第20話幼馴染み
それからは地球側で高校に行ったり放課後や休みの日は執務をしたり、臣従しに来た氏族の相手をしたりしていた。
臣従に来た氏族は百を超え、ピーク時には一日に5つもの氏族がきた日もあった。
「随分賑やかになったものね······。ああ、また口調が引っ張られてる」
ココ最近はずっとお嬢様のような話し方で続けていたせいか、すぐにそっちに引っ張られてしまう。練習とか言ってわざわざこの口調で通してきたから仕方ないんだけどね。頻繁に変えるとボロがでちゃうし。もうなんだかこっちが本来の口調に思えてきている。
まあ、それはいいとして、この国の人口は増え続け、現在の人口は一千万を数えるようになった。でも、そのせいで居住地の不足や人口の過密、仕事の不足などが足りなくなってきている。食糧問題や衛生管理面では最初期から力を入れてきたおかげで、まだ出ていないけれどその煽りを受けてわたしの負担も急増していた。
「うう、書類仕事が終わらない〜!!」
問題ないかどうかは、グラセフたちが確認は済ませてくれているため、わたしの仕事はチョロっと見て決済印を押すだけなのに一向に書類の山が減らない。
「こ、このままだとみんな過労死しちゃうって!」
どうにかするにはやっぱり文官を増やさないと。
どこから引っ張ってくるか······。
黙々と書類を処理しながら、まじめに新しい文官の大量採用を検討し始めたところで、時計が鳴った。
「今日はここまでね·····」
これ以上は、明日の高校にも支障が出てしまう。
「リリア。わたしはあっちに戻るわ。後はよろしくね」
「おまかせを、マスター」
「<転移>」
一瞬で景色は変わり、お祖父様の屋敷にあるわたしの部屋に帰ってきた。
·····いや、家は別にあるんだけれど、もうこっちで暮らし始めて一月以上がたったせいか、ここを我が家と言ってもあまり違和感がなくなってきた。
このままズルズル行くとこっちが実家になりそう。
「もう深夜······。明日は遅刻、しないようにしないと」
頭を使い続けているせいかすこしボーっとする。空き時間で処理するために持ってきていた書類をカバンに放り込み、ほとんど倒れ込むようにベットに入って寝た。
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朝。
目覚まし時計の音に叩き起こされるとまだ早朝の五時半だった。
「·····時間、間違えた」
はあ、と思わずため息が出る。五時間ちょっと寝れただけでも良かったかな、とも思うけれど、いくら超人的な体になっているとはいえ疲れは疲れ。多少なりとも影響は出る。
「二度寝は····時間がすくないか·····しょうがない散歩 にでもいこうかな」
収納の指輪から取り出したものを軽く食べてから、ジャージに着替えて外に向う。
途中にすれ違ったメイドさんたちに挨拶しながら門を出て、走り出した。
もうすぐ秋になるためか幾分か過ごしやすくなった空気の中を走り出した。
勿論、<身体強化>なしでだ。
「····気持ちいいなぁ」
そういえば、ここのところ体を動かしてないなと思いだした。
体を動かすのはストレス解消にもなるとかいうし、これからはすこし運動するようにしようかな。
十分ほど走っていると、川にたどり着いた。水面はまだ出たばかりの太陽の朝日を浴びて、輝いている。
そのまま無心で走り続けていると、小さな公園を見つけた。
「ふう〜」
思ったよりも鈍ってしまっていた様で以前と比べれば体力が全然ない。
とは言っても、この程度では汗一つかかないけれど。
しばしの間その景色を無言になって見つめ続けた。
「よしっ。今日も頑張ろう!!」
一つ、自分に活を入れると、<虚像迷彩>を使って姿を消し、<転移>で屋敷に戻った。
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学校に行くと教室ではクラスメイトたちが楽しげに話していた。
「あ、おはよう。詩織!」
「うん、おはよう。穂乃香」
話しかけてきた明るい茶髪の彼女はわたしの特に仲がいい友達の姫島 穂乃香。
基本的に明るくてあまり目立ちすぎる子じゃないけれど、ムードメーカー的な一面も持ち合わせている幼馴染み。
ちなみにそんな可愛い顔して裏ではかなりの異世界好きである。厨二病ともいう。
未だにクラスメイトたちにバレていないのが不思議なぐらいだし。
それに、髪と瞳の色が突然変わってしまったことに対してクラスメイトたちに色々話を通してくれたのも穂乃香だった。
「どうしたの?なんか疲れてない?」
ギクッ、と動きを止める。
普段と変わらないように気をつけていたのに、彼女の前ではいつも筒抜けだ。
「な、なんでわかったの?」
「もう、じゅうねんい十年以上の付き合いだよ?もうなんとなくで分かっちゃうよ」
「もうそんなに経つっけ」
「そうだよー」
小中高とずっと同じ学校だったし、わたしと穂乃香の間での隠し事は難しい。それこそ家族よりも簡単に見破れるし見破っちゃう。
「なんでかわからないけど、あんまり無理したらだめだよ?無理したらまた家に行くからね」
「分かってるって。あんなのは中学で十分よ」
わたしたちはどちらかが病気するとしていないほうが看病しに行っていた。勿論学校は休んで。だから片方が体調を崩すと相手の足を引っ張ってしまうから、小中学校ではよく病気には気をつけたものだった。
それを今引き合いに出すということは、穂乃香には今のわたしはあまり大丈夫には見えないのだと思う。
チャイムまで二人でとりとめのない話をしながら、気をつけようと思った。
「あんまり心配かけたくないし、ね」
自分の席についた彼女の方を見てそう呟いた。
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