第11話 一時の別れ
三氏族合わせて二十万ほどが新たに配下として加わった。
前回と同じように何日かかけて仕事を選んでもらい、各地に振り分ける。
これはもう、こっちとの縁が切れるのはむずかしいかな、とぼんやりと考える。
わたしはあと数日で地球に戻るのに、いつの間にか、40万の人間の統治者になってるし···
向こうに戻っても定期的にこっちのことも見ないとだめかなぁ。
「でも、それも悪くないかな」
今更、こっちの知り合った人たちを放り出して、はいさよならなんてできないぐらいには情が移ってしまっている。
転移は少しずつならすために使っている。いきなり本番とか怖すぎるしね。
そんな風に、帰る準備をしながら、わたしの持つ権限もわたしの留守中のみという制限のもとで、何らかの原因で長期に渡って、こちらに帰ってこれなかった場合に備えて委譲している。
「本当に行かれるのですか?」
「うん。向こうの家族も心配してるだろうしね」
「·····そう、ですか」
アルマが少し悲しそうに、肩を下げる。
「そんなに思いつめなくても大丈夫だって!絶対に戻ってくるから、ね?」
「うう、はい·····」
そんな心配しなくても帰ってくるつもりだったのに。心配性だなぁ。
わたしはそう思いながら、アルマの頭を撫でた。
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そんなふうにしているうちに時間はたち、帰還当日となった。
そういえば、こっちに来てから久しぶりに比較的ゆっくりとできたと思う。
まだ早朝なのに、アルマ、グラセフさんを筆頭に族長たち、リリアの6人が水晶の間まで見送りにきてくれた。
「ほらもう、今生の別れじゃないんだし、そんなに泣かないでアルマ」
若干の苦笑をしながらアルマを撫でる。
「じゃあグラセフさん。留守中の指揮は任せます。長くとも一月以内には帰ってくるので」
「はい。お待ちしております、姫巫女様。後私のことは呼び捨てで構いません」
「ーーはい。頼みますね、グラセフ」
他の三人にも挨拶を交わす。
グラセフさんーーグラセフのわたしの呼び方は、聖座の間でのわたしの姿に感動したとかでまた仰々しくなっている。
·····そんな感動するところってあったかな?
「リリアも、わたしが戻るまでグラセフの補佐をお願いね」
「はい。おまかせを、マスター」
リリアがスッと頭を下げる。
いつも通りの姿を崩さない彼女に安心感を覚えながら魔法陣を広げる。
「それじゃあ、行ってきます」
「ご武運を!」
「いってらしゃいませ、マスター」
リリアに手を振り、グラセフの微妙に外れた言葉に苦笑しながら、わたしは発動した転移の光にのまれた。
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