第4話雨も楽しく
遠足を終えて家に帰ってきたぼくは、メイクに質問してみた。
「ねぇ、さっきのエンガーが言っていたことどう思う?」
『あれは間違いないと思う、おそらくパワー・ストームがミライとぼくの前に現れた後、ムナスマンにぼくとミライのことを伝えたんだ。そしてムナスマンが様子を見るために、エンガーをミライのところへ行かせたんだ。』
「だけど、ムナスマンはどうして弟子のエンガーに行かせたの?」
『うーん、そこがわからないな・・・。敵を取りに来られるのがいやだから、先手を打って倒すというのならわかるけど・・・、話しに来ただけのとこを見ると、意味がわからないな。』
「そういえば、ムナスマンに弟子がいるなんて知らなかったよ。」
『ああ、ちなみに弟子は三人いて、さっき会ったエンガーと槍を使うランヤ、そして一番弟子のナイラがいる。』
「三人もいるの!?」
もし会ったときに三人いたらどうしよう、ぼく勝てるかな・・・?
『そう不安になることはない、グッドシナリオがパワーアップすれば、ムナスマンと三人の弟子だって簡単に倒せるよ。』
メイクに言われて、ぼくは自信がわいてきた。
「よし、ムナスマンに会うために早くグッドシナリオを強化させないと・・・」
ぼくはそう思っていたのだが・・・、この時からなかなか上手くいかなくなっていた。
それは、こまっている人が全然見つからないからだ。
学校の中で探しても声をかけてみても、なにもない・・・。いつも通りの学校の様子があるだけだ。
「一体どうしよう・・・、こまっている人がいないと、いいことができないよ。」
『本当にそうかな?』
メイクがふとつぶやいた。
「メイク、どういうこと?」
『いいことはこまっている人を助けるだけではないということさ、自分からみんなをよろこばせることをやってみた方がいいよ。』
「自分からみんなをよろこばせる・・・、なるほど!」
そう考えると、ぼくの中でいろんなアイデアがうかんできたよ!
「まず、空からおかしのあめが・・・、いやチョコとかふらせてみるのもありかも!?それから、昼の放課後になると校庭が遊園地になって、みんなでわいわいと・・・」
ぼくはみんなをよろこばせるアイデアを頭の中でまとめて、グッドシナリオに何を書きこむか決めた。
そして家に帰ると、自分の部屋に置いてあるグッドシナリオにこう書きこんだ。
『明日の昼の放課後、校庭に遊園地が現れる。』
これでみんながよろこぶぞ・・・。
ぼくはムフフと笑った、明日が楽しみだ!
ところが明日になって、空を見てみると雨がふっていた・・・。
「そんな・・・、せっかく遊園地が出現されるのに、こんなお天気じゃ楽しめないよ。」
『残念だったね、ミライ』
ぼくは重い足取りで傘を差しながら、学校に向かった。
そして給食が終わって昼の放課後がやってきた、そろそろグッドシナリオの書きこみが現実になる時間だ。
「はぁ・・・、みんな楽しめないだろうな」
するとみんなが校庭を見て騒ぎ出した。
「なんだあれ?」
「校庭にあんな遊具は無いよ、一体どうしてこんなところに!?」
「すげえ、ジェットコースターもあるぜ!」
そしてみんなは教室を飛び出して、校庭へと向かった。そして教室にはぼくだけが取り残された。
「みんな、とてもおどろいていたなあ・・。でもこれじゃあ、遊べないよね・・。」
ぼくは机に顔をつけた、するとメイクがぼぐを起こした。
「どうしたの、メイク?」
「あれ、見てみろ」
そういってぼくは窓から校庭を見た、すると雨が止んで、みんなが遊園地で楽しく遊んでいたのだ。
「ええーっ!?雨が止んでいる・・・」
「あっ、おーい!ミライもこっちに来て遊ぼうよ!!」
八倉くんたちが手を振りながらぼくを呼んでいる、ぼくは教室を出て外へと出た。
階段を降りる途中でぼくはメイクに質問した。
「ねぇ、メイク。どうして雨が急に止んだの?」
『おそらく、グッドシナリオの力だと思う。君の望みがかなうように、パワー・ストームが雨を降らせなくしたんだ。』
「そうなんだ、すごいねパワー・ストームって!」
そしてぼくは校庭につくと、みんなと一緒に遊びだした。
ジェットコースターにフリーフォールにメリーゴーランド、ぼくたちは学校の校庭ではできないアトラクションを、思いっきり楽しんだ。
「こら、君たち!早く教室へもどりなさい!」
担任の先生がぼくたちに向かって言った。
「うわぁ、先生が来た!」
「早くもどらないと・・・」
「なんだよ、せっかくいいところだったのにさ・・・」
先生の呼びかけで、みんなは今日へともどっていった。
「ざんねんだったね、ミライ。」
「う・・・うん、そうだね。」
ぼくと八倉くんも教室へともどっていった。
でも、遊園地で遊べたことはとても楽しかった。
そして帰りの時間、ぼくは八倉に聞いてみた。
「ねぇ、あの遊園地楽しかったよね?」
「いやぁ、あの時おれも突然現れた遊園地におどろいたよ。しかもふっていた雨もいつの間にか止んでさ、そしたらもう体が自然とウズウして外に飛び出して遊んでいたよ。」
「そっか、八倉くんもとても楽しかったんだね。」
「それにしても、最近いろんなことがこの学校で起きているよな。プチシュークリームがみんなもらえたり、五十メートル走で最高記録が出たり、一体どうなっていると思うミライ?」
急に質問する八倉くんにぼくはとまどった。
「えっ、それは・・・たぶん神様だよ。神様がぼくたちで、遊んでいるんだよ。」
「神様に遊ばれているのか・・・、まあいいことばかりだし、それでも悪くないかな。」
八倉くんはそれ以上聞いてくることはなかった。
そして昼の放課後が終わると、校庭の遊園地はすっかりなくなっていた。
それからぼくは、よりいっそうにどうしたらいいのか考えた。
「うーん・・・、どんなことをしたらいいんだろう・・・?」
『いつになく悩んでいるな、ミライ。』
「メイク・・・、何かみんなが楽しくなれるようなアイデアってないかな?」
『そうだね・・・、授業中に全員のふでばこの中に、あめ玉が入っているとか?』
「うーん、食べ物で楽しくするのは、もういいかな・・・。後、授業中じゃなくて昼の放課後に楽しいことをしたいんだ。」
『なるほどね・・・、それなら体育館でパーティーが開かれるのはどうだろう?』
「体育館でパーティーか・・・、なんのパーティーをしようかな・・・?」
『なんのパーティーをするのか、無理して考えなくてもいいよ。とにかくみんながたのしめればいいんだ。』
メイクの言うとおりだ、とくに理由なんてなくてもいいもんね。
そしてぼくはグッドシナリオに書きこんだ。
「明日、体育館でみんなが楽しくパーティーをする。」
さて、明日はどうなるかな?
ぼくは楽しみにしながら眠りについた。
そして翌日、ぼくが学校に行くとクラスのみんなが何かを話していた。
「あっ、おーいミライ!」
八倉くんに呼ばれて、ぼくは八倉くんのところにやってきた。
「どうしたんだよ、八倉くん?」
「実は、最近学校で起こるなぞのラッキーについて話し合っていたんだ。やっぱり、ミライは神様のしわざだと思うか?」
「えっ・・・、うん!あれは神様だよ!」
「そうか?ぼくは
「けど、妖怪がぼくたちをよろこばせるようなこと、するかな?」
「ほら、座敷わらしというのがいるだろ?ああいうのが、やっているんじゃないか?」
「学校に座敷わらしが出るわけないだろ?ぼくは、あの大きな石のおかげだと思うね。」
「大きな石ってなに?」
「ほら、正門の近くに黒い大きな石があるだろ?」
「ああ、松の木の近くにあるあれのこと?」
その石ならぼくも見たことがある、ぼくのこしの高さまでの大きさがあり、とても重い石だ。
その石には三回なでると幸運が起こるという、この学校でのひそかな言い伝えがある。
「それで、だれかがこの石をなでたんじゃないかって、みんなに聞いているんだけど、ミライはあの石をなでたか?」
「いや、なでてないよ。」
「そっか・・・、じゃあ一体なんだろう?」
みんなはうでを組ながらかんがえこんだ。
「ねぇ、メイク。グッドシナリオのこと、みんなに話してもいいかな?」
「それはだめだ、グッドシナリオはどんなことでも叶えることができる。だから悪いことに利用されないように、いろいろな
そっか・・・、たしかに色んなことができるって、悪いことだってできてしまうことだもんね。
「わかった・・・、秘密にしておくよ。」
そしてぼくは机に座った。
そして午前十一時を過ぎたころ、ぼくは体育の授業で校庭に出ていた時だった。
「ん?なんだこの音?」
体育館の中から、やけにさわがしい音が聞こえてきた。
「なんだか、楽しそうな声が聞こえるよ。」
「なんだ、なんだ?」
ぼくだけじゃなく、他の生徒たちまでもが体育館に集まってきた。
「おい、授業が終わったらのぞきに行こうぜ。」
八倉くんにさそわれたぼくは、八倉くんについていくことにした。
そして授業が終わった直後、ぼくと八倉くんを入れた六人は、こっそり体育館をのぞきに行った。
重い扉を少しだけ開けると、そこには二人の先生を祝う生徒たちがいた。
「あれ!?
「鍋山先生って、確か三組の先生だよな?」
鍋山先生は短い髪型がかわいいと評判の女の先生で、近々結婚するかもしれないというウワサがあった。
「じゃあ、みんな鍋山の結婚祝いをしているんだ。」
「すごいな・・・、クラスでパーティーするなんて。」
「オレも参加したいなぁ・・・」
「いや、他のクラスのパーティーに参加できないし、もう次の授業があるから行こうぜ。」
そしてぼくたちが教室にもどろうとした時、鍋山先生が声をかけてきた。
「ねぇ、あなたたち。のぞいていたの?」
ぼくたちはドキッとなって、あわてだした。
「あの・・・、ぼくたち、なにやっているのか気になって、のぞいていました・・・。」
「ふふふ、あなたたちも参加する?といっても残り十分しかないけど」
「えっ?いいの?」
「うん、他のみんなにはナイショよ。」
鍋山先生は口に人差し指をあてて、笑顔で言った。
そしてぼくたちは口をそろえて言った。
「はい、お願いします!」
そしてぼくたちは鍋山の結婚祝いのパーティーに参加した、十分だけだったけど楽しかったことを、ぼくたちはずっとわすれないだろう・・・。
そして家に帰ってきたぼくだったけど、グッドシナリオはパワーアップしていなかった。
「やっぱり、あんな結果じゃだめだよね。」
『たしかに、パーティーにしては物足りないよな。』
鍋山先生には失礼だけど、あのパーティーにはごちそうはなく、ただみんなで遊んだりプレゼントを渡したりする感じだった。
「はぁ・・・、どうしたらいいんだろう。」
ぼくが考え込んでいると、母さんが入ってきた。
「ミライ、明日雨だからかさを差して行きなさい。」
「はーい」
それだけ言うと母さんは部屋を出ていった。
「明日、雨か・・・。」
ぼくは雨の日がいやだ、だって楽しいことがやりにくい日なんだもん。
『雨か・・・。ミライ、これは何かのアイデアとして使えないか?』
メイクが言った。
「雨か・・・、雨・・・雨・・・!?」
ぼくの頭の中で何かが雷のように光った!
「これだ、これならみんなを楽しませることができる!」
そしてぼくはグッドシナリオに書きこんだ。
『昼の放課後、雨は上がりにじが何本も空に浮かぶ』
空をあざやかに色どるステキなアイデアだ、これならみんなよろこぶぞ・・・!
ぼくはウキウキで明日が待ちきれなくなった。
そして翌日、天気はお母さんの言う通り雨になった。
この日はどこか暗い表情になるぼくも、今回はウキウキの気分だ。
「今日は絶対にみんなよろこぶぞ!」
ぼくはスキップしながら歩きだした。
『おーい、水たまりで足をぬらさないようにね。』
メイクの注意も聞こえないくらいウキウキしていたぼくは、学校に到着した。
授業が続く間も雨はふり続け、ぼくたちは気に止めることなく学校生活を送る。
そして昼の掃除の時間に、雨が止んだ。
そして掃除の時間が終わった、ぼくがまどから空を見ると・・・。
「なにこれ!すごい景色だ!」
そこにはいくつものにじが、まるで空のうえに塗られているように見えた。にじが重なりあうことで、空があざやかに楽しく見える。
「なんだこれ!?」
「こんなにじは初めて見たよ!」
「まるで絵にかいたみたいだ!」
みんなは空に目が釘付けになった。
ぼくたちだけでなく、先生たちも上を見上げている。その目はとてもキラキラしていて、とても楽しそうだ!
やった・・・、みんながぼくの書いたシナリオで楽しんでいる!
「上手くいった・・・、ぼくのシナリオが初めてみんなを楽しくしたんだ!」
『よかったなミライ、これこそみんなで楽しむものだ。』
ミライはうなずいた。
ぼくは空にあるいくつものにじを見て、素晴らしいものを生み出す楽しさを知った。
そして家に帰ってみると、案の定グッドシナリオがパワーアップされていた。
「やったーっ!ページ数が増えてる!」
『ああ、この調子でがんばっていこう!』
「あっ、いいこと考えた!ムフフフ、こんなことをしたら、みんなもっと楽しくなるよね〜。」
そしてぼくは机に置いた紙に、理想の絵をかきした。
「こうして、こうして・・・。お店をだしたいなあ・・・」
『ミライ、いったい何を書いているの?』
「これはね、みんなを楽しませる夏祭りの絵をかいているんだ」
『夏祭り・・・?』
「うん、来月の二十五日に夏祭りがあるんだ。その夏祭りに、みんながおどろいて楽しめる企画をしようと思うんだ。」
『夏祭りか・・・、確かに楽しいイベントをするにはいい機会ですね。』
ぼくが夏祭りにむけて何を書きこむか考えていると、また周りの景色が止まった。
「あれ・・・、メイク、この感じって?」
『ああ、まただれか来たようだね。』
遠足の時にエンガーにあったのと同じだ。
「ねぇ、きみがミライくん?」
そこにいたのはぼくより年上の女の子、髪は水色のツインテールで、鎧を着ていて手にはやりを持っている。
「もしかして、きみがランヤさん・・・?」
「えっ、知ってたの?」
「うん、メイクから聞いた。」
「そっか、師匠が有名人だからね。それはそうとして、グッドシナリオの成長はどう?」
「えっ・・・、今パワーアップしたところだけど?」
「そっか、これじゃあ師匠と君が戦うのも時間の問題か・・・」
『ランヤ、前に現れたエンガーといい、きみたちはどうしてミライの前に現れるの?』
メイクが質問すると、ランヤはこう答えた。
「ああ、パワー・ストームの
「師匠ってムナスマンのことだよね?それじゃあ、ムナスマンに会わせてよ。ぼく、ムナスマンに聞きたいことがたくさんあるんだ!」
ぼくはランヤさんにお願いした。
「それはだめだよ、きみが師匠と出会う日にちはもう決まっているから。それじゃあ、私はいくよ。」
そういってランヤさんが去ろうとした時、最後にこう言った。
「あっ、言いわすれていたけど、いくらグッドシナリオがあるからって、師匠に勝てると思ったら大間違いだよ。せいぜいがんばってね〜」
そしてランヤは去っていき、景色が再び動き出した。
ぼくはメイクにランヤさんが言っていたことを聞いてみた。
「ねぇ、最後にランヤさんが言ったことどう思う・・・?ぼくがグッドシナリオに『ムナスマンに勝つ』って書いたら、ぼくは勝てるよね?」
『うーん、それは難しいかも・・・。』
メイクはむずかしそうな顔をした。
ムナスマン・・・、一体何者なんだろう?
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