第7話
その後からは、教室では大戸が曽根に見張られていた。大戸が源一郎に何をするのか、何を話すのか、確認しているのだ。また、そうやって目線を送り続ける事で、命令を実行するのを急かしている。だからこそ、大戸は頭をフル回転させている。大戸が殴られずに済んでなおかつ源一郎の本を燃やさずに済む方法はないか。そして5時間目の授業終わり、この状況の抜け道を思いついた。
「た、高橋くん、ちょっとさ、僕にもその本読ませてくれない…? だから、しばらく借りていいかな」
この申し出に、源一郎は目を輝かせた。六〇〇年生きてきて、魔本と長い時間を過ごす中で、魔本に興味を持つ人間はいた。しかし毎回毎回魔本に向けられたのは、レトロで価値のある本なのだろう、とかそういう目線だった。なのでこうしてちゃんと、中身を読もうとしてくれる人間が現れたのは初めてだったのだ。
「よ、よかろう! 我が知識に追随せんとするその心意気に応えてくれようではないか! ただし簡単に内容が理解できると思うなよ、強い心をもって読み込むのだ! まあ貴様に理解できない部分も多いであろう、そのときは解説してやらんでもないぞ!」
源一郎は読んでいた本を閉じ、そのままそれを大戸に渡した。鞄にも何冊も詰め込んでいたので、それを渡した。
「これは、高橋くんがまだ読み終わってないんじゃ…」
「大丈夫だ、その本ならもう439回読んでいる」
6時間目も終わり、大戸が教室から出ると廊下には曽根が立っていた。「じゃあ、早速燃やしに行くか」曽根は話を強引に進めようとした。「いや、あの、その、学校で燃やすと変に問題になるんじゃないかな…、だから家で自分で燃やしておくよ」大戸は家で燃やすつもりなど全く無かった。しかし曽根は、学校で燃やすと問題になるという文言一つでその意見を受け入れた。
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