魔王の息子、地上で学校生活

第3話


 それから六〇〇年が経った。ザトスは合計で十七回の転生を行なった。何度か人間以外の生物も試したのだが、頭脳や形状、他にも収集できる情報やコミュニケーション能力等総合的に考えて、転生するなら人間が最適だと分かった。現在十三回目の十六歳、日本にある公立の高校に通っていた。2年D組の4時間目、数学の授業。


「はい、じゃあこの積分分かるやついるか〜」


 黒板に書かれた白い式は、中々の難問だった。先生が皆に声をかけるとクラスの男女33人は目線を伏せた。そんな中鉛筆をガリガリと走らせる生徒が一人。


「さすがにこの問題やるのはちょっと早かったかな? じゃあ、解説に」

「ハイ! 解けたぞ我が数学の師よ!」


 廊下側の席の前から4番目にて、鋭く、真っ直ぐ、一人の男子生徒が挙手した。彼の名は高橋源一郎、別名ザトス。


「…師というか、先生な。何回も言ってるけど」

「∮ sin3x/cosx dx = ∮ 3sinx-4sin^3x/cosx dx = ∮ 3sinx-4sinx(1-cos^2x)/cosx dx = ∮ (-sinx/cosx+2sinsx)dx = log|cosx|-cos2x+C だ!」

「正解。やるな高橋」


 難問を解いてみせた高橋源一郎に、クラスの皆から拍手が贈られた。「やっぱすごいね高橋くん」「後で解き方教わろう」「なんで簡単に解けるんだ」全員が彼を心の中で称えていた。


「フハハハハ! これしきの術式で我を止められると思うな!」

「術式というか数式な」

「我が魔力をみくびってもらっては困るぞ、数学の師杉村よ!」

「魔力で解いたの? 学力じゃなくて?」


 拍手し賞賛すると同時に、クラスの皆は思っていた。「こいつスゴい頭良いのに、なんでこんなに厨二病なんだろう…」誰も知らない、彼の中身が魔王クラフの息子ザトスなのだと。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る