第35話~カーラジオ~
僕は都会の銀河のように光が流れる街に、ただ一人務めるサラリーマンだ。
だが、他のサラリーマンとは違う変わった通勤方法をしている。
それは車通勤だ。
地方に行くと、あまり珍しくない光景かもしれないが、都会では電車通勤の人間がほとんどであるため、車通勤は珍しく思わる。
何故ならデメリットとしては、決して飲みに行けないのだ。行けたとしてもウーロン茶しか飲めないため、あまり上司たちからはよく思われておらず、そこから一切誘われていない。
だが別にそんなことを苦になんか思ってない。それどころか、誘われないほうが良いと思い始めていた。
別に飲みに行ったって、上司の愚痴や世の中の愚痴ばかりであり、決して楽しいとは思えないものである。
それだったら車通勤のほうが、かなり楽である。
それに僕には一つ、楽しみにがある。
それは車の中で効く「カーラジオ」である。
特に深夜になると心地よいサウンドと、心地よいパーソナリティの声がマッチして、車をとても有意義に運転することが出来る。
会社でのストレスをここで癒すことが出来るため、僕はとても幸せな人間だと思っている。
今日もいつも通り、仕事帰りに車に乗ってから「カーラジオ」をつけた。
するといつも通り、深夜の音楽トーク番組「ミッドナイト・ミュージック」が始まった。
女性のパーソナリティが喋り始めて、しばらくパーソナリティの身近にあった話をし始めていたが、この女性は元々女優をしていたらしく、そこでの体験談などがほとんどであるが、どれも傑作と言ってもいいほど面白い。
特に「撮影の休憩中に間違えて、賭博会場に入ってしまい、警察から感謝状を貰った」という話がとびきりで好きである。
そこから洋楽で素敵な音楽をかけてくれる。それがまた心地いいんだよな。
そう思いながらも、まるで星のように流れる対向車の車のライトを横に走っていると、CM明けに突然、男性アナウンサーの声が入ってきた。
どうやら緊急ニュースみたいだ。
「えぇ、今日大手電機企業の「エネルギー本舗」が倒産しました。繰り返します・・・」
その時、僕の顔は微笑みから真顔に変わった。
何故ならその会社は、僕が昨日取引成立したお得意様であるからだ。
「嘘だろ~・・・」
つい言葉が漏れてしまった。
折角立てた企画が一から振り出しに戻ったと言うことだ。
そこから女性のパーソナリティの話が一切耳に入らなかった。
僕は心の中でこう思っていた。
〈倒産危機なら言ってよ~〉
~終~
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