変なのが追ってくる(黒田視点)

 これは人間に擬態することに疲れたのお話。


 『オレ』はだ。とはいえ、生きる為に人間へ擬態して生活している。


 人間界と呼ばれるこの世界には、が多くいて、互いに牽制したり、協力したりとそれなりの生活を送っている


 擬態した姿では、優等生を装っていて、頭は良くも、顔は平々凡々。

 容姿端麗かつ頭が良いと妬まれるのは。⋯と言いつつ、親を真似たに過ぎないのは秘密だったりする。


 擬態時の一人称は『僕』にしたのは特に意味は無い。平々凡々な顔立ちにしたから、『オレ』より『僕』の方がしっくりする気がしただけ。



 ある日、学校の図書室から黒魔術の気配を感じ興味本位で姿を隠して野次馬に行ったことにより、オレは新しい玩具ともだちを手に入れた。


「これで俺は最強だ!フハハ」


 と、いかにも雑魚キャラが言いそうなセリフを嬉しそうに言うその姿に、人の悪そうな(人ではないが)笑みが浮かぶ。


(成功させたら危ないし、暇潰しにちょうどいいか)


 黒い靄を出している本に、軽く触れ靄を消しつつどうやって近付くかを考える。


(は簡単そうだ)


 スッと手を伸ばし、少し意識を飛ばさせ、黒い布で顔を隠して大鎌を見せれば完璧だった。


「え、は?な、え⋯?」


 状況が読めずにアホ面を晒しているクラスのムードメーカー・加々美。数秒で現状にハッと気付き、図書室から逃げ出す。


「追いかけっこは好きじゃないんだけどなぁ」


 どんな動きをするか読めなくて、新しい遊びに無意識に声が弾む。


「やべぇ、に狙われてる!」


 教室に向かう途中、友達に助けを求めるも、加々美にだけ認識出来るようにしているからオレは誰にも気付かれない。


「お前が厨二病拗らせてるんだろ?とかでしたんじゃねーの」


「マジか!俺、でかした?!ってんなわけあるかー!」


 立ち止まって叫ぶ加々美に、その場に今来たかの様な素振りで気配を戻す。


「あれ、黒田こいつに用事?」


「は?黒田⋯?」


 死神姿ではなく、真面目に服を着せたクラス委員長・黒田に早替わりすれば、腑に落ちないのか眉間に皺を寄せる。


「委員会あるって言っただろ」


「いや、聞いてなヒッ!」


 10歩くらいの距離を意識的に詰れば、小さく上がる悲鳴。


「お前、僕を召喚したならちゃんと責任とってよ」


 加々美にだけ聞こえる言葉。


「え」


 動揺の隠しきれない声に楽しみが増えた事実にほくそ笑む。


「ちなみに僕は死神だよ☆」


「え、やっぱり俺殺されちゃう系?」


 怯えをはらむ言葉。


「死にたくないし、召喚してねーよ」


 からの少し頭の悪そうな発言。


「覚えてないなら、後でじっくり説明するよ」


 黒魔術で人間をとする悪趣味な奴の本を、噂で踊らされて触れただけであろう加々美に、黒田は暇潰しの玩具ともだちにその事実を教える気などあるわけなかった。


おわり

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自称〇〇とかウケる 蝶 季那琥 @cyo_k

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