、こう言うた。
「奥さま、ナカモトさんの家のお坊っちゃまが家に帰ってへんと言うて、ご夫婦が騒ぎまわっていたことご存知かしら。」
「ナカモトさんカタの息子さんが家に帰ってないって!?」
近所の奥さまからエアガンのもめ事を起こして問題になっていた男の子が行方不明になっていると言う話を聞いたよしえは、顔が真っ青になった。
どうしよう…
どうしよう…
よしえの頭は、サクラン状態におちいった。
近所の奥さまは『ねえ、落ち着いてよ。』と言う表情でよしえに言うた。
「奥さま、あんたどうしたのよ?」
「ああ、なんでもないわよ。」
近所の奥さまは、変な目付きをしながら『まあええけど…』と言うてから、よしえに言いました。
「奥さま、ここだけの話だけど聞いてくれる?」
「えっ?」
「あのね、うちナカモトさんのご夫婦のことで悪いうわさを聞いたのよ…」
「えっ?それどういうことですか?」
「あのね…殺された男の子ね…8年前に…ナカモトさんの奥さまのオニイ夫婦が…ユーカイした子だったのよ。」
「ユーカイ?」
「あんた知らんかったん?」
「それって、どういうわけなのよ?」
「知らんかったん?ナカモトさんの奥さまのオニイ夫婦ね…ギャンブルで作った借金があったのよ…総額は10億よ…」
「10億!?」
「8年ほど前に浜松市内のパチンコ店で、駐車場の車に閉じ込められていた1歳の子どもをナカモトさんの奥さまのオニイ夫婦が助けたのよ…だけど、近くに係員がいないのを見て連れ去った…そして…」
「身代金ユーカイ…」
「そうよ…その後、身代金を持って行方不明になったあと東尋坊(北陸地方)で…」
「心中したって!?」
「そうよ…その前に、男の子はナカモトさんのご夫婦に預けられたのよ。」
「そういうことだったのね。」
「ナカモトさんのご夫婦はどうかしているわよ…子供にエアガンを買い与えるなんて非常識きわなりないねぇ…」
近所の奥さまは、近所の家の悪口をよしえに言いまくった。
耐えきれなくなったよしえは、その場から走って逃げた。
一体、どういうわけかしら…
よしえは、恐怖におびえていたので、落ち着いて物事を考えることができなくなった。
思い余ったよしえは、みんなが寝静まった頃を見計らって男の子の遺体を棄てに金城埠頭の近くの緑地公園の草むらの奥深いところに隠したあと、その場から逃げた。
それからしばらくしまして、緑地の砂の中にひそんでいたヒアリが大量に発生した。
ヒアリの大群は、男の子の遺体を喰べあさった。
その翌日の夕方5時過ぎであった。
よしえは、ここ数日の間料理をすることができなかった。
この日もまた味噌煮込みうどん屋さんのお手製の味噌煮込みうどんの出前で晩ごはんにした。
よしえは、きよひこの両親から文句を言われた。
「また味噌煮込みうどんか!!」
「昨日もおとといも味噌煮込みうどんうどんが続いているじゃないのよ。」
「料理教室へ行って料理の勉強してこい!!」
「やかましいわね!!文句があるのだったら食べないで!!」
(ジリリリリリリリリリリリリリン!!ジリリリリリリリリリリリリリン!!)
この時、電話のベルがけたたましく鳴り響いていた。
よしえが電話に出た。
電話の相手は、やくざ組織の組長からだった。
「大貝でございます!!」
よしえは、ムッとした表情で言うた。
やくざの親分は恐ろしい声でよしえに言うた。
「奥さん、あんたのダンナがワシのかわいいレコ(女)に手ぇつけたあげくに女と行方をくらませたと聞いたぞ…どないしてくれるんねん!!」
組長がよしえに凄んだので、よしえは組長に言い返した。
「もしもし、うちのヤドロクが何をしたと言うのよ!!言いがかりをつけるのであれば、考えがあるわよ!!」
「よしえさん。」
この時、きよひこの父親がよしえに電話を代わってくれと言うた。
きよひこの父親は、受話器ごしにいる組長に説明を求めた。
しかし、組長はきよひこの父親に凄んだ声で言うた。
「クソッタレジジイに用はねえんだよ!!」
きよひこの父親は、なおも話がしたいと組長に頼んだ。
組長は、ブチキレを起こした。
「オドレはワシらをグロウしとんか!!」
「アニキ…」
「もうアカンみたいや!!女つき出せ!!」
「へえ。」
この時、ともえがやくざの男たち数人の前につき出された。
ともえは、やくざ組織にユーカイされた…
組長は、電話口の向こうにいるきよひこの父親に言うた。
「あんたはワシらをグロウしたから、オドレのかわいい娘を始末するぞ!!」
組長は、ともえが着ているスカートに受話器を向けた後に右手でくしゃくしゃにしながらまくりあげた。
「イヤ!!イヤやめて!!やめてイヤ!!」
組長は、なおも恐ろしい声で言うた。
「次は…スカートの中だ…」
続いて、スカートの中からショーツが脱がされた。
「イヤ、イヤやめて…やめてイヤ!!」
組長は、持っていたサバイバルナイフで、ともえが着ている白のブラウスを思い切り切り裂いた。
(ビリビリビリビリビリビリ!!)
ブラウスの中から、シルクのキャミソールが現れた。
やくざの親分は、ナイフでキャミソールのストラップをちぎった。
ともえは、より強烈な叫び声をあげた。
「ギャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!イヤァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!」
受話器の向こう側で、ともえがより強烈な叫び声をあげていたのを聞いたきよひこの父親は、電話を切った。
一体、どういうわけだ…
どうして、ともえがやくざ組織に連れて行かれたのだ…
きよひこの父親は、深い悲しみに包まれた後に、ガックリと肩を落とした。
きよひこの両親から言われた言葉にブチ切れたよしえは場、となりの住居へ怒って帰った。
もうダメ…
がまんの限度だわ…
よしえがそう思っていた時、恐ろしい事件が家の中で発生した。
事件は、みちるが使っている部屋で発生した。
みちるの部屋のベッドの上に、茶髪のチャラチャラした男が生まれたままの姿で寝そべっていた。
それをみたよしえは、強烈な叫び声をあげた。
「ギャァァァァァァァ!!イヤァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!」
よしえは、頭がサクラン状態におちいった後に、めちゃくちゃになって茶髪のチャラチャラした男を硬い棒で殴り付けた。
「ああ、助けてくれ!!」
「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
よしえは、チャラチャラした男を家から追い出した。
その直後に、シルクのキャミソールとフレアパンティ姿のみちるが部屋に戻って来た。
よしえは、下着姿のみちるをみるなり平手打ちで力を込めて顔を5回以上叩いた。
「みちる!!」
(バシッ!!バシッ!!バシッ!!バシッ!!バシッ!!バシッ!!)
よしえからより強烈な力で顔を叩かれたみちるは、よしえに怒った声で言うた。
「何するのよ!!」
「何するのよじゃないでしょあんたは!!」
「うるさいわね!!よくもアタシのカレにきつい暴力をふるったわね!!」
「あんたを守るために殴ったのよ!!」
「アタシを守るためだったら、相手の命を絶つこともやむ無しと言いたいわけなのね!!」
「いいえ、みちるを守るための正当防衛です!!」
「もういいわよ!!おかーさんを一生許さないから!!」
「それだったら出て行きなさい!!」
「出て行くわよ!!借金まみれの家には2度と帰って来ないから!!」
その後、みちるは家出した。
そして、そのまま帰らなくなった。
ひとり残されたよしえは、家の中で暴れまわった。
その一方で、ともえが揖斐川の河口付近でボロボロに傷ついた状態で亡くなっていたという知らせが家に入った。
家族は、ともえの死を悲しむことができなかった。
そしてまた、新たな悲劇の幕があがった。
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