第5話
源一郎は休み時間、基本的に読書をしている。それは小説でも参考書でもなく、神話や呪術、魔術等の所謂『魔本』。十七回の転生の転生の中で手にしたコレクションだ。それらは術の使い方が書かれており、再現できれば新たな術を体得する。基本的には魔界で作られた書物が何らかの理由で地上に現れたり、地上にやってきた魔界の住民が書き残した物もある。ごく稀に、人間がゼロから作り上げた場合もある。
「ねぇ、高橋くんっていつも何読んでるの?」
大戸隆太は数少ない、その書物に興味を示す男子生徒。「これは魔本だ」と短く答えると「何が書かれているの?」「我の知らない魔法だ」「へぇー」大戸の心の中は、聞きたい事で溢れかえっていた。しかし何を聞こうかと迷い、結果的に言葉に詰まる。
「…貴様は何故我が魔本に興味がある」
六〇〇年の中で魔本を狙ってきた輩と何度か戦ってきた。今回もそれなのではと源一郎は警戒を強めた。「僕、小説家になりたくて、そういうのを沢山勉強してるんだ。だから高橋くんと話が合うかな〜って…」大戸があまりに純朴な目をしていたので、源一郎は当然警戒を止めた。
「なるほど。ならば貴様に、魔術の手解きをしてやろう」
源一郎はその日初めて、クラスメイトと一緒に下校した。彼は初めて、学校から駅までの道のりを誰かと歩く。
「へぇ〜、錬金術って人間が作ったんだ」
「そうだ。人間の術は幾つかあるが、錬金術はその中でも最高傑作と言えよう」
こうやって魔術に興味を持ってくれた人間に会うのも久々だった。加えて自身の得意分野と来れば、語りすぎるのも無理は無い。それでも大戸は、その全ての内容を熱心に耳を傾けた。「しかし人間の語る魔術や神話には実際と差がありすぎる。我が知っている内容と違いすぎる」「やっぱり伝承の中で話の内容は変化しちゃうんだよ」大戸は単に『同じ物語でも書物によって違いがある』ぐらいの意味合いで捉えていたのだが、源一郎はその神話の出来事を体験者から聞いていた。それでも不思議と、会話は噛み合った。
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