Interlude 03 そこにある危機

 「推理ショーの様子は兵庫県警と大阪府警が傍受ぼうじゅする形を取ってもらう。これは私の身に何かあったときのための御守のようなものだ。」

 「もしかして、阿室さんが犯人に殺される可能性も考えているんですね。」

 「もちろんだ。仮に私が犯人に殺されたら、テレビ局の方で『しばらくお待ち下さい』のテロップを出してもらうようにお願いしておいた。それぐらい、犯人は凶悪な人物だ。私の身に何が起こるのか分からない。」

 「そこまでしてあの推理ショーを全国ネットで中継するなんて、阿室さんも肝が据わっていますね。」

 「ああ。じゃないと小説家はやっていけない。いや、今は探偵だったな。」

 「兎も角、阿室さんの身に何かありましたらその時は僕たちが駆けつけますんで、安心して推理ショーを繰り広げてください。」


 推理ショーも終盤に差し掛かった頃だった。

 案の定、犯人は暴れ出す。

 「それにしても本当に西九条悦子が犯人だったとは・・・。阿室さんの推理、こっちまで見入っちゃいましたよ。」

 「神結刑事、私語を慎め!犯人が暴れているんだぞ!」

 「すみません。それは兎も角、西九条悦子の様子がおかしいような気がするんですが・・・。」

 「確かに、独白を始めた辺りから何かに取り憑かれたような感覚を覚える。喩えるならば悪魔に取り憑かれたような感覚とか。」

 「まあ女優さんですから、敢えて大袈裟な演技をしている可能性もあると思うんですが。」

 「・・・まずい!西九条悦子がナイフを取り出した!」

 「え?」

 「取り出したナイフを阿室さんの喉元に突き付けている。これは、我々が乗り込む必要があるな。神結刑事、手錠は用意してあるか。」

 「もちろん。」

 「ならば、乗り込むだけだッ!」

 僕は阿室麗子の仕事場のドアを開く。

 西九条悦子が阿室麗子の喉元にナイフを突き付けている様子を確かに確認した。


 ――そして、僕は西九条悦子の後ろに回り込んで、そのまま取り押さえた。

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