第14話 検証と情報収集
「ん·····?」
肌寒さを感じ目を覚ますと部屋中に、宝石や貴金属が転がっていた。
「ああ、そういえば昨日そのまま寝たんだっけ」
むーん、と背伸びをして立ち上がる。
ひとまずリリアに水を持ってきてもらおうとしてはた、と地球に帰ってきていたことにきずいた。
一瞬の寂しさを感じながら顔を洗い、お祖父様に用意してもらった。着物を着る。
「お嬢様。起きていらっしゃいますか?」
「はい。おはよう薫さん」
「はい。おはよう御座います」
食堂に行くとメイドさんたちが給仕してくれる。
「·······」
でもやっぱり落ち着かない。
お父さんは普通の会社員だし、お母さんは元皇の令嬢だけど生活は一般家庭と変わらない。向こう側でなれたかと思ってたけど勘違いのようだった。
壁際にはお祖父様が「もうこれ以上危ない目に合わせない」といい、わたしにつけられた護衛たちが控えている。正直大袈裟だし、必要ないと言ったのだけどお祖父様の意思はかたく、最終的には泣き落としを使われて落ちた。
「お祖父様はどこ?」
食事が終わると薫さんに尋ねた。昨日作ったペンダントを渡すためだ。
ここは法治国家の日本とはいえ万が一があるかもしれない。そのためのお守りだった。
「今の時間帯なら、旦那様は書斎にいらっしゃるかと」
「ありがとう」
幸いまだ家を出てはいなかったらしい。護衛たちを伴ってゾロゾロと書斎に向かう。
書斎の扉をノックする。
「お祖父様。詩織です」
「入りなさい。今日は何かあったのかい?」
ニコニコとわたしの方へやってくると優しく頭を撫でてきた。
「お、お祖父様·····!!」
他に護衛の人達もいるのに!!と顔を赤らめながら抗議するもするりとかわされてしまう。恐る恐る護衛の人たちを見ると、ほんわかしたような優しい目でわたしを見ていた。
「······!!」
なんとか悲鳴を上げないように耐えて、深呼吸をし、ペンダントを取り出した。。
「お祖父様への贈り物です。手作りなので少し不格好だけど」
「不格好などと·····十分見事な装飾品だと思うが」
「じゃあ、お祖父様につけてもいい?」
「全然構わないぞ?むしろ是非に頼むよ」
鎖の部分を外し、つけるときに耳打ちをした。
「これには守護と治癒の魔法を込めてあるから、できるだけ外さないで」
お祖父様は一瞬驚いた顔をしたけどすぐに元の顔に戻り、こくり、とうなずいた。
「ありがとう、詩織」
「うん。似合ってるよ」
「フフッ、それは良かったよ」
その後少し話すと仕事の時間になったので、わたしは退散する。
お父さんとお母さんにも仕事に行く前にわたすことができた。
その時に「他の人にはこのペンダントみたいな魔導具は渡したらだめ」という忠告を受けた。まあ、家族だから信用して渡したんだし、今の所他には誰にも渡すつもりはない。まず確実に大騒ぎになるのは目に見えているし。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「なんとかまいたかな····?」
屋根の上に登り、わたしを探している護衛たちを見る。
わたしを護衛できなかったなんてなったら彼らは大変だろうけど魔法を見せるわけにはいかないし、背に腹は代えられない。
街から少し離れた鬱蒼とした森にやってきた。
家族に説明したときにも使っていたけど、所詮は初級の魔法だしもしかしたら帰還系のラノベでよくある威力の低下とかあるかもしれないし。
「とりあえずはやってみないとわかんないか」
というわけで使ってみた。
「まさか、負担も威力も向こうとほぼ同じなんて·····」
むしろなぜこっちには魔法がないのかわからないレベルで変わらなかった。
別にこっちの人間に魔力がないわけではない。向こうの人間に比べれば少ないものの持っているは持っている。
転移魔法も使えたということは完全にこちらの世界にも魔法法則が存在することになるんだけど·······。
「さっぱりわからない!」
判断材料すらないものに結論なんて出るはずもない。ま、いっか、とひとまず検証を終えると次は図書館に向かった。
「やっぱり情報を集めるならここだしね」
インターネットで調べるのもいいんだけど、調べるのは向こうで使う技術。何十万人という人の生活がかかってる以上、玉石混交のネットは使いづらい。その点、本ならある程度の信用はできる。流石に嘘を堂々と本にするやつはいないだろう。
もし、している奴がいたら凄い。
「農業関連と治水関連。後は経済とか·····後は万が一のために災害関連、医療も必要かな」
わたしのオリジナル魔法<書写>で買ってきた白紙の分厚いノートに異世界語の一つーー古代神聖語で書き写す。もちろん魔法を使っているのがバレないように偽装しながら。異世界語は世界共通語もあるけれど、この内容は向こうでは国家機密に匹敵しかねないものだったため、一部のものにしか読めない古代神聖語にしたのだ。
<書写>は便利なようにも思えるけど写すものを目に通しながらでないとつかえない欠点もあって魔力も体力もかなり使ってしまう。
「········」
黙々と写していく。これはやっとわたしを見つけた護衛たちがやってくるまで続いた。
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