第7話~番組会議~

皆様は、どのように番組の企画が生まれるかをご存知でしょうか。


皆さんが普段見ているテレビ番組は、当然毎日のように、裏側の人間が会議を重ねて、次はどの企画で行うかを日々、試行錯誤して番組というのが、また一つ、命のように吹き込まれていく。


今回はそれをテーマにした物語である。


とあるテレビ局の会議室は、とても重い空気に包まれていた。


それもそのはず、今日は自分たちが担当するお笑い番組の放送開始100回を記念する特別な回であり、あまり笑顔で企画案を考える余裕なんてないのだ。


それも、この100回に全てをかけている。何故なら、最近はテレビ離れによる深刻な視聴率問題で、この番組も開始当初は視聴率がうなぎ登りだったが、最近になり、視聴率が次第に減っていき、今ではコントだけで視聴率は取れない時代になってきている。


今回の主人公である、一人の男性プロデューサーは最近になり、この深刻な状況を踏まえてなのか、上層部からこう言われていた。


「次の100回で視聴率が悪ければ、打ち切りだ」


この一言がどれだけ重い言葉か。この番組はこのテレビ局が総力を挙げて、ベテランプロデューサーとベテランディレクターを集結して始まった番組であり、キャストも旬の若手芸人を配置してるなど、常に気合を見せている番組であった。


しかし、今ではなんだ。視聴率が悪くなっただけで切り捨てる。そんな理不尽かつシビアな世の中になった。


このプロデューサーも、当然この番組を終わらせたくないため、必死に考えていた。


そのため、この100回記念で何か、今後に繋がる企画を立ち上げようと考えており、元々この番組は「シュールな豪華コント番組」として、毎回豪華なセットでシュールな構成作家のネタをメインキャストがやるという内容である。


その路線を少し変えてみるのか。


例えば「豪華」という文字を消して、あまりセットを立てず、必要最低限の小道具だけ置いてコントするか。


そうすると、コストを抑えたとしても見ている視聴者が離れてしまう。


何故なら、それだと一気に寂しくなってしまうため、逆効果になってしまうのだ。


例えば、逆のパターンであれば、豪華なセットにしたら出世した感が視聴者にも伝わるが、先ほど言ったパターンだと、今更感が半端なくなる。


ではシュールという文字を消して、攻めるコントをしようか。


そうなると、今度はコンプライアンスという文字が嫌でも入ってくる。


例え過激なコントを作ったとしても、今の世の中に果たして通じるか全く分からない。


逆にクレームが増えてしまったら、元も子もないのだ。これも逆効果だ。


一体どうしたらいいんだろうと考えていると、一人のディレクターがこのような事を言った。


「では、「芸人が考えたコント企画」というのはどうでしょうか」


それはこの時代に通じるかもしれない。


90年代のコント番組のほとんどは、芸人さんがノリで考えたコントをディレクターがメモをして、そのままやるというのが主流であった。


しかし、今のコント番組のほとんどが「構成作家が考えたコント番組」になっている。


それはある意味「芸人殺し」と言ってもおかしくはない。


そのため、今度は様々な芸人が考えたコントをメインキャストがやるというコント企画にして、そのまま内容もそれに変えたら、いけるんじゃないかと思った。


それでもう一度チャンスを貰い、放送をすれば、必ずいい結果が出る。何事も挑戦が大事である。


そのため、自分はOKサインを出したと同時にこう言った。


「みんな、楽しくやろう」


これは全メディアに繋がる言葉である。


「楽しくなければ、テレビじゃないじゃん」


このキャッチコピーのように、人生楽しく生きましょう。


~終~

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