蚕の恋
青空
第1話
男の子は苦手だ。
ガサツで意地悪で乱暴で……。
私は物心着いた頃から、体格が良かった。
身長も大きくて、背の順で並ぶと必ず後ろ。
体格が良くて背が高いから、男子から『ぬりかべ』ってあだ名をつけられていた。
だからいつも俯いていて、猫背にしながら小さな女の子に憧れていた。
でも、小学生になっても中学生になっても、私の身長は止まること無く伸び続けた。
中学生になると、女の子は好きな人の話題で盛り上がっていた。
私にとって、男の子は苦手な存在だから好きな人とか良く分からなかった。
出会いは中学2年生の春だった。
「へぇ〜、石塚さんって字が綺麗なんだね」
って、ノートを書いていたら言われた。
「えっ!」
驚く私に、隣の席になった石橋君が微笑んだ。
「字はだろう?」
他の男子が揶揄って笑うと
「え?顔も可愛いよ。俺、石塚さんの顔好きだよ」
と答えた石橋君に、他の男子が爆笑する。
「石橋!お前、女なら誰でも良いんだろう?」
ゲラゲラ笑う男子達に
「お前等、本当に馬鹿だな」
って、逆に石橋君が他の男子を笑っている姿に憧れた。
人の意見に流されない強さに、凄いな〜って思った。そんな石橋君を好きになったのは、球技大会の時だった。
バスケ部だった小野君と田川君、石橋君がバスケは除外になって、バレーに参加となった。
私は友達の夕美ちゃんに付き合って、バレーを見に行くことになった。
バスケ部の3人が凄くて、どんどん点差を付けていく。
普段はのんびりしている田川君が、運動となるとキビキビしているのに驚く。
その時
「聡!」
って石橋君が手を上げて叫んだ。
田川君がトスを上げると、物凄いジャンプでアタックを決めた。
その時の石橋君のジャンプは、まるで美しい鳥のようだった。
背中に真っ白な羽根を生やした、美しい鳥。
私はその瞬間、恋に堕ちた。
でも、いつも女の子に囲まれている石橋君が、私なんか相手にしないだろうと最初から諦めていた。
ただ、見ているだけで幸せだった。
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