第6話 《6》悪役令嬢は思い知る
知らせを聞いた私が慌てて客間の扉を開けた瞬間、“やっぱり私は悪役令嬢なんだ”と改めて思い知らされてしまった気がした。
煌めく金色の髪はウェーブしていて振り向きざまにふわりと広がるその姿はまさにゲームのパッケージから抜け出してきたような美しさそのままだったのだ。
深緑の瞳をぱっちりと大きく開いたその人物はたくさんの男性を魅了した笑顔を私に向けた。
「……なんで、あなたがここに…………」
「あら、そんなに驚いた顔をしなくてもいいじゃないですか。ご挨拶にきただけですのに……まだわたしの事を虐めたりないんですか?エメリアさんたら、本当に酷い人ですね」
大きな瞳をうるうると潤ませ、頬に手を添えたまま小首を傾げるその姿はまだ前世の記憶を思い出す以前によく見た光景だった。
レティシャ・ゾゾロフ男爵令嬢。彼女こそこの
「あなた、王子との婚約を辞めて田舎に引っ込んだのではなかったの?」
「あら、だって仕方がないじゃないですか。王様になれない王子様なんてなんの魅力もないもの。それに、そうなったのも全部エメリアさんのせいなんだから責任を取ってもらおう思ってここに来たんですよ」
コロコロと表情を変え、今度は天真爛漫な可愛らしい微笑みを浮かべるヒロインだが、どうにもその姿に違和感を感じてしまった。ヒロインとは慈悲深くて思いやりがあって、純真無垢な天使のような女の子……。でも、今目の前にいるのは本当にそんなヒロインなのだろうか?と。
「……私はその王子と婚約破棄した身よ。それに彼が王位継承権を失ったのも彼の自業自得だわ」
「いいえ、エメリアさんのせいよ。でもいいの、許してあげる。わたしは慈悲深くて純真無垢な乙女だから誰にでも優しいのよ。
でも、許してあげる代わりにお願いがあるの……ね?」
そう言ってまたもや可愛らしく小首を傾げたヒロインはニヤリと口の端を歪める。
たとえ醜く歪めたとしても可愛らしいことには変わりないその唇から紡がれたのは、私にとって衝撃的なことだった。
「もう王子はいらないんでぇ、治癒師の能力に目覚めた希少な腹違いのお兄様をもらっていきますね。あ、知らないとは思いますけど実はわたしとそのお兄様は腹違いと言いつつ実は血の繋がりのない関係なんです。だから……ルークはわたしを愛する運命にあるんで、もしもルークの事が気になってるならスッパリ諦めてくださいませんか?だってーーーー悪役令嬢が攻略対象者に愛されるはずないでしょう?」
私の1番恐れていた事が、現実になろうとしていたのだった……。
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