第11話~解散後の道~
日本には数えきれないほどのバンドやアイドルグループが存在する。
中には、当然終わりを迎えるグループもある。良い終わり方があれば、悪い終わり方も当然ある。
解散後はソロデビューをしたり、芸能界を引退したりと、道はそれぞれだ。
今回はそれをテーマにしたストーリーである。
今回の主人公はこの男。バンドではボーカル兼ギター担当であり、ほとんどの楽曲はこの男が作詞・作曲をしている。
しかし、今日のレコーディングスタジオはいつもよりまして、とても重い雰囲気だった。
今日の会議はとても居づらい。ボーカル担当はそう思っていた。
何故かというと、今日の会議テーマは、バンド解散後の道であった。
十年前にデビューして以来、バンドの第一線で活躍していたが、最近になりシングルも売れなくなり、それどころか去年発売したアルバムでさえ、あまり期待以上の売り上げには届かなかった。
そのため、話のテーマをバンドの幕引きに変えてから、一か月後の解散ライブまでに、それぞれの歩みたい道を決めようと話し合っていた。
ベース担当とドラムス担当は、芸能界引退を視野に入れていた。
それもそうだ。ベース担当はどうやら、実家の父親が倒れてから、寿司屋を継がなければならないという問題が発生したため、これはやむを得ない。
ドラムス担当は、このバンドメンバーの中では唯一の妻子持ちであり、家庭面を大事にしての判断のため、これもやむを得ない。
問題は、このリードギター担当だ。
実は自分にとって、この男はかなり大切な存在だ。このバンドでは彼がリーダーであり、たまに作詞・作曲をするときの曲はかなり売れるため、真のバンドマスターだと思っている。
正直に言うと、バンド解散後は彼とコンビを組んで、音楽活動をしたいと考えている。
あとは彼の答えを待つばかりだと思っていた。
しかし、今日の彼の表情は暗かった。それもいつもより、非常に暗かった。
そして彼の口から出た一言が・・・
「俺は引退するよ」
まさかの一言であった。自分はてっきり、音楽活動をするとばかり思っていたし、彼は音楽の才能があるわけだから、自信を持ってるとばかり思っていた。
そしたら一緒に音楽活動をしようと言おうと思っていたのに・・・
すると彼は、続けてこう言った。
「俺の本当にやりたいことは、プロデュース活動なんだ。音楽を作るのは好きだし、それに音楽の才能があると自分でも感じている。だからこそ、表舞台を引退して、裏方で頑張りたいんだ」
本当にリーダーらしい。
確かにプロデュースは一番得意はジャンルだし、思い返してみれば、とある大物歌手の冠番組でも、彼はプロデューサーをしていたほどだし、これはかなり思い切った考えだと思い、次に出た自分の一言は
「じゃあ・・・俺をプロデュースしてよ」
ソロ活動は全くしたことなかったが、こんな一番信頼できるプロデューサーがいるということは、かなり力強いと思い、判断した結果だった。
答えはもちろん・・・YESだった。
~終~
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