第5話「そうですか、それで?」
――誕生日の二日後、学園――
お昼休み、学園の裏庭でヴィルデとはしゃいでいた。
「ヴィルデ、ありがとう!
ヴィルデが証言してくれたお陰でベン様と婚約解消できたわ!」
「いいのよ!
だって親友じゃない!」
「父もトーマ侯爵も私の言葉は信じないのに、ヴィルデの言葉はあっさり信じるんだもの」
「ランゲ公爵家の名前が役に立ったわね。
わたしの公爵令嬢としての身分がメアリーの手助けになるならいくらでも利用して」
そのとき……。
「メアリー・ブラウン!
貴様よくもやってくれたな!!」
鬼の形相をしたベン様が早足でこちらに近づいてきた。
「メアリー!
お前のせいで俺は破滅だ!!」
ベン様は私の目の前に立ち、キッと私を睨め付けた。
「おととい家に帰ったら、父に殴られて侯爵家の後継者から外された!
父は弟を跡継ぎにすると言っている!
昨日は一日自室に監禁され、今日になってやっと出してもらえたと思ったら、父に学園を卒業と同時に勘当すると言われた!」
昨日婚約を解消する場にベン様がいなかったのには、そんな理由があったのですね。
「そうですか、それで?」
「メアリー、おととい俺がお前に言ったことをそっくりそのまま父に伝えたな!」
「ええ、そうですが何か問題がありますか?」
「問題大ありだ!
なんでそんなことをした!」
「ベン様と結婚したくなかったからです」
自分より幼馴染を優先する男と結婚したがる人はいません。
「メアリー、全部お前が悪い!
俺が侯爵家の跡取りから外され、学園を卒業と同時に勘当されるのは全部お前のせいだ!
お前が俺との婚約を解消したいなんて言い出すから!」
「私との婚約を解消すれば、ベン様は好きなだけアリッサ様の側にいられますよ」
アリッサ様にも婚約者がいるので節度のある距離を保たなければなりませんが。
「アリッサに事実を話したらこう言われたよ!
『他人の婚約者を弄ぶのが面白かったのよね。
ベンったらわたくしが呼び出すとどこへでもやってくるんですもの。
婚約者より優先されて気分が良かったわ。
でも婚約を解消され貴族でもなくなるあなたに、なんの魅力も感じないわ。
婚約者のヨハン様がデブで不細工だから、見目の良いあなたを隣国に連れて行って目の保養にしようと思っていたの。
でもヨハン様は私の為に三十キロもダイエットしてくれたのよ。
痩せたヨハン様はベンの百倍はかっこいいの。
だからもうあなたは必要ないわ。
平民になった幼馴染がいるなんて他人に知られたくないの。かっこ悪いから二度と会いに来ないで!』
とな!」
「婚約解消は私のせいですが、ベン様が跡継ぎから外されたのも、卒業と同時に勘当されるのも自業自得ですよね?」
「くっ、そうだが……!」
「それから、アリッサ様の婚約者がダイエットに成功してハンサムになったのは私のせいではありませんよね?」
なんでも私のせいにしないでください。
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