8. 三人パーティ
日没までもう少し時間があったのでソテレーティア、通称ソティの家に一度挨拶に行くことになった。
家は町のはずれの方にあった。両親は農業と川で漁業をして生活している。双子の弟がいて、引退した父親のご両親とも同居している。
ソティはゴールデンレトリーバーみたいな色で肩までの髪の毛に犬耳、色白で、目が緑色をしている。身長はピーテとほぼ同じ、おっぱいが割と大きい。しかし手足は細くてちょっと頼りない感じだ。
両手剣使いでロングソードを装備している。まだ戦闘は見ていないが、よく剣に振り回されずに戦えるものだ。槍も少し教わったそうだ。
一家はあまり裕福ではなく、ソティはお嫁さんに出すか冒険者として稼いでもらうくらいしか選択肢がなく、特に反対などはされなかった。無口な父親はただ一言こう言っただけだった。
「大切にしてやってください」
いつ死ぬか分からない冒険者家業である。父親も元冒険者としてよく分かっているのだろう。俺ではまだ守ってやるだけの力がないかもしれないが、精いっぱい努力はしようと思った。
俺とピーテは引き続きプレレ商人の家にお世話になっている。プレレ家でご飯も頂いているが代わりに毎日料金を払うことで落ち着いた。プレレは明日には町を出発するそうだ。
ソティとは毎日冒険者ギルドで待ち合わせることにした。
本来安全重視なら、六人ぐらいがパーティーとして一番いいと思うのだが、ソティの話から増員は難しそうだ。とりあえず三人で頑張るしかない。
翌日、さっそく三人で草原に繰り出す。まずは連携の訓練だ。
アイアンマイマイが一匹でいたので、さっそく練習相手になってもらう。囲ってボコる。ただそれだけ。
ソティのロングソードはリーチが長いだけあって、攻防ともに安心感がある。俺よりは剣に慣れている感じの動きだった。
今日は大カマキリの二匹とも戦闘になる。
俺とソティが前衛でピーテが遊撃というフォーメーションだ。ソティは前に行きたがる性格らしい。
ソティは剣の長さでもって敵を寄せ付けない。
俺はカマキリの鎌と剣をぶつけ合い、攻撃をしのぐ。しかし相手は二刀流だ。今度は逆の盾で右手の鎌の攻撃を受ける。
しかし俺もそうだがカマキリも横ががら空きだ。ピーテがカマキリの胸と首の間を一撃で切り離した。
二人より圧倒的に良さそうな感じだ。一人がフリーなので、横から攻撃ができる。ピーテは素早いので、俺たちの陰から敵の懐に飛び込み攻撃するのがうまい。
三人ともぼろい中古の革の防具である。なに、当たらなければ、どうということはないのである。嘘です。俺はたまに敵が突っ込んでくるので、もう少し防御力の高い防具が欲しい。あと盾もバックラー系の小さめの鉄の盾が欲しい。
俺にも俺Tueeee系の主人公みたいに魔法が使えるようになったら、戦闘スタイルも変わるかもしれないけど、今は剣と盾しかないので。
その辺のことをコミュ力の低い俺がオブラートに包んで交渉したところ、盾は王都で、防具は余裕があったらこの町で買うことになった。防具は三人分である。
良い防具はこの町では売っていない。王都まで行かなければない。だから王都で買った方が効率的だが、王都へ行く道中にも不安がある。そして、失敗すれば死あるのみ。安全第一なので、この町で買うのだ。
ついでに分かったことがある。草原にあったでっかい石をピーテに収納してもらおうとしたのだが、できなかった。どうやら何か制限があるようだ。無限収納かと思っていたが違うようだ。
夕方になる前に余裕を見て冒険者ギルドに戻る。この日の分を換金して、肉屋に行ってまた戻ってくる。この町はそれほど大きくないので、武器・防具屋が独立していなくて、冒険者ギルドが代わりに販売・買い取りしている。
カマキリ二匹の魔力結晶が七級で銀貨十六枚になって思ったより金になった。
防具ついでに武器のラインナップを見せてもらったが、やはり種類は多くなかった。
中古の半分革で胸当てなど急所が鉄でできているライトプレートが三人分なんとかサイズが合うのがあったので、それを銀貨二十枚で購入できた。銀貨一枚おまけしてもらった。カマキリ以外の収入も合わせれば、ぎりぎり黒字になった。
俺も目立つし、ソティはよく来ていたので覚えられていた。
なお、ピーテとソティは身長が同じだが胸が違うので、同じ防具を使いまわせないようだ。
ホクト 鉄のショートソード 木の盾 ライトプレート 異世界のシューズ
ピーテ 謎の短剣 ライトプレート 革の靴
ソティ 鉄のロングソード ライトプレート 革の靴
頭装備は今のところない。頭も急所なので何かつけたほうがいいのだろう。ケモ耳はどう収容したらいいのだろうか。耳だけ出てたら切れてしまいそうだ。かといって鉄で覆ったら聴力・索敵能力が下がりそうだ。
次の三日間は、草原で三人で訓練を兼ねた魔物狩りで現金収入を増やしていた。カマキリ、カタツムリ、バッタ、さらに巨大陸ガニなどを狩った。
ほとんどケガはしなかったが、一度カマキリに、浅い切り傷をもらった。低級ポーションで全回復できる程度のダメージだったので助かった。
カニはハサミが頑丈で力も強く、動きも縦横どっちにも素早く歩く。なかなかの難敵だった。カニの足を折った後二人がかりでひっくり返し、口から腹のあたりを剣で刺してやっと倒した。一匹持って帰って食べたが普通にカニで、塩茹でしたら甘くてとても美味しかった。
「カニうまいにゃ。カニ、カッニッ、カニカニカニ」
ソティは大喜びで変な歌を歌っている。俺が両手のピースでカニのポーズをしてやるとソティも真似した。カニは冒険者がやっつければ肉屋で買えるが値段が高い。ソティ家では食べたことなかったようだ。
「ホクト、あたしカニ大好きになったにゃ。でもポテチも食べたいにゃ」
「ピーテから聞いたの?」
「聞いたにゃ。他にも色々な料理があるって聞いたにゃ」
いつの間にそんな話してたんだ。料理の時間あたりか。
さらに一日草原で魔物狩りを終えてプレレ家に帰ってくると、商人ギルドから連絡が来て、ギルドに来てほしいと言ったそうだ。
俺たちは三人で商人ギルドに入る。ギルドの係員と一人の犬耳の女性しかいなかった。女性は俺たちのほうへ近づいてきて奥へ通される。女性は旅商人のギーナと名乗った。
「依頼通りのようですね。確かに黒髪の人族とそのお友達ですね。人族は珍しいです。黒髪はもっと珍しいです」
「はあ」
「うちのお嬢様が、王都までの話し相手を探しております。異国のあなたならたくさんお話を聞けそうです」
「俺はあまり話し上手ではないんだが、いいかい?」
「結構です」
「乗せてくれるほかの条件は?」
「旅の間の旅費、食事など全部こちら持ちで結構です。護衛は別に連れています。条件は、お嬢様に手を出さないことぐらいです。あと内密にお願いします」
「それは、もちろんだ」
なにやら、訳ありっぽそうな感じである。本当に暇なお嬢様なのかもしれないが。その後、行程の確認などいくつか言葉を交わしてから商人ギルドを出た。
王都はこの町の川を下った先にあり、王宮にはもちろん国立学院さらに国内唯一の迷宮がある。王は迷宮がある場所を王都に選んだのだ。それはもちろん、迷宮産の資源を守るためであり、冒険者も集まるので人口も多くなりちょうどいい。
俺たちは王都に行ったら迷宮にもぐりさらに強くなる。迷宮にはその辺の草原より強い魔物、すなわち高い魔力結晶を持つ魔物がたくさんいる。そいつらを倒して
そうして資金を得て名声を上げたら、学院や王宮に顔が利くようになるかもしれない。
明日の朝、商人ギルド前に集合予定だ。
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