電マ少年の旅は続くよ (終)

「わかった!? だったら大人しくアタシをアンタのものにしなさい! そう、これは取引なの! イジュを助けたいなら、アンタはアタシの言うことを聞くしかないの!」


 「最初はお願いって言ってたのに!? というか、これじゃ取引というより脅迫ですよ!? また罪を重ねてますよ!」


 「この愛が罪と言うなら、アタシは甘んじて受け入れるわ! 罪業の炎に焼かれて滅びようとも! 愛に焦がれる心に比べれば、そんなのちっとも熱くないもの!」


 「わ、わけのわからんことを……!」


 このままでは伝馬の貞操が大ピンチ! ヴァイオレットの協力を得るためにはヴァイオレットの身も心もモノにしなければならない!


 それは同時に、伝馬がリトル伝馬の初陣を飾り、ファーストアタックを捧げることでもある!


 (受け入れるしかないのか!? ヴァイオレットさんは美人だけど……いや、でも、こういうことは好きな人とやるもんでしょ!?)


 純真な伝馬、やっぱりこういうことは愛し合った上で致したい。少なくともこんな取引はイヤだ。


 イヤだが、イジュのためを思うと抵抗するわけにもいかない。伝馬は電マを持ったままされるがままだった。


 「ウヒヒ、ヴァイオレット、イっキま~~す!!!」


 いつの間にか服をあられもなくはだけさせていたヴァイオレット、上体にそびえる二つの山をランタンの灯りに妖艶に揺らめかせ震わせつつ、その指が伝馬の下着へとかかった、


 と、その時、


 「「ちょっと待った!!」」


 静止の叫びが聞こえた。伝馬とヴァイオレットが同時に叫び声のした地下三階の入り口の方へと目を向けると、そこには、


 「テンマ、これは一体どういうことなのかしら……?」


 「ボクも詳しく聞きたいね……?」


 ネリネとシオンの姿が!


 並び立つ二人は微笑こそ浮かべているが、こめかみには怒りの十字路がピクピク脈打っている。


 「チッ……! いいとこで邪魔が入ったか!」


 ヴァイオレットが呟く。もう完全に悪役のセリフである。ちょっと前に見せた改心はなんだったのか。


 (ふぅ……助かったぁ……)


 ホッと安堵する伝馬、

 が、それも束の間だった。ネリネとシオンがつかつかと伝馬の前までやってきた。

 ヴァイオレットは素早く伝馬を起こし、その後ろへとさっと逃げた。伝馬を盾にした。


 「ネリネ、シオン、助かっ――」


 言いかけて、


 「テンマ! こんなところで何してたの!?」


 「納得のいく説明が欲しいんだけど!?」


 切りつけるような二人の声が伝馬の言葉を遮った。


 「な、何って……し、死刑囚に少し話を聞きに来ただけだよ……」


 嘘だ。しどろもどろで目も泳ぎまくりだ。というのも、伝馬の計画はこの二人にも内緒だったから。死刑囚を脱獄させるなんて犯罪中の犯罪に、二人を巻き込みたくなかったのだ、


 が、


 「「嘘おっしゃい!」」


 即バレ。目は泳ぎまくり、喋りはしどろもどろと嘘が下手な伝馬。


 「正直に言いなさい!」


 「本当のこと言わないと怒るよ!」


 「うぅ……」


 二人に詰められ返答に窮する伝馬。


 そこへ、


 「やめてっ!」


 伝馬と二人の間に、ヴァイオレットが割って入った。


 「テンマはね、アタシのことが好きなの!」


 ヴァイオレットは昂然と言い放った。


 「テンマはアタシのことが好きで欲しくてたまらなくて、わざわざここへ忍んできたの! アタシは死刑囚だからもちろん断ったわ……。でも、あんまりテンマが情熱的にかき口説いてくるし、テンマの方が立場も上だし、英雄だし、強いわけだし、強引に無理矢理こられると、どう抵抗しても断りきれなくって、しょうがなくそれで……だからテンマは悪くないの! 悪いとしたら、アタシの美貌?」


 ヴァイオレットは伝馬に振り返ってちろっと舌を出して笑いつつ、


 「助けてほしかったら、アタシの言ったとおりにね……」


 小声で言った。舌を出して笑うヴァイオレットはまるで蛇か悪魔。どちらにしても邪悪な感じ。


 「なーるほど……」


 「そういうことかぁ……」


 予想もしないめちゃくちゃな展開の連続に、さすがの伝馬もお手上げだった。乾いた薄ら笑いを浮かべるしかなかった。


 しかし次の瞬間、


 「えいっ」


 「とおっ」


 突如、ネリネとシオンの二人が服を脱ぎだした。一瞬にして裸になった二人。ランタンに照らされたまばゆいばかりの美しい肢体を惜しげもなく晒しだす。伝馬はもうわけがわからない。思考が現実についていけず、阿呆あほのような顔で惚けるしかなかった。


 「ブルット・フルエールはね、多くの妻をめとっていたの。確認できるだけでも両手の指じゃ足りないくらいのね」


 「そう、だからボクたちは話し合っていがみ合うことをやめたんだ。ブルット・フルエールが一夫多妻なら、同じく英雄の伝馬も一夫多妻じゃないと満足しないと思ったから」


 「は……? え……? はあ……?」


 何を言われているのかよくわかっていない伝馬に、二人は畳み掛ける。伝馬の両脇にそれぞれおさまるように、あらわになった身体を滑り込ませがっちりホールド。伝馬を逃すまいと肉体をフルに使った両サイドからプレス。


 「あっ! ズルい!」


 ヴァイオレットが空いていた伝馬の背中へとぴったり貼り付く。二人に負けじとはち切れんばかりに豊満なお胸をこれでもかと伝馬へ押し付ける。


 「ズルいって、一番最初にヤったんじゃないの?」


 「そうだよ、今度はボクたちの番だよ」


 「ほ、本当はまだなの! 今からってときに、アンタらが来たの! だからアタシもヤる!」


 「ま、いいわ。伝説の英雄ブルット・フルエールと並び立つテンマなら、三人くらいどうってことないわよね?」


 「ボクのこと、ちゃんとたっぷりかわいがってね?」


 「アタシのことも忘れないでよ?」


 さすが女性の方が強い世界、プログレッシブかつアグレッシブ極まりない。あっという間に伝馬の身体は三つの美しい肢体に絡め取られてしまった。身体を這う体温、芳しい吐息、心打つ囁き。伝馬の肉体が、精神が、美しい女性たちへと埋没してゆく。


 「わー………………………………」


 伝馬の悲鳴、続いて電マの音が牢屋にこだまする。



 ヴヴヴヴヴイイイィィ~~~~~~ンンンンンン……………………………。



 夜が更けてゆく……。


 ………………

 …………

 ……


 翌朝、地下牢から出てくる仲睦まじげな四人の姿があった。

 一夜にして、四人は急速に仲を深めたらしい。一人の男に三人の女がぴったりと寄り添っている。一人の男を中心として、四人は固い絆で結ばれたように見える。

 夜に何があったかは誰も知らない。四人以外にはわからない。だが、一晩牢屋で過ごしたにしては、四人とも肌艶と血色がツルツルテカテカとても良い。


 昨夜に何があったとしても、きっとそれは電マのおかげ。なぜなら電マは癒やしのアイテムなのだから。

 伝馬は電マにこれまで何度も救われ、電マで戦ってきた。それはこれからも続くだろう。電マ少年の異世界旅はまだ終わらない。


 両手に花どころか、背中にまで花を背負ったハーレム状態で、遠く山の峰に昇りだした太陽に向かって伝馬は歩き出した。

 朝日に照らされた少年の顔はいつも以上にさわやかで、どこか自信に満ちていて、昨日より大人びて見えた。



 終わり。

 

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伝説の魔剣、略してデンマ!? 伝説の魔剣だか電マだかわからないけど、キノコ型の振動するヤツで異世界をイきヌきます!!! ~電動マッサージ機は伝説の魔剣の夢を見るのか~ 摂津守 @settsunokami

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