第5話 魔族の子

俺は今、夢を見ている。

それも淫夢だ。

最近、毎日のように見る夢は家庭教師の女の子に誘惑されて理性が崩壊する夢。

その夢の中で俺がどんなことをしていたか思い出すだけで恥ずかしい……

夢はきっとただの妄想に過ぎないはずなのにどうしてあんなにもリアルだったのだろう……

それにしても今日は本当にリアルな夢を見た気がする……

朝起きてすぐそう思った。

夢の中の出来事が妙に頭に焼き付いて離れない。

あの子の甘い声や柔らかかった体の感触が頭から離れないのだ。

今日も家庭教師の仕事があるというのになんて夢をみているんだ……

しかし気になったのは夢の中の相手が思い出せなかった事だ。


罪悪感を感じながらも、仕事のために着替えを始める。

いつも通り支度を整え、家を出る。

いつも通りに教え子の家に向かい、いつも通りに勉強を教える。

しかし、いつもと違うのは今日の彼女はいつも以上に色気を感じるということ。

今日は魔族のエレナの担当の日。

エレナはロングの黒髪でスタイルも良くて服装こそ制服だが、露出が多く、谷間が見えたりしている。

そんな彼女を見るとどうしても昨日のことが脳裏にチラついてしまう。


「せんせ……大丈夫ですか?」


「あぁ、ごめん。少し考え事をしていてね」


「もう……ちゃんとお話を聞いてくれなきゃダメですよ?」


「ごめんね」


「まぁいいですよ。それより先生。この問題解けたらちょっとしたご褒美をくださいよ♪」


「いいけど、何をして欲しいのかな?」


「それは内緒です。でも凄く気持ちよくなれること間違いなしなので期待してくださいね♡」


そういうとエレナは問題を解いて見せる。

すると、突然キスをされた。


「えへへ、ご褒美もらいました♡」


「え!?ちょっ!?」


不意打ちのキスに動揺してしまう。

そんな様子を楽しむかのようにこちらを眺めてくる。

そんなエレナにドキドキしながらも、なんとか平静を保つ。

その後もエレナのスキンシップは続いた。

体を密着させてきたり、手を繋いできたり、頭を撫でて欲しいと言ってきたりと、とにかく距離が近い。

エレナが近寄る度に心臓の鼓動が激しくなる。

これはきっと教師として生徒に興奮してはいけないと思っているからに違いない。

そう自分に言い聞かせて、何とか耐える。


「先生……どうしたんですか?顔赤いですよ?」


「い、いや、なんでもないよ……」


「本当ですか?体調悪いなら無理しないでくださいね」


「ありがとう。心配してくれて嬉しいよ」


「いえ、私は先生の事が大好きですから、先生には元気で居てもらいたいんですよ♡」


好きと言われ、思わずドキッとしてしまった。

この子は普段からこうやって異性を誘惑してくるのだろうか?

俺以外の男にもこういう態度をとっていると思うと、とても不安になる。

この子がもし、誰か他の男性に好意を抱いたらと考えると……嫌だ。

この子を誰にも渡したくない。

この子にもっと触れていたい。

この子を独占してしまいたいという独占欲が湧き上がってくる。


……相手は生徒なのに何を考えているんだろう。


「せーんせ♡またボーッとしちゃってどうしたんですか?」


「あっ……ごめん。少し疲れてるのかも……」


「ふぅ〜ん……そうなんですねぇ〜じゃあそろそろ休憩にしませんか?」


そう言って彼女はお茶を入れてくれた。

そして隣に座って抱きしめてくる。


「うわっ!急に抱きつかないでよ!」


「えへへ、先生の匂い落ち着くんですもん。良い匂い……大好きです」


「まったく……君は……」


「あれれ?先生、もしかして照れてます?可愛いですね」


「……うるさい」


「はいはい。でも先生、私のこと好きですよね?」


そう言われて、言葉に詰まる。

俺はこの子の事が好きなのかもしれない。

今まで意識していなかっただけで、俺はこの子の事が好きになっていたのではないだろうか。

それに、最近は夢の中の彼女と目の前にいるエレナが重なって見えているような気がする。

夢の中で見た彼女は今のエレナよりも大人っぽく見えたが、夢の中でのエレナの方が魅力的だった。

それに夢の中での俺は現実の俺より積極的だった気がする。

夢の中では俺がリードしていたが、現実では俺のほうが主導権を握られている。

夢の中での積極性はどこに行ったのだろう。

ただでさえ年下の女の子に振り回されているのに。


「先生、もしかして私に惚れましたか?」


「そんなわけないよ」


「嘘つき……だってさっきまで私に見とれた目をしていたじゃないですか♡」


「見とれてなんかいないよ」


「本当にそうですかぁ?私が誘惑するといつも胸とかお尻見てますよね?気づいてないとでも思ってるんですか?」


バレていたらしい。

確かに彼女の言う通り、俺は彼女の体をよく見ていた。

彼女の体はすごく綺麗だからついつい視線がいってしまうのだ。


「まあ、仕方ないことかもしれませんけどね。先生、スタイルの良い女性が好みみたいだし」


「べ、別にそんなことは……」


「はいはい。わかりましたよ。先生が認めてくれるまではこれから毎日こうしてアピールしますから覚悟しておいてくださいね♪」


「勘弁してくれ……」


「まぁ、先生が認めるまでずっと続けていくつもりなので、頑張ってくださいね♪それとも先生は私みたいな可愛くておっぱいの大きな子とイチャイチャできて嬉しくないんですか?」


「そりゃ嬉しいけど……でも君はまだ子供じゃないか」


「もう、またそういうこと言う……先生のバカ」


そういうと頬を膨らませて拗ねるエレナ。

やっぱりこの子は可愛いな。


「もういいです。今日はこれくらいにしてあげます」


「え?」


「今日はここまでです。早く帰って寝てください」


「えっと……怒ってるのかな?」


「知りません。とにかく今日は終わりです」


「ごめんね」


「謝らないでくださいよ。先生が悪いんじゃなくて、私のわがままなので」


「でも……」


「あーもー、気にしないでくださいってば。そんなことより、次も来てくれますか?」


「もちろんだよ。ちゃんとお話しようね」


「はい。楽しみにしていますからね♪」


そう言って笑顔を見せてくれた彼女を見てホッとする。

どうやら許してくれたようだ。

その後、帰る準備をして部屋を出る。

帰り際に彼女がハグしてきたのには驚いたが、エレナが満足そうな顔をしていたので良しとすることにした。

帰宅し次の指導の為に資料を整え、家事をし、眠りにつく。


そしてまた、夢を見ていた。

ビギニのような最低限の布面積しかない服を身に纏ったエレナが誘惑してくる。

夢の中の俺は引っ張られるように、身体が勝手に動き出す。

まるで自分の意思とは関係なく、体が動くような感覚だ。


「せーんせ♡ほら、もっと近くに来て下さいよ♡」


そう言いながら、こちらに近づいてくる。

俺はその言葉に従うようにして彼女に近寄っていく。

すると彼女は腕を広げて、そのまま俺のことを抱きしめてきた。

柔らかい感触が伝わってくると同時に、甘い香りに包まれる。

俺も負けじと彼女を抱きしめ返す。

すると彼女は幸せそうな表情を浮かべた。


「ふふっ、せんせー大好きですよ♡」


そう言って彼女はさらに強く抱きしめてくる。

何度も好きと言ってくれる彼女のことが愛おしくなり、自然とキスをしていた。

彼女はそれを拒まず受け入れてくれた。そして舌を入れてきて、お互いの唾液を交換し合う。

しばらくして、お互いに息苦しくなってきたので唇を離す。

今度は耳元で甘ったるい声で囁かれる。


「せんせー現実で出来なかったこといっぱいしましょうね♡」


そう言われた瞬間、理性が完全に吹き飛んだ。

それから俺たちは獣のように求め合った。

長い時間お互いに求め合った後、エレナが目と目を合わせ言う。


「私、待ってますから♡」


目が覚めた。

また生徒とあんなことをしてしまった。

俺は教師なのに。

しかも相手は未成年なのに。

いくら夢の中での出来事とはいえ、これは許されないことだ。

俺は自分に嫌悪感を抱きながらも、いつも通りに支度をする。

また、夢の中の相手は誰だか分からなかった。

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