第37話~ポイントカード~
都会のとあるバーには、二人のサラリーマンが座っている。一人は刻々と酒を飲んでおり、一人は完全に寝ている。
今日はこの寝ている後輩が、飲みに誘ってきて、こんなにもオシャレなバーを紹介してくれたのだが、まさか俺より先に寝るなんて想像もしてなかった。
一体どうしたらいいのだろうかと思い、一人の若い店員に話しかけた。
「こいつ置いていってもいいか?」
しかし答えはNOだった。
確かにこのオシャレなバーに一人寝ている男を残して帰るのも気が引けるし、だからと言って酒も飲まずにここにいるわけにもいかない。
流石にさっきからビールを何杯か頼んでいるが、もう飲み飽きたし、早く家に帰って休みたい。
しかも、明日は子供たちを連れてテーマパークに行く約束もしている。それがまた遠くて、朝早くに出ないと間に合わないのだ。
時間を見ると既に十二時を回ろうとしていた。タクシーを使ったとしても一時間はかかってしまう。
〈タイミングが悪ぃなぁ〉
そう思いつつも、必死に寝ている後輩の体を揺さぶりながら起こそうとした。だが、どれだけ深い眠りをしているのか、全く目を覚まさなかった。
仕方ない、とりあえず金だけは払っておくか。その後にゆっくり起こして帰ることにしよう。
そう思い、近くのレジで先に清算だけすることにした。
若い男性の店員が
「ポイントカードはありますか?」
と聞いてきた。意外にもそのバーは、全国に流通しているポイントカードが使えるため、俺は内心驚きながらも、そのポイントカードを出そうとした。
すると、隣にいつの間にか寝ていた後輩が起きており、そっとポイントカードを店員に差し出した。
何もただ黙ったまま、ポイントカードを店員から戻されると、財布にしまってから、俺に
「すいません。先に失礼します、ごちそうさんです」
と言って店を後にした。
既に清算は終わっていたため、ただレジに立っているわけにもいかずに、俺も準備をしてから店から出ることにした。
俺はあいつの謎の行動に、一瞬理解が出来なかったが、よくよく考えたら、払ってもないあいつがなんでポイントだけを貰って帰るんだ。
あいつはただ得しかしてないじゃないか。
そう思った瞬間に、怒りが爆発しそうになってしまった。
不機嫌のままタクシーに乗り、行き先を運転手に伝えてから、しばらく走っていると、あまりにも感情が爆発しそうになってしまい
「金払えよバカ野郎!!」
運転手は驚き、車内に気まずい雰囲気が流れた。
〈言う場所間違えたな・・・〉
~終~
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