小さな教会

 町外れのちょっとした森の中に、小さな教会がある。

 木々の合間から見える鮮やかな白色と、瑞々しい暖色の花々が織りなす景観は美しく、最近では写真撮影の人気スポットとなっている。

 教会自体は若干年季が入っているものの、町の人たちが修復しているためとても綺麗だ。


 そもそもこの教会を誰が何のために建てたのかは分からないが、どうやら子ども用に建てられたらしいことはうかがえる。

 大人は屈まないと中に入れないほどの大きさなのだ。


 そしてこの教会は、地域の子どもたちが十歳になったときに式を挙げる場所となっている。


 式を挙げるといっても、必ずしも結婚式を模したものとは限らない。

 友情式、好敵手ライバル式、十年後の未来予想式、夢の宣誓式……それぞれが思い思いの式を挙げるのだ。


 今日もこの町では小さな鐘の音が響いている。

 私たちはきっと、この音色を忘れないだろう。

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