第2話「魔力」
「ぐすん、ぐすん」
「ハヤト、また虐められたのかい」
幼いハヤトの頭を撫でるのは白髪で白髭を生やした穏やかそうな老人。
(またこの夢か)
もう何度同じ夢を見たかも分からない。
場所は大きな木製の風情の感じられる家の中。叔父の家だ。ハヤトはこの家で母と叔父の3人で暮らしていた。
幼い頃に交通事故で父を亡くしたハヤトの母は生活のために働いている。
育児のできない母に代わり、叔父はハヤトの面倒を見ていた。
数年前に妻を亡くした寂しさからか叔父は愛息子のようにハヤトを可愛がっていた。
「お前がわしのことを信じてくれるのは嬉しい、けどのう」
「何でだよ! 爺ちゃんは嘘なんてついてないのに!」
優しく諭すような叔父に語気を荒げるハヤト。
「あいつらは爺ちゃんのことを馬鹿にしたんだ! お前の爺ちゃんは老いて頭がおかしくなったんだって!」
そう叫んでハヤトは家を飛び出した。
「これ、待たんかハヤト!」
(いくな俺。行っちゃダメだ)
夢の中で幼い自分に言う。
ハヤトが家出した後、叔父は亡くなった。
元々体調が悪かったからだと医者は言っていた。
けれど、その原因が他にあることを叔父は知っていた。
「わしは一度、異世界に行った。その時に体が世界に適用するために作り替えられてしまったんじゃ」
心臓あたりを抑えながら叔父はそう言っていた。
「もうすぐ、わしの体の中にある魔力は底を尽きる」
「魔力がなくなったらどうなるの?」
「お別れじゃよ」
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目を覚ますと心臓の痛みは引いていた。
しかし、自分の体に違和感を感じる。
痛みを感じていた心臓にぽかぽかと温かい何かが溜まっているような感覚。
それに、
「この感じ……」
昔爺ちゃんが言っていた空中に水が流れているような気配。
これは……まさか。
いや、間違いない。確信めいたものがハヤトの中にあった。
「魔力だ」
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