第31話~見てくる~
「ジロジロと見てくる」
そう感じたのは、一人の男性水道業者だ。
ある日、一つの連絡を受けた。
どうやら、水道から異臭がするというのだ。これはよくある相談だ。
これの原因は、多くあるが、前日に水道管工事があり、溜まった匂いが水道から出るケースが八割ちかくある。
これの解決策としては、二日間ぐらい放っておくしかない。しかし、それはあくまでも最悪の手段であり、水道を使う主婦たちにとっては、二日間は「たった」ではなく「そんなに」のレベルである。
そんな時には、すぐに駆け付けるほか手段はない。
連絡を貰ったお宅にお邪魔すると、一人の若い主婦が丁寧に案内をしてくれた。
これにとっては、とても助かることである。
水道の前に近づくと、確かに異臭が感じ取れた。
この匂いは、確かに身に覚えがある。恐らくあのパターンに違いない。
自分は道具を出して、作業を始めようとした。
しかし、一つ気になることがあった。
それは主婦が自分をジロジロと見てくるのだ。作業の様子を見てくる人はたくさんいるが、こんなにもジロジロとなめまわすように見てくる人は初めてであり、少し戸惑った。
しかし、主婦は少し引いたような顔もしてきた。
もしかして、この人にしか見えない何かがいるのだろうか。
確かに一週間前に、同じ相談でお宅にお邪魔したとき、少し嫌な雰囲気と寒気がした。所謂霊感というものだ。
自分は子供の時は、よく「人には見えない何か」を見ていた。
そのため、友達からは気味悪いと言われており、あまり友達も出来なかった苦い記憶がある。
しかし、大人になるにつれて、その感覚が薄れてきており、今では多少感じるところまでになっていた。
だが、その嫌な雰囲気を感じ取れた家では、今まで薄れていた感覚が再び発揮しそうなほどだった。
まさか、この人はその「未知なる感覚」を持っており、今自分の周りにいるのだろうか。
確かに目の前には小さな窓があり、それが半分開いており、逆に怖さを増してるように感じた。
そんなことを思うと、自然に背筋が凍り始めていた。
恐らくあの家から持ち帰ったのに違いない。
どうしようと思いながらも、作業をしながらも近くに塩がないか探していた。
すると主婦が自分に
「あの、ちょっといいですか?」
と尋ねてきた。
少し返事をするだけでも、鼓動が激しさを増していたが、無視するわけにもいかないため、なんでしょうかと微笑みながらも尋ねた。
すると女性は、自分にこう言った。
「ズボンのお尻、破れてますよ」
穴があったら入りたい・・・
~終~
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