第6話「永遠に愛を誓う」最終話・ざまぁ
「ちょっと、待ってください!
何もそこまでして責任を取らなくてもいいですから!
それに、婚約解消した傷物の私なんか選ばなくても、眉目秀麗な公爵令息であるあなたならお相手など沢山……」
「メアリーでなければ嫌だ!
君とじゃないと結婚しない!」
「なぜそこまで私に……」
彼なら結婚相手に困らないと思うのですが……。
「本当の事を言うと……女の子として学園に通うのなんか嫌だったんだ。
回復魔法や医療が発達したのに、過去に男子が短命だったというだけで、迷信じみた仕来りに従うなんて馬鹿らしいと思ってた。
だけど家の方針には逆らえなくて……」
彼も好きで女装をしていた訳ではやいのね。
「嫌嫌学園に通っていたとき、君に会ったんだ。
女子生徒に馴染めないオレに、君は笑顔で話しかけてくれた。
裁縫やお菓子作りを教えてくれた。
本当は学園に入学する前に裁縫や料理を一通り習うはずだったんだけど、オレがギリギリまで女装して入学することに反対してたから、何も覚えてなくて……だから君が教えてくれて凄く助かった」
入学したての頃、ヴィルデが裁縫や料理が下手だったのには、そんな理由があったのですね。
「オレがお弁当を忘れた時は、サンドイッチを分けてくれた。
転んで手を怪我をした時は、保健室まで連れて行って治療してくれた。
ペットのインコが死んだ時は一緒に泣いてくれた。
君には些細なことだったかもしれないけど、その全部が嬉しかったんだ」
彼の紫水晶の瞳に真っ直ぐに見つめられ、私の心臓はずっとドキドキしていました。
彼が嘘をついているようには思えません。
「だからオレと結婚してください」
「あの……私にとってあなたは、つい二時間前まで親友のヴィルデで、女の子でした……」
私の言葉を聞いて、彼は悲しげな表情をした。
お願いだからそんな泣きそうな顔をしないでください。
「だから恋とかよく……わかりません。
でも……もし、婚約解消したあと次の相手が見つからなくて、
一生独り身で過ごさなくてはならなくなって、
そんな時女の子の友達をひとり選んで一緒にいていいよって言われたら……私は迷わずヴィルデを選びます」
「それって……!」
彼は瞳を輝かせました。
「今はあなたの事を親友としてしか見れません。
それでも良ければ一緒にいていただけますか?」
「うん、いいよ!
親友からでも大歓迎だよ!!」
彼は立ち上がると、私を抱きしめてその場でくるくると回りました。
「待ってください!
私、こういう事に免疫がなくて……!」
元婚約者のベン様には、ずっと蔑ろにされてきたので、男性に抱きしめられた経験なんてないのです。
「なら、慣れて。
いっぱいスキンシップして、君に異性として意識して貰う予定だから」
私を抱きしめたまま、ウィルフリード様はそう言って破顔しました。
彼にはこれから、沢山振り回されてしまいそうです。
一年後。
彼に毎日「好き」「愛してる」「君しかいらない」「永遠に一緒にいたい」と囁かれ、ハグされたり、頬や額にキスされたりしている間に私は彼に恋していました。
というか、こんな美青年に一途に愛されて好きにならないとか無理です!
「愛してるよメアリー。
永遠に君だけを見てるよ」
「ありがとう。
私もウィルフリードが大好きよ」
私達は初めて口づけを交わしました。
◇◇◇◇◇
追伸。
アリッサ様が隣国に嫁いだ一年後。
アリッサ様の夫になった公爵令息は、無理なダイエットがたたりリバウンドしたそうです。
前より体重が増えて百キロの大台を超えたようです。
隣国の食べ物はこってりしたものばかりで、アリッサ様も三年後には旦那様のようにふくよかな体系になったそうです。
そこにはかつて「女神」とか「学園の三大美女」と呼ばれた、アリッサ様の面影はないそうです。
それからベン様は卒業と同時に侯爵家から勘当され、遠くの町に連れて行かれ強制労働させられたそうです。
三年後、ベン様はなんとか強制労働所から逃げ出し、アリッサ様を追って単身隣国に渡ったようです。
再会したアリッサ様はぷくぷくに太っていて……ベン様はショックを受けて倒れたそうです。
――終わり――
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「幼馴染を敬愛する婚約者様、そんなに幼馴染を優先したいならお好きにどうぞ。ただし私との婚約を解消してからにして下さいね」完結 まほりろ @tukumosawa
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