第6話
彼らは、住宅街の生活道路を歩いていた。人も自転車も車も通るし、道が細い箇所もある。会話に夢中になっていた二人は、後ろからくる自転車に気付かなかった。おばあさんがチリンと甲高いベルを鳴らすと、「コレは失敬した」と源一郎は端によけた。
さらに前には別の男子生徒たちが歩いていた。彼らは4人で道幅いっぱいに広がっている。源一郎と大戸にしたのと同じように、ベルを鳴らした。その一回では何も反応を示さなかったのでもう一度、今度は強く鳴らした。彼らはようやく道を開けた。おばあさんが通り抜けた後、一人が発した。「うるせーんだよ!」源一郎は十七回転生してきて、子供特有のこういう尊大な態度だけは本当に許せなかった。
「おい愚民ども、自分の罪は素直に受け止めた方がいいぞ!」
男子生徒たちは振り返ってこちらを睨んできたのだが、何もしてこなかった。その中には同じクラスの曽根もいた。大戸は「あんまり騒ぎは起こさない方が…」と心配そうに呟いた。
翌日のことだった。源一郎が学級委員長として職員室に呼び出されている間、大戸の元に曽根が声をかけてきた。「ちょっといいか?」とトイレに連れられた。そこには源一郎に愚民呼ばわりされた他の3人も揃っていた。「お前って、高橋と仲良いよな」「うん、最近仲良くなったかも」と大戸は答えた。すると曽根は、壁に寄り掛かりながら目線だけ向けてきた。「高橋源一郎ってさ、普段何してんの?」
「えっと、何してるっていうのは…」
大戸は問いの意図を汲み取れなかった。
「だから、休み時間とか休みの日に何をしてるかってこと」
「ああ、それなら…本を読んだりしてるかな」
「そうか。その本はけっこう大事そうにしてるか?」
「まぁ、うん」
ここまでの会話を聞いて、トイレの一番奥にいた早川は冷たく言葉を発した。「じゃあ、その本燃やしてくれない?」大戸は当然、「なんでそんなことをしなくちゃならないんだ」言い返した。早川曰く、彼ら4人とも高橋のやる事なす事が気に入らないらしい。だから、嫌な想いをさせたいのだ。大戸は断ろうとしたのだが、刃向かおうとする表情を見せた瞬間、早川は個室トイレの壁を蹴って、大きな音をならした。威厳も屈強さも持ち合わせていない大戸は、彼らの指示に従うしかなくなってしまった。
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