第7話 異世界人との初遭遇


「どうやら囲まれたようです」




「みたいだね」




「どうしますか?殲滅しますか?」




「いや、〈サーチ〉の反応から見るに人間っぽいし、まずは接触したいかな」




なにせこちらに来てから自分以外の人間を見たこともなかったのだし、これぐらいは許してほしい。


というか殲滅って物騒すぎやしないだろうか。アレって〈コプラス〉を使うってことだろうし。


·······私も巻き込まれる前提かな?




「とりあえず向こうの出方を見るよ」




「······はい····」




なんかむっちゃ不服そうな感じだった。


もしかしてリリアって戦闘狂か破壊狂の片鱗がある?


私達のいるところは少し開けている場所なので、相手からしてみれば隠れながら囲める絶好の位置取りでもある。


もし攻撃された場合まず、ここから離脱しなければ、などと考えていると、ちょうど私達の方から見て正面の方の茂みから、一人の四十代くらいの大きな190センチほどの男が、14、5歳だと見える女の子を連れて出てきた。


外見的特徴を見るに人族のようだ。


男の方は私達から20メートルほどの距離で止まり、女の子だけで近づいてきた。




「はじめまして、雷の化身たる巫女よ」




ん?·······んん!?


なにか、恐ろしいものが聞こえた気がする。




「雷の化身?巫女?」




「はい。我が一族は代々神の力を感知することができるのです。もっとも、はじめて感知することができたのは、雷の化身たる巫女様が竜を落としたときでしたが」




なるほど、あのときに見られてたのか。


そりゃあ竜と戦っていたときはまったく余裕なかったし、全力で戦っていたからね。


だからこそ感知できたのだろう。




「それで?まさか、挨拶だけをしに来たってわけじゃあないでしょう?」




「·····はい。雷の化身たる巫女様に不躾だとは重々承知しているのですが、我々に巫女様の土地を譲っていただけませんか?」




哀れみを誘うような仕草と上目遣いの懇願を




「え、やだけど?」




バッサリと切り捨てた。




「·····ふぇ?」




「だから嫌だって」




「わ、私たちはもう行くところがないのです!半分で構いませんので、どうか·····!!」




「って言われてもねー」




特に私にメリットないからなぁ。


そう思っているとリリアが耳打ちをしてきた。




「でしたら彼らを配下にするというのはどうでしょう」




さらっといきなりすごいことを言ってきた。




「うーん。でもそれってやる必要ある?」




「ですが民の数もステータスのひとつになりますし、ゴーレムたちも私のような例外を除いて複雑な思考ができないので、彼らのようなのは必要になるかと」




「ああ、なるほど」




確かにゴーレムたちが複雑な思考をできないために問題が起こったことも何度かあった。


そこを人に入れかえばもっとスムーズにできただろう。




「ですが最初からそう伝えると角が立つでしょうし、神前決闘という形でそれをかけてください」




「え?戦うの?」




「はい。その上で勝ってください」




無茶苦茶いうなぁ。勝負って運の要素もあるから、絶対はないんだけどな。


でも、ここまで言われたら答えてあげないとね。




「ふふ。わかったよ」




評価が高いというか、期待が大きいというか。


私は苦笑しながらううっと言っている女の子に向き直った。




「ねえ」




「はっはい!」




「私が勝ったらあなた達の氏族は私の配下になる、あなた達が勝ったら私の開拓した土地の4割をあげるっていう条件で神前決闘を受けてくれるならいいよ」




「え······」




「どうするの?」




「は、話してきます!」




女の子は男のところまで戻ると話し始めた。


少しすると少しざわめきが上がった。決闘の条件を聞いたのだろう。それから数分の間話し合っていたけれど、ようやく男が私の元にやってきた。




「あなたは?」




私が問うと彼は低い声で名乗った。




「私はレムリア氏族、族長のグラセフ•レムリア。よろしく頼む。雷の化身たる巫女よ」




「私は皇 詩織ーーシオリ•スメラギ。後、その呼び方はやめて」




私は嫌そうな顔をする。




「では、雷の姫巫女様と」




「あんまり変わってないじゃないですか······」




実直そうな雰囲気と同じで、あまりこの辺の融通は効かなさそうだなと感じた。


はあ、とひとつため息をついてから本題の話に入った。




「それで、結局どうするんですか?私のもとに来た以上、結論は出ていると思いますが」




「ああ。その神前決闘、受けさせてもらいたい」




グラセフさんは私を真っ直ぐに見ながら是の返答を返した。

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