第6話 戦闘メイドリリア

あれから3日たった。


オリハルコンで骨格を作り、ミスリルで魔力回路を形成し、生体金属のライブタイトで人らしい形に整形。瞳には超高純度の魔晶石を使い、動力炉であり核となる心臓は、魔竜王(倒した竜を鑑定したときに知った)の魔石を圧縮した拳サイズの純粋な超高純度魔力結晶体ーーー神結晶を使った。要所要所をオリハルコンで補強することで、私の<白雷砲>をもほぼ無傷で耐えきれる強度を実現。


更に、兵装として弾数無限の魔導銃器、熱源·生体反応·魔力に反応して敵を追い回すホーミングミサイル、高出力のエネルギーブレイド、4000メートル毎秒を実現したレールガン、強力な魔力障壁を生み出すシールド装置などを装備。


切り札として、自身以外を無差別に破壊する広域全方位殲滅兵装<コプラス>を搭載させた。


結果丸3日かけて出来上がったのが今、目の前に立っている黒髪の美少女。



「お初お目にかかります。人工機巧生命体ーーエクス・マキナ、マスタータイプ。個体識別名リリア。これからよろしくお願いいたします、マスター」



表情豊かに、にこやかに笑いながら彼女ーーリリアは言った。


彼女のことを見て一目で人ではないとわかる者はそうそういないだろう。



「うん、これから宜しくリリア」



いい仕事をやりきったという達成感と、ようやく新しい仲間を向かい入れられたことへの喜びを感じながら、私は彼女の手を握った。






==========





「ーーそしてここが寝室ね」


「はい、記録しました」



一通り城内を案内する。


それから数日たつとリリアは城に馴染み始めた。瞬く間に城内のゴーレムたちを掌握し、作業を効率化させた。


しかも、彼女は指揮に特化しているわけじゃない。


倉庫内の品の目録をつけるのなんてあっという間にこなすし、欲しいなーと思ったものとかは先回りして用意したりする。



「どうぞ」



ちょうど読書が一段落したところで紅茶が出された。



「····美味しい」


「恐れ入ります」



そつのないところも、恐ろしいぐらい気が回るのもすごいけれど、もっとすごいのは知識に持っているだけで実際におこなえることだ。


今の紅茶だってそう。美味しい入れ方を知識として知っているのと、実際に美味しい紅茶を淹れたっていう経験として知っているのとではまるで違う。


本来なら知識として知っているイコールできるとはならないもの。でもそれを成り立たせてしまうのがリリアだった。


紅茶を飲みながらふと、そういえばここ数日、力の調整や新しい技や魔法の開発などで森に行ってなかったな、と思い当たりリリムに声をかけた。



「リリア、外に行こう。ついてきて」


「かしこまりました」



私が<天祗>を持って立ち上がりながら言うと、リリアは手早くテーブルの上を片付け、同行した。


訓練場だと相手がいないので森に向かう。


〈身体強化〉を使って走り始めるとグンッ、といままでの5割増しぐらいの速さが出た。



「お、おわっ!?」



予想していたより格段に上がった速度に対応できずバランスを崩すが



「ご無事でしょうか?」



すぐにリリアがフォローに入り抱き止めてくれたので怪我はしなかった。


······素晴らしい有能っぷりだなぁ。


感心しながら「ありがとう」といって離れる。


次はこけないようにと、気をつけながら走り始めた。


やはり訓練場だと全力も出せないし、完全にはまだモノにできていなかった。


少しずつ慣れてくるといままでの速さと一線を越え、見える景色が流れていくのは楽しかった。


そうして走っていると、私に普通についてこれているリリアに気づいた。


耐久限界ギリギリの高出力と最高の素材をつかったのでスペックは高いだろうなと思っていたけれどまさか、今の私に軽々ついてこれるとは思っても見なかった。


ものの10数分で森までの距離を踏破した。



「ウルフさんは·······あっちか」



〈サーチ〉を使ってシルバーウルフを探すと、以前では見つけられなかった距離でも感知できていた。精度も上がったらしく前は位置しか、それも、平面的にしか分からなかったのが、向いている向き、僅かな動きまで手に取るようにわかり、なおかつ、立体的に認識できるようになった。



「リリアはちょっと待ってて」


「承知しました」



リリアが一歩下がるとわたしは自分に〈身体強化〉のみをかけて戦うと、ものの5秒ほどで群れが全滅した。



「お見事です。マスター」


「ありがとう」



全滅した群れを見ながら向上した力は1,5倍くらいかな、と考察した。


〈雷速〉も次の群れで試してみたらこちらも1,5倍ほどの向上だった。



「両方合わせて2,25倍かぁ。········完全に制御するのには骨が折れそうだなぁ」



〈雷閃〉も実戦で威力を調整できるように使い続け、群れを6つ目を潰した頃には、4000メートル毎秒を不意打ちされながらでも安定して出せるようになった。



「私はこんなもんかな。次はリリアのを見せて?」



自分が作ったものだし、完成品がどんな感じのモノになるのかはやっぱり気になる。



「はい、〈武装展開〉ホーミングミサイル」



ロケット砲が虚空から現れ、数十発のホーミングミサイルが打ち上がり、800メートルぐらい離れていたゴブリンたちの集落を纏めて焼き払い、森もろとも焼失させた。


どことなくリリアの目がキラキラしている気がする。



「·······うん。じゃあ次いこうか」



とりあえず、惨状もとい自然破壊された森から目を逸らし、逃避する。



「了解です。<武装展開> レールガン」



リリアが砲身を遠くに見える岩山に向ける。



「発射」



視線の先の岩山の頂上がはじけとぶ。


それとほぼ同時にパアンッと音速を突き抜けた音がした。



「······竜でも殺せるんじゃ?」


「記録されている対魔竜王の戦闘情報から予測演算すると、軽度の破損にとどまるように戦った場合、予想撃破率は64パーセントです」


「·············」


「相討ちでも良いならほぼ確実に撃破できます」



言葉も出ないというのは、まさにこの事ではないだろうか。


というか、私が命懸けで勝った相手に暗に、弱いと言っているようなものである。


いくら最高の素材を湯水のごとく使ったといえどなぜここまで強くなった?


一体なぜこうなったのか。作った私ですらわからなかった。



「もういっそ清々しいぐらいの理不尽の塊ね」



遠距離では無茶苦茶な威力の兵器群。

近距離でもその動きは、私の強化時のモノに迫る。


もしかしたら私は、作ってはいけないものを作ったのではないか?と、思い悩むが、強いことには越したことはないので、まあいいかと思い直す。


それからしばらく試し打ちを続けていると突然、リリアが私を庇うように一歩前に出た。


その挙動を理解すると同時に私も〈天祇〉に手をかけ、〈サーチ〉する。



「マスター、どうやら囲まれた様です」


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