第9話~最初誰入る?~

皆様は、お風呂に入るとき、どのような気持ちで入りますでしょうか。


リラックスした気持ち。涙を流したい気持ち、色々な気持ちで入る人は多いと思います。


今回は、そんなお風呂をテーマにしたストーリーです。


今回の主人公は、この男子大学生。最近はアルバイトをしながら生計を立ており、近日には家を出て、一人暮らしをする予定だ。


家族構成は、両親と最近二十歳になったばかりの四人家族である。


そんな中、家に大きなニュースが舞い込んできた。


浴室をリフォームするらしく、今週末に着工予定とのことを、リビングで父親から明かされた。


長年使ってきた浴室をリフォームすることに、すこし自分でもワクワクな気持ちになったが、自分にはあまり興味がなかった。


何故だと、近日には家を出て行くからだ。


しかし、今週末にはまだ家にいるため、見届けるのも有りだなと思いながら、ただ話だけを聞いていると、父親が少し変わった話を始めた。


「一番最初に誰が入る?」


他の人から見れば、すぐに出そうな問題だが、こちらとしてはかなり重要な問題である。


まず、当然、この家族の大黒柱である父親にしてみてもいいが、俺は知っている、この男、実は二か月前に不倫をしている。


それも相手は、直属の部下である。この二人が一緒にレストランで食事をしているところを、たまたま見てしまった。


まだ母親には言っていない。


何故なら、この母親は父親に隠して、めちゃくちゃ高級品ばかりを買っている。それも全部父親が汗水たらして働いたお金である。


何故分かったかって?


その理由はただ一つ、毎日宅急便が来るからだよ。


この両親には最初に入る権利なんてどこにもない。てか会話にも入れたくないくらいだ。


だったら弟しかないか。でもこの弟には裏事情がある。


それは、両親には内緒で結婚しているのだ。


相手はそれも人気モデルの女性。弟は自分にだけ話してくれたが、両親には面倒だから話さないという。


本当はそれはダメなのだが、自分は弟自身が決めた事であり、あまり口出しはしなかった。その代わり


「離婚を軽々しくするなよ」


とは口酸っぱく言った。何故なら、目の前にいる両親は両親では無くなる可能性があるからだ。


話を戻そう。


もし最初に入らせるとするならば、確実に弟である。だが、もしこの結婚がばれてしまえば、可能性的には今日にもこの弟は追い出される。


そうなると、消去法で言ったら自分しかなくなる。


でも俺はこの家から出なければいけないため、入る資格はないと思っているし、いつでも入れると思えば、別に特別感を持たなくてもいいやと思っていた。


しばらく考えていると、やはり頭に出てくるのは弟しかいないと思い、弟を廊下に連れ出してから


「いいか、もし結婚のことがバレても、お兄ちゃんがかばうから、お前が最初に風呂に入れ、それでゆっくり不安を取り除いてこい」


兄としての役目はこれくらいだ。弟がいてくれたおかけで、何度助けられたか、それに兄としては、それが義務だと思っている。


それを言われた弟は、泣きながらも「ありがとう」と礼を言ってから、風呂場に駆け込んでいった。


リビングに戻ると、両親がもめていた。


恐らく父親の不倫がバレたんだろう。自分はこう思って、最後をしめようとした。


「自業自得だよ」


~終~

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