第27話~あなたのクッキー~
僕は、一人の高校生。十七歳の男子だ。
季節は夏本番、まぶしい日差しが、体中を襲っており、今にも肌が黒くなりそうな、そんな日が続いている頃。
僕は一人、涼しくて居心地の良い喫茶店で、冷たいアイスコーヒーを飲んでいた。
とても大人っぽい時間を過ごしていると思っている。
だが、目的はこの喫茶店自体の雰囲気や、マスターと大の仲良しなわけではない。
本来の目的は、ここで働いている一人の女性店員に会いたいがためである。
ここはまだ青春の高校生ということろかな。
その女性店員は、見た目では二十代の綺麗なロングヘアが似合い、とても気さくな人である。
僕はそんな店員に惚れてしまい、夏休みに入ってからはほぼ毎日通っている。
だからと言って、告白する勇気なんて全くなく、いつも席から眺めているだけで僕は楽である。
これは完全に不審者と言ってもいいだろう。
だが、何も頼まないわけにはいかないため、僕は必ず、特製のクッキーを注文している。
ここの特製クッキーは、中になめらかなクリームが入っており、香ばしい香りと落ち着いた味が、クッキーを更に美味しく感じさせる。
もちろん、このクッキーを作っているのは店員本人であり、それも頼んでいる理由の一つなのだが。
今日はいつもより客の人数が少なく感じた。
いつもは大体席は埋まっており、店もかなり忙しそうに動いているのに。
それも今日は土曜日だ。
平日より客が多くても当たり前なのに、どうしてだろうと思いながらも、ふと、近くに飾ってあるカレンダーを見ると、どうやら今日から三連休みたいだ。
「なるほどな」
そう呟きながらも、コーヒーを飲みながら待っていると
「お待たせしました。クッキーです」
店員が微笑みながらも、大きな皿に乗っているクッキーをテーブルの上に置いてくれた。
僕は少し照れながらも
「ありがとうございます」
「毎日来てくれているわね」
店員が爽やかな笑顔で言ってくれた。
僕はその笑顔に心臓を打ち抜かれそうで、今でも鼻血が出るのではないかと思うほどだったが、口調を震わせながらも
「えぇ、このクッキーがお気に入りで」
「そうなんだ」
「はい」
「あっ、今日のクッキーはちょっとしたアレンジを加えさえさせてもらいました」
「アレンジ?」
「クッキーを見てくれたら、嬉しいかな」
「え?」
そう言うと、店員は僕にウィンクをしてから、その場を離れて行った。
僕は何のことかなと思い、ふとクッキーを見ると
「いつもありがとうね」
とハートマークと共に文字が描かれていた。
僕は驚きながらも、店員がいるカウンターの方に目をやると、店員は僕の方を向いて、再びウィンクをしてくれた。
これで僕は決めた。
またこの店に来よう。
そして・・・この人に思いを伝えようと
~終~
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