第2話

夕美ちゃんはずっと石橋君が好きで、仲も良かったので、誰もが二人は付き合うんだと思っていた。

でも、石橋君は他の色んな女の子と付き合っては別れてを繰り返していた。

私はいつも夕美ちゃんの後ろに隠れて、ただ石橋君を見ているだけで幸せだった。

席替えで石橋君の隣から田川君の隣になると

「へぇ〜、石塚って本当に字が綺麗なんだな」

と呟かれた。

「え?」

驚いて田川君を見ると、私のノートを覗き込んでいる。

「あ、ごめん。健太がいつも、石塚さんの字が綺麗なんだって話していたから……つい」

そう言って苦笑いした。

「そう……かな?」

首を傾げると

「うん、綺麗な字だと思うよ」

と言って笑う田川君に照れていると、鋭い視線を感じた。

視線の元を見ると、田川君の彼女である及川さんが私を睨んでいる。

(怖い、怖い!)

私は怯えながら、そっと席を離した。

放課後、夕美ちゃんとバスケ部の練習に行こうと体育館に向かっていると

「石塚さん、ちょっと良い?」

って、及川さんに呼び出される。

なんだろう?って思っていると

「人の彼氏にちょっかい出すの、止めてくれない?」

って言われた。

「ちょっかい?」

首を傾げると

「あなたが毎日、放課後にバスケ部に通ってるの、聡が好きだからでしょう!」

と言われて、思わず目が点になった。

「はぁ?」

驚いていると

「誤魔化さないで!」

って怒鳴られて、ビクリと身体を震わせる。

「誤魔化すも何も……私、田川君の事をなんとも思ってないよ」

と答えると

「え?」

驚いた顔をされてしまう。

「それに田川君、及川さんみたいに小さくて可愛い人が好きなタイプじゃない?私なんて、論外よ論外」

って笑って答えると

「じゃあ、誰が……」

と言いかけた及川さん。

「まさか……小野?」

「違う!」

反射的に言ってしまい

「え?もしかして、石橋?マジ?ありえないんやだけど」

って笑われてしまう。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る