第22話~祖母の法事~

秋の紅葉が色づき、残暑という言葉も薄れてきた時期のこと。


大阪に住んでいる自分は、新幹線駅のホームでただ空を見上げながら、列車が来るのを待っていた。


この日が近づいてくると、必ず祖母のことを思い出す。


祖母は九州のとある地方に住んでおり、祖父と祖母の二人暮らしであった。しかし、三年前に祖母が胃がんを患ってから、長い闘病生活が続き、二年前の今日、息を引き取った。享年八九歳。


二つ上の祖父を残して天国へと旅立ってしまったため、毎日祖父から安否確認の電話がかかってくる。普通逆なのに・・・


二時間もかけて、列車は九州に向かい、そして終着駅である博多駅で降りてから、また二時間もかけて在来線やタクシーで実家へと向かう。


これがまた疲れるため、音楽を聴きながらタクシーでつい寝てしまった。


タクシー運転手が自分の肩を叩き、ふと気づいたら、既に実家についていた。


自分は慌てながらも礼を言ってから、タクシーを降り、実家のインターホンを鳴らした。


しばらくして出てきたのは、実の姉であった。姉は福岡に住んでおり、不動産会社の取締役専務の男性と結婚してから、三人の子供がいる母である。


他にも自分には妹がいるが、モデル業をしているため、仕事の都合上参加できないということであった。


自分はまだ独身のため、連れてくる人はいないが、現在は書いた小説が芥川賞にノミネートされることが決定したため、そのお土産も持ちつつ、実家の敷居をまたいだ。


しばらく、姉と過去話をしてから、祖母の三回忌法事が始まった。その間は隣の窓から、空を黙って見上げていた。


本当はあまりよくない事などは分かっているが、黙って座っているのが幼い頃から難しかったため、せめてでも空を眺めているだけだった。


すると、まだ小さい姉の末っ子が自分のところに来て、じっと見つめている。


一体何故自分を見つめているか、さっぱり分からなかったため、小さな声で「どうしたの?」と聞いてみると、子供は笑顔になりながら小さい声で


「ひいおばあちゃん、怒ってるよ」


自分は何を言っているのかと思い、ふと近くの廊下を見ると、そこには着物を着た下半身が貧乏ゆすりをしていた。後ろには軍服を着た後ろ足がいる。


祖母の癖で、よく怒る時は貧乏ゆすりをしていたし、当然この人間の中には、着物は誰も着ていないため、この世の人間ではないのは確かだ。


それにしても驚いたのは、その末っ子だけにはその姿が見えているということだ。


自分は気を引き締めて、仏壇の方向を見ることにした。


それにしても気になることがある。


末っ子がまだ幼い頃にはもう祖母は他界しているため、ひいおばあちゃんと分かるはずがない。そうなると、亡くなった祖母と話したのだろう


それは良いとして、後ろの軍服は一体・・・


~終~

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