第48話~初めての相談~
私は今、とても悩んでいる。
社会人になって二年目、念願かなって看護師になれたが、様々なことが私を襲ってきたが、それでもこの一年間、必死に乗り越えて来た。
しかし、私の体と心は限界に来ている。
先輩看護士から、毎日のように酷い言葉を言われて、そしてまるで雑用のようにこき使う。
最初は何を言われても耐えてきたが、最近になってから、その言葉がエスカレートしてきており、遂には私の心が崩壊してしまいような言葉も投げかけられている。
そのせいで、仕事も失敗ばかり。
先輩医師の足を引っ張ってばかりおり、もう自分はこの仕事に向いてないのかなとさえ思っていた。
しかし、私は友達が少ない。
かといって悩みを吐き出せる友達は一人もいない。
本当は面と面を合わせて、色々と吐き出したいが、それも出来ないのが悔しい限りだ。
私の手には携帯があり、本当は誰かに掛けたい。でもかけようとすると緊張で鼓動が激しくなる。
その時、私の指は勝手に、電話帳を開き、気づいたら父の名前のところで止まっていた。
何故私はこんなところで止めたのか分からないが、父とは既に二年ほど連絡を取っていないし、顔も見ていない。
東京の大学に進学した後は、ほとんど連絡を取っておらず、年に一回帰省して顔を合わせるだけだった。
こんな時に、父の声が聴きたい。
私はそう思い、発信ボタンを押した。
何度かコールが続くと、電話に出てくれた。
「もしもし」
「お父さん?」
「どうした。久しぶりだな」
「うん・・・」
思わず、低い声で返事をしてしまった。
「どうした?元気ないぞ」
「いつもこんな感じよ」
「そんなことないだろ。悩みがあるのか?」
「・・・そうだね」
「俺でよければ聞くぞ」
父は昔から、かなり頼りになる存在であり、私が高校時代にいじめられた時でも、必死に体を張って守ってくれた。
だからこそ、そんな父のことが好きな気持ちも抱いている。
だが、いざ相談となると、私は一切出来なかった。
遠慮という言葉があったのかもしれない。
それにいつも母親に相談していたため、その名残もあり、父に相談する機会もなかったのかもしれない。
恐らく今回の電話が、人生で初めて父親に相談するのだ。
私は涙ながらに相談をすると、父は黙って聞いてくれた。
「もう、私はダメかも・・・」
すると父が言葉を発し
「いいか、良く聞け。人生に平らな道はないんだよ。あるのはでこぼこ道だ。つまり、お前のこれからには、必ず障害物が来る。それをどう処理し、どう乗り越えるのかが、お前が与えられた宿題だ。投げ出すようなものに、神様は見守ってくれないぞ」
そう言って、父は笑い始めた。
「いつでもいいから、相談してきな。俺はお前の人生の先輩だからな」
そこから私は、些細なことも吐き出すようにした。
必ず父親に。
~終~
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