この感情をなんとしようか

ケー/恵陽

この感情をなんとしようか


 ああ、どうしたらいいのだろう。

 彼女を見た瞬間、花が咲いたように空気が綻び、華やかになった。いつもの駅。いつもの信号。味気のない、何でもない景色が鮮やかに見える。

 この持て余す感情をなんとしようか。


「そりゃ、恋狂いだな」


 仕事帰りの友人を飲みを理由に誘い出した。相談した早々に回答を落とされる。

 そりゃ、自分でもうすうす気づいていた。なんで彼女を見た瞬間にこんなにも心躍るのか。

「じゃあ、声かけてみるのか」

 恋と気づいたからには、と思うがしかしどうして声をかけたものか。

 何しろ彼女は朝から晩までいつも忙しそうだ。仕事をしているのだから当然で、だけど元気よく声を張る姿はずっと見ていたくなる。

「ところで駅で何の仕事してるんだ? 女性の駅員さん居たっけ?」

 いやいや彼女は駅員なんて高尚なものではない。ずばり彼女の仕事場は駅構内の立ち食いうどんのおばちゃんだ。

「え? まあ、ダメとは言わないが、あの怖そうな人? やたらしゃきしゃき動いてる声のおっきなおばちゃんか!」

 そうだ、と大きく頷いてやると、友人は困惑しながら溜息を吐く。


「あー、まあ、とりあえず、うどん食いに行く?」 

 

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この感情をなんとしようか ケー/恵陽 @ke_yo_

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