砂時計に身を委ね

 砂時計を反転させる。

 砂が一粒一粒、流れ落ちてゆく。

 その様をただ、眺めている。


 私はこの一連の行為について、あまりにも贅沢な時間の使い方であると考えている。


 砂時計は、本来目に見えないはずの時間を具体化したもの。

 それを眺める行為はつまり、時間が流れる様を目で捉えるためだけに時間を使うということになるのだ。


「実に優雅で、この上ない贅沢じゃないか」


 例えば、心地よい春の陽気に包まれながら、ウッドデッキに腰掛けて本を読む。


 例えば、干したての布団の柔らかさを肌で感じながら、昼寝シエスタの微睡みに溶けてゆく。


 それらと同じ要領で、私は砂時計をただただ眺めている。

 とても贅沢な日曜日の午後。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る