風景

遠くの町

 僕の住んでいる町には小高い丘がある。

 てっぺんまで登りきると眼前に大海原が広がる、眺めの良い場所だ。


 しかしながら、景色一面が海というわけではない。

 視界の左側をわずかに占める、湾に面した港町が存在するのだ。


 僕はその港町へ行ったことがない。

 バスに乗って、電車に乗って、もう一度バスに乗る。

 そうしなければ辿り着かないからだ。

 残念ながら、そこまでして足を運ぶ目的は無かった。


 だから、僕にとっては遠くの町。

 近くにあっても、遠い町。


 きっと、僕が大人になっても。

 もっと大人になっても。

 もっともっと大人になっても、遠くの町だ。

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