第2話


 ザトスが地上に移り住むために、準備を始めた。地上で地上以外の生物が長期間生きるには、条件を満たす必要がある。それは、地上の生物そのものになること。彼は転生する必要があった。「このニンゲンという生き物になるのが最適だな」そう考えた彼は、これから誕生する生命に乗り移り、そして転生を成功させ、魔界から地上に旅立った。つまり彼はひとまず、知識や魔力はそのままで、普通の赤子になったのだ。ザトスはとある家庭の一室で、「さあ、地上を恐怖に陥れ、支配し、必ずや偉大なる父クラフの期待に応えてみせよう」と大声で叫んだ。母親の柔らかい胸の中で、逞しい父親に見守られながら。


「うん、源丸は元気な子だ!」

「そうね、きっと源丸は強くて優しい子になってくれるわ」


 二人には、源丸がおぎゃあおぎゃあと泣いたようにしか聞こえなかった。ザトスは気が付いた。「人間の赤子とは、なんと脆い生物なのだ。ここはひとまず肉体が成長するまで待つしかあるまい! 待っていろ地上の者ども。必ずや我が魔力で、一日でも早く征服してくれよう!」

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