第3話「メアリー誕生日おめでとう」





「メアリー、誕生日おめでとう」


教室に戻ると、隣の席のヴィルデがお祝いの言葉を言ってくれた。


ヴィルデは銀色のさらさらヘアに、藤色の瞳の公爵令嬢だ。


ちょっと背が高いけど、とても美しい顔立ちで学園の三大美女の一人に数えられている。


「ヴィルデ、私の誕生日を覚えてていてくれたの?」


「もちろんよ、メアリーは私の親友だもの。

 はい、これプレゼント」


桃色のリボンのついた小さな箱を手渡された。


「ありがとうヴィルデ、開けてもいい?」


「ええ、もちろん」


ピンクのリボンをほどき箱を開ける。


中にはアメジストのブレスレットが入っていた。


「素敵ね!」


「今日の朝までに完成させたかったんだけど間に合わなくて……。

 お祝いを言うのが遅くなってごめんね」


そういえば午前中、ヴィルデは学校に来ていなかった。


「もしかしてこのブレスレット、ヴィルデの手作り?」


「うん、不格好でごめんね」


「そんなことないよ、素晴らしい出来だわ!

 いいの? こんな高そうなもの貰ってしまって」


「いいのよ、メアリーは親友だもん」


そう言ったヴィルデの手には、琥珀のブレスレットが光っていた。


私が受け取ったアメジストのブレスレットとデザインが似ている。


「わたしも琥珀を使ってブレスレットを作ったの」


ヴィルデはそう言ってニッコリとほほ笑んだ。


親友とお揃いのブレスレット! テンションが上がるわ!


ベン様のせいで最悪の誕生日になるかと思ったけど、いいこともあるのね。


「でも琥珀ってアメジストや他の宝石に比べて地味じゃない?」


「私は琥珀の落ち着いた色味が好きよ。

 メアリーの瞳の色と同じでとても綺麗だもの」


ヴィルデが私の目を真っ直ぐに見つめる。


そんなこと真顔で言われると照れてしまう。


「ヴィルデありがとう。

 ヴィルデのおかげで幸せな誕生日になりそうだわ」


「そう言って貰えると嬉しいわ」


親友の優しさが胸に染みる。


「ところでベン様からは何を貰ったの?

 わたしがいないときにベン様が教室を訪ねて来て、メアリーを連れて行ったそうね……」


私とヴィルデはAクラス、ベン様とアリッサ様はCクラス。


クラスは成績順に分かれていて、Aが一番良くてFが一番悪い。


Dクラス以下は平民のクラスなので、あの二人はあまり頭がよろしくない。


「それがね……」


私はお昼休みにベン様に言われたことを包み隠さずヴィルデに話した。


「一言で言うとベン様はクズね!」


ヴィルデが鬼の形相でそう吐き捨てた。


「わたしが一発ベン様を殴って、彼の目を覚まさせてやるわ」


「ありがとう、ヴィルデ。

 気持ちだけ受け取っておくね。

 でもね、ベン様が『アリッサ様の方が大切』とはっきり言ってくれたお陰でベン様と婚約解消する決心がついたの。

 悪いことばかりじゃないわ」


「それ、本当!?

 ベン様と婚約解消するの?!」


ヴィルデが私の手を握る。


「あっ、ごめん。

 嬉しくてつい……」


ヴィルデが慌てて手を放す。


「大丈夫よ」


ヴィルデの手は見た目より大きくてゴツゴツしていた。



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