第15話~夜の浜辺~
今日、自分はミスをした。
それもとんでもなく大きなミスだ。
自分は東京のとある大企業に勤めているサラリーマンだが、今日、取引先に送る受注の数を大幅に間違えてしまい、取引中止になってしまったのだ。
部長からとてつもなく怒られ、部長だけではなく、専務からもかなりのひどり叱責を受けた。
自分にはかなりのダメージだったため、立ち直ることに時間がかかった。いや、まだ立ち直れてないかもしれない。
そんなことを考え続けていたのか、気づかないうちに、自分の姿は湘南の浜辺にあった。
何故、この浜辺に来たのかよくわからないが、この海を見ると、かなり癒されるし、今日の失敗が夢のように思えてくる。
とても神秘的な光景である。
しばらく眺めていると、後ろから誰かが声をかけてきた。
慌てて振り向くと、そこには半袖短パンの少し中年にも感じる男性が立っていた。
自分は、ここの警備だと思い、謝ってからこの場を立ち去ろうとすると
「湘南の海はきれいだよな」
中年男性はそう言ってきた。湘南の海がきれいなのは当たり前な話だが、一体何を言いたいのかと思い、尋ねてみると
「悩みっていうのはな、車なんだ」
車?それは一体どういうことかと思い、聞き返してみると
「人生には色々な車がある。悩み・怒り・悲しみ・楽しみ。君はその悩みの車に乗って、人生の決められた道を走っているんだ。しかし、一歩でもアクセルを緩めたり、猛スピードを出したら、必ず、事故るぞ。悩んでも車には癒しがあるだろ?悩んだ時には癒しが一番だ」
癒しというのは、恐らくカーラジオやカーステレオ。もしくは車窓のことを言っているかもしれない。
確かに、この人生、道だらけで歩けと言われてもなかなか一歩を踏み出すことが難しい。
だが、車だったら最近は自動運転も増えているため、勝手に進んでくれるが、どこかで分岐点というところに止まらなければならない。
その時にどのようなウィンカーを出すのかによって、変わってくる。
恐らく、ブレーキを緩めるのは、仕事では気を張って行動しろ。しかし、猛スピードというのは焦るなということだ。
これのバランスさえしっかりしていれば、必ずいいことがある。これをこの中年男性は言いたかったのだろう。
それを思うと、少しばかり勇気が出てきたため、中年男性にお礼を言おうとすると、既に男性は姿を消していた。
一体、あの男性は何者だったのか。
未だにそれは分からないことだが、とりあえず、仕事という名のエンジンを入れて、走りだしますか。
人生という名の道路を。
~終~
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