第6話 聞き込み

「すみません、このお店ってインターネットエクスプローラありますか?」

 ぼくがそうたずねると、レジのお姉さんは固まってしまった。見下ろすような姿勢のまま、目だけがくるくると動いている。


 ちょっとした時間が流れた。再びぼくの方を見たお姉さんに「もう一度お願いします」と言われ、それが聞き直したいという意味であることにぼくが気づいたのは、更にもう少し経ってからだった。


「インターネットエクスプローラです。インターネットを見るための道具です。ぼくはそれが見たいのです。会社の中で情報をやりとりするために、昔はどの会社でも使っていたそうですね。ここにはもうありませんか?」

 そう付け加えると、レジのお姉さんは不思議そうな顔をした。

「あ、パンをお探しということではなくて、うちの……仕事内容に関するお問い合わせ、ということですね?」

「はい、そういうことです」

「それは……ええと、学校の宿題の自由研究とか、社会科見学といった目的ですか?」

 まあそんなところです、とぼくは答えた。学校の宿題ではないけれど、まあいいだろう。

「少々お待ちください」

 そう言うと、レジのお姉さんはガラス戸を開けて調理場に行ってしまった。

 店長さんに聞きに行っているんだろうとぼくは考えた。


 壁にかけてある時計の針がカタンと動いて、レジのお姉さんは戻ってきた。

「店長に聞いてみましたが、当店では何年も前に使わなくなったため残っていないようです。系列の他のお店にも、今はもうないとのことです」

 すみません、と最後に付け足して、レジのお姉さんはぺこりと頭を下げた。


 ここはだめだったか……

 ぼくはちょっと残念な気持ちになった。

 これ以上ややこしい名前のお店なんて、他にあるだろうか。ぼくの調査は、時間がかかりそうだ。

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