第10話 堕ちた手を掴む光

この世界は皮肉に塗れている。

俺はリリカを救えなかったのか.....?

そう考えながら俺は病室から窓の外を見る。

話によればリリカは警察の任意の事情聴取を受けてからだったが。

家族間でこれ以上トラブルを引き起こさないという条件でそのままリリカは家に帰された.....らしい。


俺はその説明を萌香から受けていた。

そして.....萌香が帰った後。

俺は外を見ていた、という形だ。

初恋の人をやはり救えないのか.....?

思いながら俺は外をジッと見ていると。


ドアが開いた。

それから俯いた感じでリリカが入って来る。

俺はその姿を見るなり、どうしたんだ、と聞いてみた。

するとリリカは、反省したんです、と言ってくる。


俺はその言葉に、そうなのか、と言いながらリリカを見据える。

リリカは悲しげな顔をしながら、御免なさい、と言う。

何を信じれば良いのだろうか。


俺は思いながらリリカを見つめる。

今は信用出来ないけど。

だけどそれじゃ.....駄目かもな。


「リリカ。.....変われるか」


「.....今度こそ変わりたいです。私は」


「.....そうか。.....だったら応援する」


「.....はい」


そう言いながらリリカは泣き始める。

俺はその姿を見つつ溜息を吐きながら外を見た。

それから少しだけ経った後に泣き止んだリリカは、私は悪い女の子ですね、と言ってくる。

その言葉に俺は否定はしなかった。

だけど。


「悪い女の子だけど。.....お前も苦しかっただろうしな」


「.....何でそんなに優しくしてくれるんですか。先輩」


「俺としてはお前に変わってほしいと願っている。心から。その苦しみを分かち合いたいんだ」


「.....」


御免なさい、御免なさい、と。

嗚咽を漏らすリリカ。

どうしたら良いのか分からないですから、と言いながら。

俺はその言葉に、お前は普通で居れば何でも良い、と答える。


「お前の普通が何なのか分からないけど。でも.....それでも普通は普通だ。.....だから決して過ちをするな」


「.....分かりました。今度こそ.....私は変わります。絶対に」


言いながら涙をハンカチで拭った。

それから俺を真っ直ぐに真剣な顔で見てくる。

俺はその姿を見ながら、よし、と言いつつ頭を撫でた。

リリカの頭を、だ。


「.....もう。先輩。子供扱いしないで下さい」


「子供見たいってお前は子供じゃないか」


「それを言うなら先輩もでしょ」


「.....まあ確かにな。クソガキだよな」


俺は苦笑しながらリリカを見る。

リリカは顔を歪ませながら頭を下げる。

そしてそのままリリカと他愛無い話をしてから。

そうしてからリリカは家に帰った。



何とか退院した。

それから俺は自宅に戻り。

心配する葛葉を見ながら俺は苦笑した。

そしてやって来てしまっていた期末考査の追試を受けてからそのまま考える。

そういや6月は.....リリカの誕生日だったな、と。


「.....盛大に祝いたいが.....どうなんだろうな」


俺は考えながら顎に手を添える。

そして目の前の本棚を見る。

リリカの.....誕生日、か。


一体何を贈ったものか。

それからどうするべきか。

俺は必死に考える。

せっかく.....と言うか。

アイツが変われる機会の1だと思うしな。


思いながら俺はメッセージを書いた。

それから送信する。

相手は萌香だ。

すると.....萌香から返事が直ぐにあった。

誕生日別に祝わなくても良いけど.....君をそんな目に遭わせたしね、と。


(そうは言ってもな。お前の妹だから。後悔の無い様にしたい)


(君は優しいね。本当に。.....分かった。私も何とかする)


(頼む)


(うん)


そして2人で考える。

どういうのが良いのか、と。

それからこんな結論に至った。


どういう結論かというと。

つまり2人で何かを贈ろう、と。

共同で、だ。


(萌香。有難うな。協力してくれて)


(いや。別に良いんだけど.....でも良いの本当に?あの子.....変われるか分からないし.....こんなのもしかしたら意味すら無いかもよ)


(お前は家族だからそう思うかもしれないが。俺はワンチャン賭けたい)


(全くもう。.....だから私が好きになるんだね。君は)


その言葉に少しだけ赤くなる俺。

そして口元を拭う。

全く。小っ恥ずかしいセリフを平然とよく言えるな、と思いながら。

それから俺達はリリカの為に。

未来の為に.....動き出す事になった。

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